戦後、大規模に整備された日本のインフラが、老朽化により崩壊の危機に直面しています。「物理的な寿命=耐用年数」について十分に議論されてこなかったため、思うように修繕が進んでいないのです。不動産投資も同じリスクを抱えており、物件の修繕、さらには解体まで想定することが重要であると、第一カッター興業株式会社で経営企画室長を務める石川達也氏は警鐘を鳴らします。

建物の最後には「オーナーの責任」が伴う

不動産投資において、建物の解体が投資期間内に入らないとしても、リセールバリューを考えれば解体費用を試算しておくことが重要です。また新築設計時は解体を考慮した設計にはなっておらず、いざその時になって「えっ、こんなに費用がかかるのか」と驚いたり、そもそも想定外の費用の収益率が悪化したり、なかには法令で定められたルールを無視した違法行為が発生したりしているのが現実です。

 

不動産の解体費用の構成要素

 

「建物を解体する」とひと口にいっても、壊す(解体)・捨てる(処分)・戻す(整地)という3つの要素が必要となります。そしてそのプロセスは建築基準法・建築業法・労働安全衛生法・石綿障害予防規則・廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃掃法)・建築リサイクル法など、実に多くの関連法令によってやるべきことが規定されています。その届出や実際の作業は業者に依頼することになりますが、あくまで施主は依頼主自身であり、法令順守の義務は依頼主にあるといえます。

 

数10年~50年と長きにわたり使用され、賃貸経営を支えてもらった建物の最後は、最終的に現状回復を行う必要があります。そこには所有者であるオーナー自身の責任があるということを改めて認識することが必要です。

 

では、初期投資の段階で解体工事をなるべく想定内の費用で収めるために考慮すべきポイントを壊す(解体)・捨てる(処分)という2つのポイントから見ていきます。

壊すこと(解体)を意識した設計

多くの工事に共通しますが、特に解体においてはどれだけ大型の重機で解体工事を行えるかが工事の効率を左右します。新築や補修工事とは違い、解体は無くすことが目的であることから、重機などの機械の力を利用して素早く解体工事を進めることが費用を抑えることに繋がります。

大型の重機を使えば解体費用は抑えられる
建物の解体費用 大型の重機を使えば解体費用は抑えられる

 

重機などの機械を利用した解体工事を可能とする条件としては

 

・大型トラックが建物付近まで搬入できる

・騒音や振動が一定期間許容される周辺環境

・建物の形がいびつでない

 

などが挙げられます。

 

重機は大型トラックで搬送されることが一般的であり、乗用車がギリギリ入れる接道しかない物件の場合は、それに合わせたサイズの重機しか利用できず極端な効率低下(=費用UP)に繋がります。

 

また、重機を利用した解体では打撃音や衝撃音、さらにはその振動が周辺に拡散されます。挨拶回りや丁寧な説明を事前に行い、周辺住民や企業から一定の理解を得ておくことが重要です。クレームが多くなれば、重機施工からより静音・低振動な施工へ切り替える必要が発生し、これも費用UPに繋がります。

 

所有物件の周辺にどのような住民がいて、どのような企業があるのかを把握しておくことは、工事など、周辺へ迷惑をかける際には大切な情報となります。特に、病院が隣にある場合は、振動によって作動しなくなるMRIなどの精密医療機器によって、重機作業ができなくなる場合もあります。

解体する建物周囲に病院がある場合は要注意
建物の解体の注意点 解体する建物周囲に病院がある場合は要注意

 

そして最後に建物の形、重機での解体は建物を大胆に壊していくことから、下層階が吹き抜けなどの空間になっており、高層階だけ建物が出っ張っていたり、左右から支えられて浮いていたりする状態の構造では、中空となっている部分の解体が重機では危険となり、工法の変更が必要となることがあります。

捨てること(処分)を意識した設計

解体工事で発生するゴミは、廃掃法によってすべて産業廃棄物として適切な処分が必要となります。家庭で出るごみは一般廃棄物として行政サービスを利用できますが、産業廃棄物では行政サービスは利用できず、行政から許認可を取得している民間処分場に廃棄を依頼する必要があります。解体工事では発生する廃棄物も大量となり、処分費用も高額となります。

 

廃掃法では産業廃棄物を種類別に20の区分に定めており、各区分に応じた処分を必要としています。解体時の見積りでは、処分を区分混合で行うのか、それとも現場で分別を行った上で区分ごとに処分を行うのかのチェックが必要です。区分混合処分では民間処分場で分別を請負うことになり処分費用が増大します。現場内分別であれば処分費用は下がりますが、作業費が増大するので、どちらがトータルで安くなるかを比較することが重要です。

 

次に処分で大きな問題となりうるのが「アスベスト」です。

 

2006年10月に改正された建築基準法によって、建築物における吹付けアスベスト等(吹付けアスベストおよびアスベスト含有吹付けロックウール)の使用が禁止され、さらに工作物も含め既存建築物の増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替えの場合には、原則としてアスベストの除去が義務付けられました。

 

この法改正を契機に保有物件にアスベストが含まれているかどうかが、その資産価値を大きく左右することになりました。中古物件の取得を検討する際には、建物の状態や立地を考慮するのと同様に、アスベスト含有に関する調査が自己防衛のためにも必要なのです。

 

アスベストの除去に際しては、工事費用・処分費用が一気に跳ね上がります。法改正は13年前であり、現時点でもその認識が一般的になっていないのが現状ですが、2016年5月に「建築物の改修・解体時における石綿含有建築用仕上塗材からの石綿粉じん飛散防止処理技術指針」というアスベストに関するガイドラインが国立研究開発法人建築研究所から発表されたのを契機に、アスベスト処理に関しての適正化が動き出しています。

 

法律で規制されている内容であることから、所有者としての責任が発生します。次回以降でアスベストへの理解を高め、現状を認識し、とるべき防衛策について解説を行います。

 

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