みずほフィナンシャルグループをはじめとした大手企業が解禁を表明する等、近年「副業」という言葉をニュース等で見聞きする機会も増えている。厚生労働省でも、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っており、企業側も従業員の副業を半ば容認する流れが加速している。今回は、令和サラリーマンのシビアな「副業」事情について見ていく。

「会社はあなたたちの面倒を一生見ない」

「副業」とは企業に就業する会社員が、業務時間以下に本業とは別の仕事に従事したり、自ら事業を営んだりすることを一般的に差す言葉である。これまでは原則的に禁止していた企業が多い中、なぜ近年、解禁の機運が高まっているのであろうか。

 

そのきっかけになるのが、「働き方改革関連法」だ。正式名称「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」は、日本法における8本の労働法の改正を行うための法律の通称である。それを踏まえる形で平成30年にまとめられたのが厚生労働省による「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html)である。

 

労働者側はスキルや経験を得ることで、主体的にキャリアを形成することができ、また
リスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。そして企業側には、労働者の自律性・自主性を促し、優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する等のメリットがあるとされている。

 

働き方改革の推進に伴い、2019年4月より施行された改正労働基準法では、「時間外労働の上限規制」については年間720時間、単月では100時間未満までと制定された。これら「働き方改革」の背後には、経営側による残業代のカット、人件費削減の思惑が隠れているともいわれているが、少なくとも大企業が揃って「副業」を容認する流れは、「会社はあなたたちの面倒を一生見ない」という無言のメッセージと捉えて差支えはないだろう。

 

本業では人員の削減等のあおりで個人の業務量が増えたにも関わらず、残業は原則禁止。増えない手取り給与の中でのやりくりを余儀なくされるサラリーマンが、副業を検討するのはごく自然の流れであろう。近年の「副業」ブームは、官民一体となった「働き方改革」の後押しと、サラリーマンの利害が悲しく一致した故ともいえるのだ。

正社員の約半数が「副業をしている・したい」の現実

では、実際にサラリーマンが本業以外に副業をしている理由を見てみよう。1位が「収入を増やしたいから」、2位が「1つの仕事だけでは収入が少なく、生活自体ができないから」、3位が「自分が活躍できる場を増やしたいから」という順位になっている(厚生労働省「複数就業者についての実態調査」平成30年7月)。

 

また、パーソル総合研究所による「副業の実態・意識調査」(2019年2月リリース)によると、正社員で現在副業している人の割合は全体の10.9%。現在、副業を行っていないが、今後副業したい人は41.0%となっており、今後も「副業」の希望者が増える可能性は大きい。

 

データの精査は必要であるものの、前述の政府が推し進める自主性、自律性の促進というより、今のところは、残業代カット等の収入減による補填等のやむにやまれぬ切実な事情が透けて見えるような印象であるがいかがだろうか。

 

さらに副業の平均月収であるが、6.82万円となっている(同)。思ったより稼いでいる印象だが、実際はどのような種類の副業を行っているのであろうか。現在の人気は大きく以下3つに分けられる。

 

①ネット全般

「転売(せどり)」や、アンケートなどに応えてポイントを貯める「ポイントサイト」、
そして自分の得意分野を売る「クラウドワークス」など、ネットを活用した副業には多くのサイトが存在する。登録するだけで気軽に始められるサイトも多く人気が高い。

 

②投資全般

株式、FX、仮想通貨、不動産などがあり、手元の資金さえあれば気軽に始められ、大きな利益を生み出すチャンスがある一方、専門的知識を持ってしても損失のリスクもある。

 

③直接労働(パート・アルバイト等)

昔からあるオールドスタイルの副業。就業後や休日を利用し、自分の時間を実質的に切り売りするパートやアルバイトである。接客業などは対人ストレスも多く、拘束時間も長いが、覆面調査官や発売前の薬物の効果を試す被験者となる「治験」バイトなど、探せば効率的に稼げる「裏バイト」も人気である。

実際に副業を始めると気が休まらない⁉

いざ副業を始めると、サラリーマンの収入や生活にどのような変化が生まれるのか。前述した副業の種類の中で、①ネットと③直接労働を組み合わせ、6年前から実際に副業を始めたという都内在住、専門商社勤務の山内さん(44歳仮名)にお話を伺った。

 

「専門商社といっても、衣料品を扱う従業員が20人も満たない零細企業です。随分前から残業代などはカットされ、定時帰宅が基本になりました。時間はできましたが、正直基本給だけで妻(現在正社員)と、娘(5歳)を養うのはやや厳しい状態になり、副業を思い立ちました。これまでいろいろトライしましたが、今の副業のメインはネットオークションなどで安価で落札したシルバー製品や革製品などのアクセサリー、雑貨を、土日にフリマ(フリーマーケット)で売ったり、その逆で、フリマで安く仕入れた物をネットオークションに出品したりしてちょろちょろと稼ぐ転売です。

 

値札は付けずに、お客さんとはその場の雰囲気とノリで値段交渉します。お金を持ってそうな人であればちょっと高めにふっかけたり(笑)。この駆け引きが僕的にハマって続けてます。フリマ1回のざっくりとした収支ですが、良い時で2万~3万円の売り上げ。フリマの場所代がだいたい3000~5000円位ですから、オークションの買取代と差し引きして純利益1万5千円前後というところでしょうか。月4日も稼働すれば5万~6万円稼げるのでバカになりませんよね。このお盆に嫁さんの田舎である北海道へ帰省するための飛行機代もすべて副業貯金からです。

 

もともと対面商売は嫌いじゃないし、将来は独立も考えているので、全く苦ではないです。ただある程度の数を仕入れる必要があり、オークションの入札などは、就業時間中に逐一チェックしなくてはいけないのと、土日のどちらかで出店しているので、子どもと遊んであげる時間が少なくなるのがたまに傷です。気が休まらない? 正直そうですね(苦笑)」(山内さん)。

 

仕入れの知識などは何度かの失敗を重ねながら、自分のスタイルを確立したという山内さんは、本業と副業の両立が比較的うまくいっているケースだ。就業後に、コンビニエンスストアや運転代行のアルバイト、深夜まで至るネットのせどり等、寝不足の状態で本業に悪影響を及ぼすケースも多く、やはり両立は簡単ではない。

 

また、副業の収入に関して、経費引いた上で「年20万円以下」であれば確定申告をする必要はないが、それ以上の収入であれば当然確定申告が必要になる。先のフリマであれば「雑所得」、株の売買であれば「譲渡所得」、不動産投資であれば「不動産所得」という具合にである。何もしなければ税務調査が入り、多額のペナルティーを支払うリスクもあるので、副業をはじめる場合は、充分注意が必要だ。

 

年々重くなる社会保険料、他の税負担等に加え、この10月から10%に引き上げられる消費税。現状でも少ない会社員の実質の手取り収入がさらに減ってしまうのは明白である。何もしなければどんどん減り続けるだけの賃金に対し指をくわえて見ているだけか、副業等の何らかの行動、対策を講じるべきか…「令和サラリーマン」は今シビアな選択を迫られている。

 

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