M&A仲介会社に依頼する「メリット&デメリット」
近年M&Aの取引が盛んになり、M&A業界に参入した仲介会社もかなり増えてきました。そのなかから、信頼できる、ノウハウが豊富な仲介会社をどのように探したらいいのでしょうか? 会社を買いたい/売りたいと考える経営者のために、M&A仲介会社をの選び方を順を追って説明していきます。
そもそもM&A仲介会社は、M&Aを成約させるためのフォローを行う役割を担っています。
銀行、会計事務所、証券会社、商工会議所など相談する窓口は多くありますが、実際に実務を行うのは、案件の規模によって取扱いが異なります。一般的には、ファイナンスの関係で、銀行、証券会社が取扱う案件の規模は、大体報酬は1億円以上が一つの目安です。M&A仲介会社は銀行、会計事務所、証券会社などと業務提携しているので、上記で書いたような大規模な案件じゃない場合、M&A仲介会社に紹介されるケースが多いようです。
そのなかで、仲介会社に依頼するメリットとはなんでしょう。
■メリット① いい情報をもらえる
今まで情報が閉鎖的だったM&A業界は、少しずつ情報を公開してきたとはいえ、本当にいい案件は、なかなかネット上に出回っていないのが実情です。
その点、M&A仲介会社は銀行、証券会社、会計事務所と幅広く業務提携をしていて、ネット上には公開されていない、いい買手会社、いい売手会社の情報が集まってきます。従って、仲介会社を利用することによって、より良い提案をしてもらえる可能性があります。
■メリット② プロによるサポートをしてもらえる
会社を買う、売るとなると、会社の会計情報の整理、細かい売買条件の調整などいい条件で売る、いい条件で買うとなると、やはりM&Aの知識を持ったプロによる調整が必要になります。
会社を売ったのはいいものの、自分でも把握していなかった簿外債務が売却後に発覚して、追加で支払うことになったり、会社を買ったあとに引き継ぎの手続きがうまくいかず、優秀な人材が退職して売上が落ちたりなど、企業買収/売却においては様々なことが起きます。経験がないからこそ把握しきれない重要なポイントをプロから助言してもらうことが、M&Aで成功する大切なポイントといえます。
■メリット③ 自分の会社にとってよりいい条件での売買ができる
M&Aも不動産と同じで、売買価格を評価する基準があります。しかし、その評価価格はあくまでも一つの基準で、買手と売手の交渉により、最終的に売買価格が確定となります。
したがって取引実績が豊富で、プロがいる仲介会社に依頼した方が、相手の会社のことを詳しく知ることができ、より良い条件での売買が可能になります。
■メリット④ 税金のアドバイスがもらえる
売手会社は、M&Aにより会社を売却した場合、所得税、法人税などの税金が課せられます。せっかく会社を売却して大金を手にしたのに、税金でほとんど消えてしまってはもったいないですよね。一般的には仲介会社には公認会計士、税理士などお金のプロも在籍しているので、税金対策のアドバイスももらえます。
一方、M&A仲介会社に依頼するにはデメリットもあります。
■デメリット① 仲介手数料がかかる
仲介会社によって料金体系が異なりますが、一般的には着手金、成功報酬などがかかります。成功報酬は売買価格の数%で設定されていることが多く、売買価格が高ければ高いほど仲介会社に支払う報酬も高くなります。
なお、最近では売手会社だけ成約時に手数料のみ発生するという仲介会社も増えてきました。M&Aで必要となる専門知識のレベルは非常に高いので、報酬が安いから選ぶのではなく、どのようなサービスを提供してもらえるかもきちんと見極める必要があるでしょう
■デメリット② そもそも仲介会社選びに失敗する
近年M&Aの認知が広がり、一気に参入企業が増えました。当然、M&Aの実績が少なく、あまりノウハウがない会社も存在します。仲介会社に依頼したものの、なかなか良い提案がもらえなかったり、売買するいいタイミングを逃してしまったりという可能性が考えられます。
M&A仲介会社選び…見極めのポイントは?
