差額400万円!? 不動産投資「トータルコスト」抑制のワザ

戦後、大規模に整備された日本のインフラが、老朽化により崩壊の危機に直面しています。「物理的な寿命=耐用年数」について十分に議論されてこなかったため、思うように修繕が進んでいないのです。不動産投資も同じリスクを抱えており、物件の修繕、さらには解体まで想定することが重要であると、第一カッター興業株式会社で経営企画室長を務める石川達也氏は警鐘を鳴らします。本記事では、外壁塗装やフローリングの劣化を遅らせる手法を中心に見ていきます。

部材や場所によって劣化のスピードが違ってくる

構造物や設備は時間が経過すれば、徐々に劣化が進行します。そのなかでも、風雨にさらされ紫外線にもさらされる外壁や外壁塗装であったり、年中人が歩いたり椅子などが擦れるフローリングなどは、厳しい条件にあることから劣化が進みやすい代表格といえます。

 

外壁もフローリングも、選べる材質は山のようにあり、その材質によって想定される寿命にはかなりの開きがあります。外壁ではモルタル、サイディング(窯業系・金属系)、ALCパネルなどがありますが、多くの外壁に関係するのが直接外気と触れる部分の「塗装」になります。外壁塗装の塗替えは10~15年のサイクルというのが一般的ですが、塗替えが必要となる原因とは塗装の劣化にほかなりません。

 

構造物はどんな部分でも時間と共に劣化が進行します。しかし、劣化のスピードは部材や場所によって異なることから、劣化のスピードの違いを把握し、メンテナンスの計画を立てることが重要になります。

劣化を遅らせることでトータルコストを抑制する

塗装の塗替えサイクルが10~15年といっても、10年なのか15年なのかで掛かるコストは大きく変わってきます。たとえば新築から45年間を寿命として想定した1棟建てアパートを考えた時、10年ごとの塗替えであれば4回、15年ごとの塗替えであれば2回と塗替え回数が変わってきます。仮に塗替えコスト(その他の補修費用は除く)が200万円だった場合、塗装の塗替えの生涯コストが10年1サイクルで800万円に対し、15年1サイクルだと400万円と大きな差がうまれます。

 

では単純に塗替えサイクルを15年と設定すればいいのかというと、そう簡単ではありません。構造物の劣化にとって漏水は大敵です。塗装の塗替えを延長したことによって、壁内部に水が浸透してしまうと、建物の構造本体の劣化が進行し、大掛かりな補修工事が必要となるリスクが発生します。その場合には塗替えコストとは比にならない位のコストが必要となり、トータルコストが跳ね上がってしまいます。

 

そこで塗装に予防治療を施すことによって劣化を遅らせる、という手法の検討が有効になります。この考え方は、予防という先行投資型のコストを投じることで、トータルコストを抑制することであり、投資の初期段階でコストが発生することから心理的には難しい選択だといえます。しかし、賃貸不動産投資は中長期スパンでの投資となることから、より経営視点で上手なお金の使い方をする必要があり、先行投資型の予防コストを検討する価値はあるのではないでしょうか。

建物を長く健全に保つ「外壁塗装」

外壁に付着する様々な「汚れ」を定期的にクリーニングすることで、外壁の劣化を遅らせることにつながる予防方法が有効です。一口に「汚れ」といっても、

 

・都市型汚染

・菌藻付着

・シリコーン汚れ

・塩害、酸性雨の影響

・エフロレッセンス(白華)

・チョーキング(白亜化)

 

といった様々な原因による汚れの付着が存在します。そしてその汚れの種類によって、外壁や構造物に与える影響が異なります。

 

[図表1]様々な外壁の汚れ
[図表1]様々な外壁の汚れ

 

カビや藻が外壁に繁殖すると、見た目も悪いですがカビや藻の根が外壁表面に穴をあけて浸食してしまいます。一旦浸食された場所から、浸水が起こり、その場所から外壁やその内部の構造物の劣化を加速させてしまう原因となります。

