M&A会社に騙されて、多額の損害を被る場合も
■Case1.M&Aアドバイザーが重大事項を隠してM&A成立
こちらのケースは、M&Aアドバイザーが売手会社の悪い情報を隠した状態でM&Aが成約。その後、会社が倒産し「買手会社」が被害を受けたトラブルです。
売手企業はM&Aの交渉期間中に、資金繰りが厳しく、ショートしそうな状況であることをM&Aアドバイザーに正直に話しました。しかし、M&Aアドバイザーはそれを話すと破談になることを懸念して、その事実を買手会社に隠し、そのままM&Aが成立。しかしM&Aが成立した直後に、資金ショートでその会社は破産しました。
売手会社・買手会社の情報を隠さずに伝えることがM&Aアドバイザーとして当然のあるべき姿ですが、成約をさせたい(=成功報酬がはいってくる)ために、重要な事実を隠したM&Aアドバイザーも存在しています。M&Aアドバイザー選びは慎重に行いましょう。
■Case2.「高額で売れる」と言われて多額の着手金を支払ったが……
こちらのケースは、仲介会社による高額査定を信じて着手金を支払い会社の売却を依頼したが、一向に進展しないという、「売手会社」が被害を受けたトラブルです。
売手会社はあるM&A仲介会社に会社売却の相談に行ったら、「数億円で売れますよ!」と言われたそうです。社長は「そんなにうちの会社は評価されるのか」と嬉しくなり、そのM&A仲介会社に数百万円の着手金を支払って会社売却のコンサルティングを依頼しました。
しかし買手会社は一向にみつからず、M&A仲介会社が、本当に動いてくれているかがわからないまま半年ほど経過してしまったそうです。
筆者が会社査定をしたところ、到底、そのような金額で売れるような状況ではありませんでした。そのM&A仲介会社は着手金が欲しいために、故意に査定価格を高く出して売る気にさせた可能性がありました。
会社売却を依頼する際には、M&A仲介会社は1社に限らず何社か回り、いくらで売れそうかM&A仲介会社が考える相場などを聞きます。複数社の意見をもって、どこに依頼するか決めることが非常に重要です。
■Case3.資料開示に高額の料金を支払ったが…
こちらのケースは、買手候補会社が情報開示を受ける段階で不当にM&A仲介会社から代金を請求され、被害を受けた「買手会社」のトラブルです。
買手候補会社は「売手会社は本当に買収する価値がある会社なのか」を検討するにあたって、その判断のための非常に初歩的な情報開示を依頼したところ、数十万円が必要だとM&A仲介会社から言われました。
買手候補会社はある基礎的条件を満たしているかどうかさえ分かれば、検討の有無が決定すると伝えたところ、担当のM&Aアドバイザーからその条件を満たしていると言われました。そこで、数十万円を支払ったのですが、実際に渡された資料を確認したら、対象会社はその基礎的条件を満たしていませんでした。
その買手候補会社はM&A仲介会社に抗議をして、数十万円を返金してもらったそうです。もちろん、そのM&A仲介会社はその買手候補会社から出禁になったのだとか。
M&A仲介会社には完全成功報酬の会社から、着手金、中間金などを要する会社もあります。自分の会社の状況等に応じて、M&A仲介会社を選ぶようにしましょう。
多額のお金が絡むM&A「裁判」に発展するケースも
■Case4.売手会社のオーナー社長が売却した会社のお金を使い込んで海外逃亡
こちらのケースは、売手会社のオーナーが会社売却後に会社のお金を横領し、「買手会社」が被害を受けたトラブルです。
会社を売却後、元のオーナー社長が法人名義のクレジットカードを持ち出して、売却したあとにも関わらず、多額の使い込みをして、海外に逃亡しました。買手会社としては、海外に行かれては、横領されたお金を回収するのにもひと苦労です。
クロージングの際はすべての通帳・銀行カード・実印、会社クレジットカードを引き渡してもらい、その後の保管を慎重に行うようにしましょう。
Case5.売手会社がM&Aアドバイザーに支払う報酬が惜しくなって……
こちらのケースは「売手会社」の契約違反によるトラブルです。売手会社はM&Aが成功したにもかかわらず、多額の現金が手元にはいり、独り占めしたくなったのでしょうか。実際には瑕疵はなかったにもかかわらず、M&Aアドバイザーに言いがかりをつけて、成功報酬の支払いを拒否しました。
M&Aアドバイザーは訴訟を提起。売手会社は訴訟で全面敗訴しました。結果、アドバイザーの弁護士費用まで負担することになり、より多くのお金がでていくことになりました。
自分の会社のために一生懸命働いてくれた、M&Aアドバイザーに感謝の気持ちを込めてちゃんと報酬を支払い、締結した契約を守りましょう。
Case6.売手会社がついた嘘がばれて、M&A後に訴訟に発展
こちらのケースは、「売手会社」が重要な情報を隠したままに会社を売却し、その後発覚。訴訟になったトラブルです。
売手会社がある法律に違反したままで営業していたことをオーナー社長は隠して会社を売却。M&A後に発覚し、買手会社は売手会社に対して、損害賠償と詐欺で訴えることになりました。
このような訴訟になると、売手会社は自身のキャリアに傷がつくことになり、会社にとっても非常に大きな損失を被ることになります。買手会社をだまして会社を売却しても必ずばれます。目先の利益ではなく、長期的な利益を考えて、お互いのために、誠実なM&Aの取引をしましょう。