サラリーマンが働きやすい都道府県に「愛知県」が選ばれるワケ

本連載では、可処分所得がなかなか上がらず、好景気を実感できないサラリーマンの現状をたびたび取り上げてきた。しかし、それらのエピソードの中心は主に中小企業においての話。いわゆる上場企業等の大企業ではまた事情が変わってくるようだ。今回は、サラリーマンが一番働きやすい都道府県として「愛知県」が選ばれた理由について考察していく。

高給を維持する「代償」はそれなりに大きい⁉

例えば先月発表された、2019年3月期決算の上場企業1,841社の平均年間給与は629万円である。この数字は調査を開始した2010年3月期以降、9年連続で伸び続け、2010年3月期の567万円から1.1倍増となっているという。こと上場企業においては平均年間給与の底上げが進んでいるのだ(東京商工リサーチ)。ちなみに企業別の最高給与額は、2年連続トップの三菱商事で1,607万7,000円である。

 

このように、中小企業と大企業では、主に給与面で歴然とした格差が存在しているのが現実だ。ちなみに中小企業基本法において中小企業の定義は、以下のように定められている。

 

〇製造業…資本金3億円以下または従業者数300人以下
〇卸売業…資本金1億円以下または従業者数100人以下
〇小売業…資本金5千万円以下または従業者数50人以下
〇サービス業…資本金5千万円以下または従業者数100人以下

 

この定義に従えば、日本中で大企業は約1万1,000社、中小企業は約380万9,000社となっており、割合でいうと、それぞれ大企業が0.3%、中小企業が99.7%(総務省統計局2016)。つまり日本人のほとんどが中小企業に勤めているのが現実である。

 

しかし、たとえ「憧れの」大企業へ運よく入りこめたとしても、以前より個人に求められるタスクは多岐に渡り(例:始発から終電まで)、高給を維持する代償はそれなりに大きいというイメージもあり、実際そのような声も聞かれる。働き方改革が叫ばれているとはいえ、男性に「滅私奉公」的(社畜とも呼ばれる)な働き方を求める企業もまだまだ多く、高給=幸せ(働きやすい)、とは単純には図式化できないのだ。

働き方も「改善(カイゼン)」するトヨタ方式

これら多くの大企業の本社機能が、東京、大阪の大都市圏に集中する中、例えば都道府県別に比較したときに、男性会社員が感じている「働きやすさ」に違いはあるのだろうか?

 

この8月21日、企業口コミサイト『キャリコネ』(運営:グローバルウェイ)が「正社員が働きやすい都道府県ランキング」を発表した。何でも県民性ではかるのが好きな日本人気質に絶妙にマッチしたランキングであるが、意外なデータが出たので見てみたい。

 

自社サイトの男性ユーザーから評価が寄せられた企業を抽出し、「労働時間」「ストレス」「やりがい」「ホワイト度」「休日」「給与」の6項目の評価の平均点(総合評価)を都道府県別に抽出し、ランキングを作成したという。その結果、1位は愛知県で総合評価は3.51。以下、沖縄県(3.24)、宮崎県(3.21)と続く。

 

前述の通り、多くの大企業の本社機能が東京・大阪に集中する中、他の都道府県と差をつけ「愛知県」が選ばれたが、これはどういうことか。

 

愛知県名古屋市はいわずとしれたトヨタ自動車、およびその関連会社の城下町でもある。日本はおろか世界のトップに君臨するグローバル企業である。

 

トヨタ生産方式の4つの仕組みは「より良いものを、より早く、より安く」。そのためには常に「今よりも良いやり方」を見つけることが先決だ。これが世界に名だたるトヨタ独自の「改善(カイゼン)」の精神である。

 

あるいは、自動車の生産現場、および間接部門などに存在するといわれる「ムダ」を徹底して省く「ムダどり」を進める等、トヨタ自動車といえば、徹底的に合理化されたトヨタ生産方式で他の追従を許さない唯一無二の企業といえよう。

 

一見モーレツ、激務をものともしない社風というイメージもあるが、そこはグローバルのトップ企業として、他社に先駆け「働き方改革」を導入している。一例をあげると、2016年から在宅勤務については、ほぼすべての総合職社員を対象に採用されている。さらには、非正規といわれる「期間工」についても、正社員やパート従業員に認められている特別休暇制度を2017年から設け、待遇改善が図られている等である。働き方にも「カイゼン」はとっくに導入されている。

 

それらグローバル基準の待遇面に加え、「残業が基本は360時間に抑えられることを考えると、時給は高い。比較的自分の時間を持ててお金も自由に使える。社宅や寮などの福利厚生制度もしっかりしており、都内で生活するよりも額面以上に可処分所得は多くなる印象」 (企画営業/30代前半男性/年収850万円/2017年度)とのコメントがあるように、東京・大阪と比較して生活費が安い上に給与が高い……となれば、トヨタ、および関連企業に勤めるサラリーマンの満足度は高くなるのは当然であろう。

 

さらに尾張と三河で若干異なるといわれているが、堅実でコツコツ(無駄を嫌う等)、郷土愛の強い県民性(地元が誇る世界企業トヨタへの愛着)と相まって、愛知県で働くサラリーマンの満足度を全体的に押し上げている一因ではないだろうか。

 

さて、最も評価が低かったのが岩手県(1.98)である。この他の下位を見ても、知名度が高いトヨタのような大企業が少ない地域の評価が低くなる傾向があるようだ(岩手県の上場企業は岩手銀行をはじめとして5社程度)。ちなみに東京都・大阪府ともに7位(3.14)である。多くの大企業が集まっていながらこの満足度はどういうことか。

 

地方から来た人々で成り立っている、生活費が高い首都圏での生活は、たとえ有名企業に勤めていても満足度は低い。都会へ出て一旗上げる、というより愛着のある地元の有名企業で働くというステイタスと待遇の良さを求める。この「マイルドヤンキー」的な思考こそが、令和を生きるサラリーマンの「気分」なのかもしれない。いずれにしてもこれらの話は「大企業において」という前提付きではあるのだが。

 

GGOとは、GENTOSHA GOLD ONLINE(幻冬舎ゴールドオンライン)の略称。『あなたの財産を「守る」「増やす」「残す」ための総合情報サイト』を掲げ、企業オーナー・富裕層を主要読者ターゲットとして運営している(写真は編集長の立本正樹)。

著者紹介

連載仕事、ローン、子育て、介護…「令和サラリーマン」のサバイバル術

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