1:財務分析結果と「社長の考える課題」を結びつける
財務分析の目的は、計算書類の数値を分析し、会社の実態や今後の課題を把握することにあります。
自社の過去の分析結果と現在の状況を比較すれば、成長度合いや変化がわかります。それ以外にも、同業他社との比較を行うことで、自社の強みや弱みを認識し、今後の経営に反映させることができます。また、回収遅延先や取引先の状況を分析すると、経営リスクを未然に回避することにもつながります。
しかし、「財務分析」と一言でいっても、様々な手法があります。なかには、グラフや図表を駆使し、見栄えだけは素晴らしい分析資料もあります。しかし、こうした資料を作成しただけでは、会社の状況は何も変わりません。財務の数字と、商品面、生産・物流面、営業面、組織面など具体的な会社の動きと数字を結びつけ、「会社のここに問題があるので、他社と比べて自社の財務数値が悪くなっている」という因果関係をしっかりと理解することが必要です。
財務分析の視点には以下の4つがあります。
●収益性・・・十分な利益があがっているか、また、何が儲かっていて、何が足をひっぱっているのか
●生産性・・・資本、従業員、設備が有効に活用されているか、遊休やムダはないか
●安全性・・・借入金の支払い能力は十分か、将来の投資に向けた資金調達は健全に実行できる状態か
●成長性・・・順調に成長できているか、どの分野が成長しているのか、また、目指しているのか
2:課題改善の行動をアクションプランとしてまとめる
たとえば、財務分析の結果、人件費率が悪かったと判明した場合、「人件費を改善すべきである」という単純な結論ではなく、人件費率が高くなり財務数値が悪くなった奥に潜む原因は何か、その要因を改善するにはどのような視点を持って、どのような方法で解決すべきかを、分析する必要があります。
原因を特定し、改善すべき課題が明確になったら、どこまで改善するのかを数値で決めておくことが必要です。たとえば、単に「残業を減らすよう頑張る」というだけの場合、改善の度合いが評価できず、日々の行動につながらないことがあるでしょう。
改善目標数値が決定したら具体的なアクションプランを立案します。アクションプランは、「業務のどのような改善行動」を、「誰が」、「いつまでに」やるのかを明示できるようにし、結果についてのチェックも、「いつ」、「どのように」するのかを決定しておきます。
アクションプランにおいて、今までなかったことに取り組む場合は、仕事のやり方を変革したり、販売管理システムの導入などIT化が必要になったりします。アクションプランは組織に展開していきますので、多くのケースでは組織そのものの見直しを伴うことがあります。
3:アクションプランを全体の数値計画に落とし込む
上記のアクションプランが、会社の業績数値に与える影響度を評価し、将来の数値計画として貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つを作成します。金額の裏付けがないと、アクションプランの改善行動が十分かどうか、また、採算性や会社全体の活動量として問題がないかをチェックできません。
その結果、せっかくアクションプランを立てたのに赤字を招いてしまうこともあります。数値作成には、目的に応じて様々なものがありますが、重要となるのは売上及び粗利予算、経費予算、資金予算の作成です。
① 売上及び粗利予算
次年度の売上高がどのくらいになるのかを予測するものですが、これにはまず会社全体の売上予測を行い、それを各部門に割り当てていく方法と、各部門が作成した売上目標を集計して作成する方法があります。
② 経費予算
広告宣伝費や交際費といった勘定科目ごとに1年間の支出額を予測していくものです。アクションプランによって、改善し減少させるもの、売上アップのために増やすものなどの経費予算を作成します。
③ 資金予算
継続的な事業活動や臨時的な設備投資活動などを実現するための資金収支計画のことです。売上代金の回収や仕入代金の支払いサイトの決定なども考慮します。最終的には営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー及び財務キャッシュフローに問題がないか確認します。
これらの予算の作成にあたっては、常にアクションプランとの整合性を確認する必要があります。その後の実行を円滑に運用するため、予算を作成する際には、
① 社員全員が自らの目標とできること
② 実績とのかい離が生じた場合には速やかに是正できること
③ 予算に基づいて各部門または従業員個人が目標をコントロールできること
④ 予算を達成した場合に人事考課に反映され、達成感を味わえるものであること
といった4点に留意して作成してください。
4:事業計画としてまとめる
今までの、「改善課題の特定」と「改善のためのアクションプラン」及び「改善のアクションプランを織り込んだ将来の会社数値」を事業計画書としてまとめます。社長は普段、誰にも縛られませんが、今後は社長自らがまとめたこの事業計画書を常に規範とし、社員に対しては、事業計画数値達成の実行責任を負うことになります。
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