社員の健康増進が「生産性・収益」の向上につながる
◆大変だ!リーダーも社員も健康でなければ能力は発揮できない!
「いかにすぐれた才能があっても、健康を損なってしまっては十分な仕事もできず、その才能もいかされないまま終わってしまいます」<松下幸之助>
企業を体とするならば、社員一人一人が細胞なのです。つまり、経営者のみならず、すべての社員が健康でいれば、その生産性は上がり、収益も自ずと上がります。そして、企業価値も向上します。
現在の日本企業の課題は、生産性向上と人材確保です。少子高齢化の波の真っ只中ではありますが、その事実を最大限に活かしてみてはどうでしょうか。そう、少子高齢化をマイナス要因にしなければいいのです。
思い出してみてください。体の調子が悪くて、やる気が起きなかった日のあなたの行動を。仕事をしていても集中力が続かなかったり、イライラして人にあたったり、笑顔を見せず眉間にしわを寄せたり、夜の予定をキャンセルして早く帰ろうと思ったり。あなたの行動がネガティブになった経験が幾度もあったはずです。
これは、普通の人間であれば当然です。こんな些細な体の不調からも、私たちの行動は影響を受けている、ということなのです。当然、脳の活性化も望めません。このような状況を放置していては、生産性の向上とはほど遠い状態になってしまいます。
昨年、厚生労働省が発表した、企業の健康関連総コスト内訳によると、79%を生産性低下によるコストが占めています。医療費はたったの16%なのです。
◆企業にとって、もっとも価値ある投資とは?
そもそも、日本での「健康経営」とは、アメリカで1992年に出版された『The Healthy Company』のなかで、ロバート・H・ローゼンが提唱した考え方に基づきます。アメリカは国民皆保険制度ではないため、健康を自衛する考え方が⽇本より10年も20年も先に進んでいるのです。実際アメリカでは、健康経営に取り組んだ優良企業が、その13年後に大企業の平均を上回るパフォーマンスを出したという結果も出ています。
「健康経営」の根底には、「社員の健康は経営資産である」という考えがあります。つまり、社員が健康であることで生産性が上がり、収益が上がります。社員も企業も共に「健康」に「幸せ」になる、価値ある方法なのです。
日本では、健康経営の推進にむけ、2014年から経済産業省と東京証券取引所が共同で「健康経営銘柄」の選定を開始し、また2017年には健康経営に積極的に取り組んでいる企業を「健康経営優良法人」とする認定制度を創設しました。2019年現在、大企業では821社、中小企業は2503社が認定を受けています。働く人の年齢が上がっても、健康であれば能力を発揮し続けることができるのです。
そして今、健康経営の施策を積極的に取り入れている企業(ブラック企業ではなく)に入社したいという人が増えてきています。今や、設備投資、研究開発などと同じくらいの投資価値があるのが「社員の健康への投資」なのです。この投資をしない理由はありません。なぜなら、進めれば進めるほどリターンがあり、社員も企業も幸せに向かう方法だからです。
日本は中小企業が99%といわれています。この中小企業が社員の健康に投資をすることは、企業だけでなく国にとっても得しかありません。よく考えれば当たり前のことですが、2001年に私がこの仕事を始めた頃は、企業の意識がまだまだ低かったことを思い出します。
「体の健康」を整えてから「メンタルケア」へ取り組む
◆健康への投資は短期間でのリターンを求めてはいけない!
健康投資において、短期間でのリターンを求めてはいけません。なぜなら、体のすべての細胞は約1年かけて生まれ変わるというサイクルを持っているからです。この体のシステムを理解しながら、あなたの生活習慣(クセ)を変えていくと上手くいきます。
スポーツや語学などと同じで、「身に付ける」ことは繰り返しの連続と継続で成り立ちます。ほとんどのことに対して、1年あれば基礎を身に付けることは可能です。
健康投資のリターンは、ゆっくりですが大きく返ってきます。ジワジワとしか進まないこともあります。でも、社員一人一人の「健康」の底力は、想像以上でしょう。
体が健康であれば、心の問題もほぼ解決します。体が器ですので、穴が空いていたりしたら心は支えられないからです。メンタルケアへの取り組みも大事ですが、体の健康への取り組みを先導させるとさらに有効です。
そして、1年はかかるからこそ、早い取り組みをする必要があります。あなたの会社でも上手に取り入れてみてはいかがでしょうか。もちろん、あなた自身にも。
田中 素美
ボディスタイルプロデューサー/