ブラジル「レアル安」の背景に、米中貿易戦争以外の懸念点

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米中貿易戦争が8月月初から悪化したことでリスク回避姿勢が高まり、新興国通貨は全般に軟調な動きとなっています。米中貿易戦争が新興国通貨共通のマイナス要因となる中、月初からブラジルレアル安が進行し、アルゼンチンを例外とすれば、主要新興国の中で最も下落率が大きくなっています。

ブラジル中銀:市場の予想に反し、レアル安抑制に為替介入

ブラジル中央銀行は2019年8月27日、通貨レアルが対ドルで約1年ぶりの安値(過去最安値)に近づいたこことを受け、外国為替スポット市場で、外貨準備を活用した異例のドル売り介入を行ったと報道されています(図表1参照)。

 

日次、期間:2018年1月2日~2019年8月27日  出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジル政策金利とレアル(対ドル)レートの推移 日次、期間:2018年1月2日~2019年8月27日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ブラジル中銀の為替介入は、通常他レポ取引などが利用されます。予想外の介入で、レアル高となる局面もありましたが、結局影響は小幅にとどまっています。

どこに注目すべきか:米中貿易戦争、為替介入、支持率、森林火災

米中貿易戦争が8月月初から悪化したことでリスク回避姿勢が高まり、新興国通貨は全般に軟調な動きとなっています。米中貿易戦争が新興国通貨共通のマイナス要因となる中、月初からブラジルレアル安が進行し、アルゼンチンを例外とすれば、主要新興国の中で最も下落率が大きくなっています。この主な理由として以下の要因が考えられます。

 

まず、市場予想を上回る利下げを実施したことです。ブラジル中央銀行は7月末に政策金利を市場予想(0.25%)を上回る0.5%引き下げて6.0%としました。新興国全般が利下げモードとなる中、ブラジル以外にも市場予想を上回る利下げを実施した国はありますが、ブラジルの利下げは米中関係が悪化した時期に重なるという不運もあり、インパクトが大きかった印象です。

 

なお、ブラジル中銀の為替介入を受けて、ブラジルの金利先物市場(DI)では、0.1~0.2%程度利回りが上昇し、今後の利下げ見通しに小幅な修整が見られました(図表2参照)。

 

日次、期間:2018年8月28日~2019年8月27日  出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジルの主な金利先物の推移 日次、期間:2018年8月28日~2019年8月27日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

 

次に、近隣のアルゼンチンの混乱による影響も考えられます。ブラジルの貿易相手国(2017年)を見ると輸出、輸入共に、1位と2位は中国と米国です。上位が米中貿易戦争の当事国という不安がある上に、輸出で第3位、輸入の第4位がアルゼンチンです。アルゼンチンの混乱は控えめに見ても秋の大統領選挙まで続くことも懸念されます。

 

ボルソナロ政権の支持率が急低下していることも気がかりです。今年1月に発足したボルソナロ政権はブラジルの年金改革という難題をここまで無難に消化しています。ブラジルの動向は年金改革の進捗さえ見守れば十分というような見方が広がっていた印象です。しかし、CNT/MDAによる世論調査を見ると、発足直後の2月に38.9%と、4割近かったボルソナロ政権への支持率は8月に29.4%と急落しています。

 

 

財政改革や不正への対応には一定の支持が見られる一方、不支持の理由を見ると、ヘルスケア、教育などの政策に加え、環境問題への取り組みに対する批判が高くなっています。特にアマゾンの森林火災への対応にはボルソナロ政権に厳しい声が上がっているようです。主要7カ国首脳会議(G7サミット)が拠出で合意した緊急支援に対して、議長国フランスとの確執から拒否の姿勢が伝えられています。ボルソナロ氏が大統領候補であった頃、「ブラジルのトランプ」などといわれる面があったことを思い起こさせます。年金改革は国民に負担を強いるだけに、世論の支持が回復しないようであると、今後の進捗に不安が高まります。

 

木を見て森を見ずとならないことに注意が必要です。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジル「レアル安」の背景に、米中貿易戦争以外の懸念点』を参照)。

 

 

(2019年8月28日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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