「信託」とは、個人が持っている財産を守りながら、それを人に預けることをいいます。具体的には、本人が自分で財産を管理することに不都合が生じた場合、人に財産を預け、預かった人がその財産の管理を行いながら、生じた便益を本人に渡してあげる仕組みを指します。本記事では、岸田康雄公認会計士/税理士が、相続の生前対策として有効な「民事信託」の基礎知識を解説します。

1:民事信託で法定調書を提出するのはなぜか

信託の設定、終了やその内容変更は、当事者間の合意によって自由に行うことができます。家族間で信託を行う場合、登記を要する財産でなければ、財産が信託された事実が対外的に明らかにされることはありません。

 

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そうしますと、家族内で経済価値の移転があった場合、形式的には贈与という行為ではありませんので、贈与税の申告を失念してしまうおそれがあります。そこで、信託に係る法定調書の制度が設けられ、税務署が課税のタイミングを把握できるものとしています。

2:法定調書はいつ提出するのか

信託の法定調書は「みなし贈与」の発生を税務署が把握するための制度です。したがって、経済価値が移転しない自益信託の場合にはみなし贈与は発生しませんので、法定調書を提出する必要はありません。

 

これに対して、他益信託の場合、みなし贈与が発生します。それゆえ、以下のようなタイミングにおいて、受託者は、その翌月末までに所轄税務署へ法定調書およびその合計表を提出しなければなりません。

 

[図表1]法定調書およびその合計表提出のタイミング
[図表1]法定調書およびその合計表提出のタイミング

 

ただし、信託財産が50万円以下と少額の場合は、法定調書の提出は不要とされています。法定調書の提出は、どうしても忘れやすいものです。信託の記帳・決算・申告を併せて顧問税理士に委託してしまったほうが安全でしょう。

 

[図表2]信託に関する受益者別(委託者別)調書
[図表2]信託に関する受益者別(委託者別)調書
[図表3]信託に関する受益者別(委託者別)調書合計表
[図表3]信託に関する受益者別(委託者別)調書合計表

3:信託計算書とは何か

信託の受託者は、翌年1月31日までに「信託の計算書」とその合計表を作成し、所轄税務署へ提出しなければなりません。これは、信託財産の決算に係る情報を課税当局へ報告するための制度であり、法定調書の1つです。

 

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信託計算書は受益者ごとに作成します。したがって、複数の受益者が存在している場合、その人数分の計算書を作成しなければなりません。

 

[図表4]信託の計算書
[図表4]信託の計算書

 

たとえば、不動産所得400万円(=収入1,000万円-経費600万円)を稼ぎだした信託財産があったとしましょう。信託財産の管理を行っているのは受託者ですから、稼いだお金は受託者の手元にあります。つまり、受益者が受け取るべきお金を一時的に受託者が預かることになるのです。その場合、たとえ受益者が受託者から稼いだお金を1円も渡されていないとしても、不動産所得として400万円を申告しなければなりません。信託計算書には、収益1,000万円、費用600万円を記載することになり、所得400万円が課税当局に報告されることになるのです。

4:信託計算書の記載事項

この信託計算書には、受益者の住所・氏名、信託の期間、信託の目的、受益者に交付した利益、受託者報酬を記載します。これによって、課税当局は信託財産から発生した所得が、受益者の所得として漏れなく申告されているかを把握しているのです。

 

ただし、その様式としては、収益・費用の明細(損益計算書の情報)と資産及び負債の明細(貸借対照表の情報)を記載するだけでよく、とてもシンプルなものです。貸借対照表と損益計算書の形式は求められておらず、その要旨を記載すればよいということになります。

 

 

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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