M&Aにおいて仲介会社選びが今後を左右するといっても過言ではありません。では仲介会社は何を基準に選べばいいのでしょうか。注目すべきポイントを見ていきましょう。
■見るべきポイント① 取引実績数
取引実績数が多い会社はやはりノウハウも豊富で、より良いアドバイスがもらえるといえます。取引実績数が多い仲介会社であれば、銀行、証券会社などとのパイプも太く、より良い買手会社、売手会社の情報を提供してもらえます。
取引実績数などについては、会社ホームページなど一般的に公開されている情報では確認できない場合が多いので、必ず担当者に確認するようにしましょう。
■見るべきポイント② 取扱い業界
業界関係なく、幅広くM&Aを行っている仲介会社もいれば、業界特化型で行う仲介会社もあります。業界特化型の仲介会社の場合、その業界に精通しているので、自分の会社にとって有利な条件で売買する見込みが高いという側面があります。
■見るべきポイント③ 買収後の総合プロセス(PMI)のアドバイス
M&Aでは、会社を買ったら終わりではなく、買ってからがスタートです。一般的には、売手会社の社員や取引先、銀行への開示は成約してから行います。つまり、それまでには基本的にはM&Aの手続きについて、ごく一部の関係者しかわからないのです。
会社の売却に対して、不満に思う優秀な人材が流出したり、クライアントから離れていったりなど、会社を買ったのはいいものの、売上が一気に落ちるというリスクも考えられます。
そうならないように、買取監査(デューデリジェンス)のタイミングで、PMIの調整を始める必要があります。きちんとPMIのアドバイスができるM&A仲介会社を選ぶことが重要です。
■見るべきポイント④ 税金のプロの有無
M&Aでは売買の手法や状況によって、様々な税金が絡んできます。実際に成約したあとに、多額な税金を請求され資金難になったり、予定していた売却益が出なかったりなど、不測の事態に陥らないためにも、事前に税金対策を立てることが必要です。
M&Aでの税金は多岐に渡るため、税理士、公認会計士などM&Aに特化したお金のプロがいる仲介会社に依頼することが大切です。税理士などの在籍数、提携先などについて、確認するようにしましょう。
見るべきポイント⑤ 悪徳業者に注意
M&A仲介会社は資格が必要ないため、やろうと思えば、どんな会社でもできます。なかには、守秘義務に違反したり、相手会社のマイナスになる情報を隠したまま交渉を進めたりと、質の悪い業者も存在します。
そういう被害に合わないため、「取引実績数」「提携先」「会社規模」など、ホームページで確認できる情報のほか、実際に担当者と面談してみて「本当に専門知識があるのか」「信頼できるのか」など、総合的に見て判断するようにしましょう。
M&A仲介会社に依頼する時の「仲介手数料」
実際にM&A仲介会社に依頼する時の手数料を、売手会社と買手会社を別々に説明していきます。
【売手会社の場合の仲介手数料】
①企業評価料・案件化料
仲介会社と提携仲介契約を締結後、会社の財務状況、会社の紹介資料などを作成するので、その時に企業評価料・案件化料として費用が発生する会社がいます。つまり着手金です。
その基準は、会社の簿価資産額で異なり、100万〜500万円が相場になっています。なお、海外に関連会社、工場などがある場合、上記企業評価料と案件化料の他に、更に300万〜500万円を別途請求されます。
たとえ成約しなくても着手金は返してもらないことを認識しておきましょう。
②成功報酬
実際に、M&Aが成約した時に請求される報酬です。下記は一つの目安金額として参考にしてみてください。
5億円以下の部分:5%
5億円〜10億円以下の部分:4%
10億円〜50億円以下の部分:3%
50億円〜100億円以下の部分:2%
100億円超の部分:1%
③最低手数料
合併、会社分割など業務提携の場合、最低手数料を設けています。形態・規模によって異なり、1,000万円が一つの目安になります。
④その他の実費
仲介会社に支払う上記費用の他に、下記実費の負担もあります。
・不動産登記、株券印刷などの実費
・弁護士、公認会計士などの実費
【買手会社の場合の仲介手数料】
①着手金
買手会社も同様、仲介会社と提携仲介契約を締結後、着手金を請求されるケースが多いです。その基準は、売手会社の簿価資産額で異なり、100万〜500万円が相場になっています。なお、たとえ成約しなくても着手金は返してもらえないのは、売手会社の場合と同様です。
②業務中間金
買手会社の場合、業務中間金を請求される仲介会社があります。その基準は成功報酬の20%を目安になっており、あまり金額が低くならないため、最低額を決めている場合もあります。
基本、業務中間金は成功報酬に充当します。
③成功報酬
成功報酬は、売手会社同様M&Aが成約した時に請求される報酬です。下記は一つの目安金額として参考にしてみてください。
2億円以下の部分:2,000万円
2億円〜5億円以下の部分:5%
5億円〜10億円以下の部分:4%
10億円〜50億円以下の部分:3%
50億円〜100億円以下の部分:2%
100億円超の部分:1%
④その他の実費
買手会社も同様、下記実費も負担することを認識しておきましょう。
・不動産登記、株券印刷などの実費
・弁護士、公認会計士などの実費
まとめ
最近は完全成功報酬の仲介会社が増えました。報酬が安いのは大変いいことですが、M&Aは非常に高い専門知識が求められます。費用だけではなく、きちんとその会社のスキルも評価するようにしましょう。