日産自動車が「2022年度までに世界で計1万2500人を削減する」と正式に発表するなど、平成から令和への移り変わりに合わせるかのように、大手企業を中心に人員削減が相次いでいる。これらのあおりで個人の業務量が増えたにも関わらず、残業は原則禁止。増えないどころか減る一方の手取り給与の中でのやりくりを余儀なくされる令和時代のサラリーマンは、いまや「会社帰りの一杯」すら厳しい状況になっているようだ。彼らの「お小遣い事情」はどうなっているのか。

調査開始以来、お小遣いがもっとも低い金額に…

タバコはとっくに止め、朝の缶コーヒーの変わりに自宅で準備したお茶入りの水筒を持参、昼はコンビニのおにぎりとサラダ、呑み会は断り、晩酌はアルコール度数強めの安缶チューハイで自らの一日を労う…。現状のお小遣いを確保するために涙ぐましいほどの節約を重ねる令和サラリーマンたち。いったい他の人はどのくらいの額で、どのようなやりくりをしているのかはやはり気になるところではないだろうか。

 

この6月に発表された男性会社員の毎月のお小遣い額の平均は36,747円となっている(『2019年サラリーマンのお小遣い調査』新生銀行)。意外と多くもらっている、あるいは少ないと感じるかは、置かれている状況(既婚、独身、親との同居、ライフステージ、副業の有無、等)によって人それぞれだろう。

 

実はこのサラリーマンのお小遣いの平均、近年増加傾向にあったが、今回、1979年の調査開始以来、もっとも低い金額になったという(最低額は1982年の34,100円、最高額は1990年77,725円)。日経平均株価は小幅な値動きとはいえ、比較的堅調に推移しているにも関わらず、お小遣いは横ばい、あるいは下落という現実。政府がアナウンスする「景気回復」を、一般サラリーマンは懐事情において実感できないことがまたひとつ実証された形だ。

 

さて、それら少ないお小遣いの使いみちトップ3であるが、男性会社員は「昼食代」が43.1%、「携帯電話代」が25.1%、「嗜好品代」が18.8%となっている(携帯代もお小遣い内に含まれているのがまた世知辛さを感じるが)。

 

さらに男性会社員における、お小遣いの「やりくり(節約)」実施率は78.9%と、想像以上に多くの人が、冒頭のように何かしらの節約策を実行している。具体的なやりくり術には、「昼食費を安くする」、「外で呑む回数を減らす」、「水筒を持参する」などが上位に挙がっている。しかし今後、消費税が10%に引き上げられた場合、さらに厳しいお財布事情が待ち受けていることは明白だ。

 

お金持ちほど「無駄金」を使わないということを聞いたことはないだろうか。例えば、真のお金持ちはタクシー等の余分な出費を好まず、公共の交通機関を利用する人が多い、というような話である。余計な出費を嫌い、本当に価値あるものに投資をすることで財産を堅実に築いてきたのが彼ら彼女らである(「倹約家」と呼ばれる)。

 

朝コンビニでコーヒーと朝食のパン、仕事中の眠気覚ましのエナジードリンク、呑み会の会費をコンビニのATMでおろす(手数料210円)、「自分へのご褒美」と称してビールやスイーツなどを家族に隠れて買う、酔いつぶれて終電を逃してタクシー・ビジネスホテルを利用…。お金がないといいながらまだまだ余計な出費をしていないか。10月の消費税の増税を前に、令和サラリーマンがもう一度点検をし、倹約家を目指す余地はおおいにある。

 

まだ始めてなければ、加速度的に普及が進んでいる電子マネーとクレジットカードによるキャッシュレス決済を導入するのも一考だ。「お小遣い」程度の利用額では、多くのポイントが付与されるわけではないが、支払履歴データと家計簿アプリを連動させ、「お小遣い(お金)の流れを見える化」することで、効率のいいお金の管理、やりくりの訓練をする機会にしてもよいのではないだろうか。

 

リストラ対象として狙い打ちされる団塊ジュニア世代

さて、このお小遣いデータの中で、とても興味深い数字があった。男性会社員のお小遣いを年代別に見てみると、50代が最も高く38,051円、次いで20代と30代が37,000円台、そして40代は33,938円と最も低くなっているのだ。世代間の「お小遣い格差」ともいえるが、これはどういうことなのか。

 

現在の40歳代半ば~50歳にかけては第二次ベビーブーマー世代(団塊ジュニア)とも呼ばれ、最も就労人口が多い(一方40歳~44歳は就職氷河期世代ともいわれている)。日本経済をけん引する働き盛りど真ん中世代とも見えるが、現状は若干違うようだ。

 

例えば40歳代で部長職以上に就いている人の割合は2.5%、課長職以上は11.2%程度に過ぎない(大和総研2017)。現在、多くの企業は、課長以上の管理職に仕事の実績等に応じて給料を決める役割・職務給を採用しており、昔ながらの年齢・勤続給(年功序列)は採られなくなっている。これにより、役職のない団塊世代ジュニアの40代は人数が多くなり(ダブつき)、企業内の人件費に占める割合も大きくなっているのだ。

 

今年2月に飲料大手のコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスが45歳以上の社員を対象に希望退職者700人を募集すると発表。そして3月には、富士通が45歳以上のすべてのグループ社員を対象に、早期退職を募ることを公表するなど、昨年から今年にかけて、大手と呼ばれる企業であっても(であるからこそ)、容赦なく団塊ジュニア世代を人件費の削減対象として狙い打ちしている。

 

さらにこの世代は、上がらない給料体系の中、子どもがいる世帯であれば現在大学生から中高生以下(未就学児、小学生、中学生、高校生)、一番教育費がかかるライフステージに差し掛かっている(2020年代以降は親への介護の負担が増大するとされている)。前述のお小遣い調査でいえば、全体の中で、子育て・教育費の家計への負担が重い世帯においての金額はさらに低くなり、「2万円台半ばから3万円台半ば」となっている。まさに40代のお小遣いの平均値が低い結果と悲しくリンクしており、「世代間のお小遣い格差」が発生する要因にもなっているのだ。

 

しかし、こういった状況に必要以上に焦り、(お小遣いを上げるために)無謀な転職や独立を推し進めるのは自殺行為だ。まずは前述したように、徹底した倹約を実行してみる。その上で、足りないということであれば副業を始めるという選択肢もある(関連記事『休日がなくなる!? 令和サラリーマンのシビアな「副業」事情』参照)。

 

さらにお小遣いの中から多少の余剰がでるようであれば、NISAなどの優遇制度を利用した投資を少額からはじめることも検討してもよいだろう(関連記事『つみたてNISA、投資信託で「お金を上手に育てる」秘訣とは?』参照)。

 

現状でも「超」節約生活を強いられている令和時代のサラリーマン。10月以降の消費税増税に備える意味でも、今後は自らの「お小遣い」を死守するためのさらなる戦略が必要となるだろう。

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