欧州は金融緩和へ…FOMC迫る米国、利下げ後のシナリオとは?

25日、ドラギECB総裁は、ユーロ圏全体での経済停滞を危惧し、政策金利を一段と引き下げる可能性を示した。これを受け、ますます対応が困難になるのは、米連邦準備理事会(FRB)だ。トランプ大統領による「利下げ圧力」も高まる一方だが、7月末に開催されるFOMCへのカウントダウンは始まっている。利下げなるか?そしてその影響は? Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence BankのCIO長谷川建一氏が解説する。

ドラギECB総裁は、金融緩和を実施することを示唆

欧州中央銀行(ECB)は25日政策委員会において、金利フォワードガイダンスの文言を「現行またはそれ以下」に変更し、政策金利を一段と引き下げる可能性を示した。ドラギECB総裁は、政策委員会後に記者会見し、ユーロ圏経済にはなお強さが見られるものの、特に製造業での見通しが悪化しており、景気減速は深刻との認識を示した。

 

実際、最近発表された指標でも、ユーロ圏の製造業で企業活動の後退が認められるほか、ドイツの景況感も急低下していることが示されており、広範な景気後退の可能性は高まっている。

 

さらに、ドラギ総裁が会見で触れたように、ECBがターゲットとする消費者物価上昇率が、目標である2%弱の水準から大きく下回って乖離していることも、政策発動の必要を印象付けている。

 

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また、政策委員会の声明では、政策金利のフォワードガイダンスを強化する方法や、超過準備の付利方法の設計変更、マイナス金利の影響緩和の措置、新たな資産購入を行う場合の規模および資産の組み合わせなどについて、選択肢の検討を関係委員会に指示したと記された。

 

これらは、次回9月の政策委員会でECBが市中銀行からの預金に対して付利している金利を0.1%ポイント程度引き下げることと、2020年1月から同年末まで新たな量的緩和政策を採ることを決断することになるとの市場関係者の読みと符合する。

 

次回9月の会合は、10月末に任期満了を迎えるドラギ総裁にとって、残り2回のうちの貴重な機会となる。9月にはECBのマクロ経済予測も更新される。次回での緩和政策の発動はほぼ間違いないと見てよいだろう。

圧力を強めるトランプ、外堀を埋められるFRB

さて、今月30日には、米連邦準備理事会(FRB)も連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。トランプ米大統領はFOMCが近づくなか、FRBに対し利下げを決断するよう、尋常とはいえないほどの圧力をかけている。7月19日には 、ツイッターへの投稿で、FRBが「欠陥のある思考過程」に陥っていると批判し、FRBに対し利下げの実施を求めた。利上げが過度に実施されており、「正気でない量的引き締め」を止める必要があると主張した。

 

22日にも再度ツイッターに投稿し、トランプ大統領は、「インフレの心配がないにもかかわらず、FRBが過度に利上げを実施したため、米国は他国よりも高い金利を強いられている。金融引き締めを続ければ、米国は国際競争で困難を強いられる」と、FRBを再度批判した。 

 

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また、景気が減速してからでは、より大幅な利下げが必要となるため、コストはさらに大きくなるとし、早期に利下げを判断したほうが結果的にコストは低く、より生産的な政策判断をしたことになるとFRBに利下げを求めた。昨年までの一連の利上げは行き過ぎであり、FRBは二度と失敗してはならない、と極めて強いトーンで言い放ち、FRBに対し、今月30日に開催されるFOMCで利下げを判断するよう求めた。

 

FRBは、雇用の最大化と物価のコントロールを主務とする。物価は、ターゲットとする2%には及ばない見通しだが、6月の雇用統計では、引き続き堅調な雇用市場の現状が示されている。そのなかで、FRBが見切り発車的に、予防的な利下げに踏み切るのは、異例のことである。市場では、今回7月末に開催されるFOMCでの0.25%の利下げを完全に織り込んだ状態だが、FRBの判断は難しいものになるのだろう。

大幅で複数回の利下げに及ぶのか?見極めが必要

筆者も、FRBの利下げは、今回0.25%幅で有り得ると見ているが、予防的な利下げは、その後の効果も確認しながら実施されるだろう。また、米国経済は減速リスクは高まっているが、それほど弱っているかというと、そこまでのものではない。米中通商協議の再開や、それに伴う中国経済のモメンタムの回復など、ポジティブな要因も出てきている。それらを見極めながらの政策判断が続くだろう。したがって、市場が期待するような、年内に0.75%にも及ぶものにはならず、あくまで予防措置として最小限のものになるのではないか。

 

そうなると、数回に及ぶ利下げを織り込んだ市場の見方は変わり、利下げ回数や幅の織り込み方に変化がみられるだろう。米10年債利回りは一時2%を下回る水準まで低下し、これはリーマンショック後の最低水準に並ぶ低さだが、複数回の利下げを織り込んでいる2-5-10年の米国債利回りは、反転して水準訂正を起こすことになろう。その場合には、為替市場でも、ドル円やユーロドルで、米ドルが反発することになると予想している。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

京都大学卒、MBA(神戸大学)。
シティバンク日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。 2004年末、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に移り、マーケティング責任者として活躍。2009年からはアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク/日本ウェルス)を創業し、COOに就任。2017年3月よりCIOを務める。

WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

長谷川建一氏登壇のセミナー https://gentosha-go.com/articles/-/13973

著者紹介

連載香港発!グローバル資産防衛のためのマーケットウォッチ

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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