 

塩害・酸性雨に関しては、酸性の力によって鉄筋を腐食させる力を持っています。頑丈なコンクリート構造物でも鉄筋が腐食すると致命的な劣化となります。海の近くや冬に塩化カルシウムを散布する雪国では、この塩害によって道路・橋が深刻な劣化に悩まされているのです。

 

こうした、構造物にとって危険な「汚れ」が付着している場合は、クリーニングによってその汚れを定期的に除去することで、より長く健全な状態が保てるようになります。

 

汚れのクリーニングと併せて、新築・中古問わずに施工が可能な光触媒コーティングも有効です。光触媒コーティングの原理とは、二酸化チタンのコーティング層が親水基を生み出し、水を最優先して壁面に近づけようと作用します。水を外壁と汚れの間に潜り込ませ、自動的に洗い流す効果を生み出すのです。

 

このセルフクリーニング効果と汚れを分解する効果の相乗効果で、メンテナンス回数を減らし、トータルコストを抑制することにつながります。この光触媒コーティングはいつでも施工が可能なため、外壁洗浄とセットで実施することによって、足場などの費用が一度で済むために全体としては効率よく低コストでの実施が可能となります。

フローリングのコーディングで入居者の満足度もアップ

賃貸不動産の場合、入居者の平均居住期間は高齢者を除き80%以上が6年以内となっています。そのなかでも、学生、単身法人、外国人は4年以内の平均居住期間であり、オーナーから見ると2~6年に一度、室内のクリーニングが発生することになります。

 

[図表2]賃貸物件における平均入居期間
[図表2]賃貸物件における平均入居期間

 

居住者の責任による破損や汚れは、クリーニングやクロス張替えの実費を請求できますが、経年劣化によるクロスの黄ばみやフローリングの傷みは宅建業法によって貸主責任でメンテナンスを行う必要性があります。

 

そこでフローリングに対しても外壁同様にコーティングを施すことによって、経年劣化によるメンテナンスの頻度を低下させる方法が存在します。その1つが「ウルトラUVコーティング」という工法です。様々なタイプの床材に対応でき、安全性の高い工法といわれ、汚れだけでなく、傷にも強いコーティングです。

 

こうした特殊コーティングを施すことで、居住者が退去する際のフローリングクリーニングが簡素な清掃のみで終了でき、コストの削減につながります。また、居住者にも日々の掃除が非常に楽になるというメリットを提供できます。

 

今回紹介した外壁やフローリングに対する予防治療は、あらゆる物件にマッチするものではありません。しかし、物件ごとの特徴や置かれている環境によっては、劣化のスピードを抑制でき将来的なメンテナンス費用を低減させ、トータルコストの抑制につながるケースが存在します。劣化する部分の原因を分析し、適切なメンテナンスで先回り投資をすることは、理にかなった方法ではないでしょうか。

 

第一カッター興業株式会社 経営企画室長

1979年生まれ、静岡県静岡市出身。途中一年休学でのイギリス留学を挟んで2003年に上智大学物理学科卒。りそな銀行の一期生となるが入社1ヵ月後に国有化を経験。その後、2004年に第一カッター興業株式会社に入社、一年目は超高圧水にてコンクリートを破壊する職人を経験、その後札幌・千葉営業所所長を経験しながら2016年ビジネス・ブレークスルー大学院に入学、2018年に卒業し経営学修士(MBA)を取得。2018年より経営企画室業務を行い、経営全般のサポート業務および戦略立案から立ち上げまでを行う。
保有資格は高所作業車や移動式クレーンから宅建、保険販売と幅広い。
趣味は旅行で学生時代はバックパッカー、趣味と実益を両立するためにも海外進出を画策中。

著者紹介

連載日本の建物が危ない!インフラメンテナンスの専門家が提唱する「修繕&解体」を見据えた不動産投資

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