「まさかうちに限って…」親の死後、養子の存在が判明した事例

相続における予想外の出来事のひとつに、「養子の発覚」があります。自身が亡くなったあと、「争続」が起きないためにも、「家族関係の秘密」は思い切って明らかにすることが大切です。そこで本記事では、北村税理士事務所代表の北村英寿氏が、実際に経験した相続トラブルの事例を紹介します。

養子も法定相続人…養子の存在はあらかじめ伝えておく

「まさかうちに限ってそんなこと、あるわけないと思っていた」

 

相続における予想外の出来事に、「養子の発覚」があります。事前に被相続人が相続人にしっかり伝えておかなければ、相続税対策に大きな穴が空いてしまいます。

 

私が担当した案件でもありました。85歳のAさんには一人娘のBさんがいました。Aさんが亡くなったあと、Bさんは相続のため戸籍謄本を取り寄せたのですが、そこでもう一人、実子の娘がいたことが判明したのです。親戚に尋ねると、どうやらその子は生まれると同時に養子に出されたそうです。Bさんは何も聞かされていなかったので、まさに寝耳に水。

 

それでも記憶をたどっていくと、「そういえば、小さいころ、よく家に遊びに来ている子がいました。きっとあの子がそうだったんですね……」と、その子の存在がうっすら蘇りました。私がその養子に連絡をとり、話を聞いたところ、彼女は自分が養子であることや相続権があることを知っていました。

 

しかし彼女は、相続を放棄しました。養子に出された先が資産家だったこと、成長して自身も資産家に嫁いだことなどが放棄の理由です。結局、Aさんの財産はBさんが1人で相続することになりました。

 

当然ながら、養子がいたとわかると、「まさかうちに限って……」と、誰もが驚きます。しかし、実は、戸籍謄本を取り寄せて養子の存在が判明することは珍しくありません。

 

昔は、商売人や資産家の家に子が生まれないと知人がその家へ子を養子に出したり、子に恵まれない夫婦に親戚が自分の子を養子に出したりと、養子縁組は珍しいことではありませんでした。家族の形は、時代によっても変わるのです。

 

とはいえ、相続となるとそれだけでは済みません。養子には相続権がありますから、もし養子に出した、養子をもらったことを伏せたまま被相続人が亡くなってしまうと、残された実子と養子で遺産分割協議を進めなければならないのです。連絡がすぐにとれればいいのですが、なかなか連絡がつかないとなると、あっという間に時間が経っていきます。相続発生後の10カ月では足りるかどうか怪しいときもあります。

 

連絡がついて会えたとしても慌てて話し合うのではうまくいきませんし、後々に判明すれば今まで講じた対策は水泡に帰してしまいます。本格的な相続税対策に入るためにも、こういった前提は必ず相続人に伝えておいてください。それだけで、起こらなくてもいい問題が起きずに済むのです。

兄弟なのに片方にしか相続権がなかった

相続権について珍しいケースがあったので、ここで紹介しておきます。都心に住むAさんが90歳で亡くなり、残されたのは妻のBさんと、子である長男のCさんと次男のDさんの男兄弟2人でした。財産は自宅不動産1件のみで、預金は一切ない状況にもかかわらず、都心の高い路線価が災いして、相続税は800万円にもなりました。

 

一次相続では配偶者控除を適用して税金を支払うことなく相続を切り抜けましたが、問題は二次相続にあると考えていました。息子たちへの二次相続ではまた同じくらいの税金がかかることになるので、何らかの対策が必要になります。しかも妻であるBさんの年齢も80代なので、うかうかとはしていられません。

 

しかしそれ以上に厄介な事実があることに、一次相続の申告作業の段階で気付きました。最初にお話を伺ったとき、Cさんは60代、Dさんは40代。「兄弟なのにかなり年齢が離れているな」と思ったのですが、戸籍謄本を取り寄せたところ、その理由が判明したのです。Aさんは最初の妻と死別しており、長男Cさんはその妻との子でした。Aさんはその後再婚し、妻Bさんとのあいだに次男Dさんが生まれました。つまり、2人は異母兄弟だったのです。

 

家族の形としては、何の問題もありません。しかし、相続においては大問題です。二次相続における相続人に長男Cさんは該当せず、後妻の子である次男Dさんのみとなってしまうからです。長男Cさんは養子としてBさんの子にならない限り、財産を相続できません。

 

さらに、私にこのことを相談してきたのは、次男Dさんのほうでした。彼がその気になれば、母の死後、財産を独占できたということです。これは少し珍しいパターンともいえますが、やはりその状況をよく知っている両親が、早い段階で遺産分割対策などをしておくべきだったと思います。

 

長男Cさんは法的に相続権がありませんが、何もしなければ最悪の場合、親の財産をすべて取られ、住む場所を失い、次男とは絶縁状態になったのですから。この場合、母親が生前に相談に来たことと、Dさんが財産を公平に分けようと考えたことが救いとなりました。

 

世の中はDさんのようにできた方ばかりではありません。財産を片方が一人占めして、兄弟の骨肉の争いに発展する可能性もありました。

 

相続案件を手がけていると、各家庭によって、さまざまな事情があることを実感します。だからこそ、相続発生後ではなく、生前に余裕を持って確認しておくべきなのです。被相談人が生前に真実を打ち明けていれば、スムーズに解決できることはたくさんあります。

 

「実は、養子がいる」「実は、本当の兄弟ではない」というのは、確かに言い出しにくいことです。しかしその子たちの本当の幸せを考えるなら、最後まで伏せておくのが得策とは思えません。伝えにくいことでも思い切って明らかにして、養子・実子、兄弟ともども納得できる対策へ踏み出すことが望ましいのではないでしょうか。

北村税理士事務所 代表
税理士(東京税理士会麻布支部所属)
TKC全国会資産税対策研究会 会員 

1971年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学卒業後は東京都港区の藤浪会計事務所に所属、資産税を中心としたコンサルティング業務に従事。六本木ヒルズや白金プラチナタワーなどの再開発案件にも携わる。2005年より早稲田大学大学院会計研究科にて租税法の大家である品川芳宣教授に師事。2007年、北村税理士事務所を開設。現在は相続税対策・申告や、顧問税理士業務を中心に行う。

著者紹介

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