財産の暦年贈与…子のムダ遣いを「民事信託」で防ぐ方法

「信託」とは、個人が持っている財産を守りながら、それを人に預けることをいいます。具体的には、本人が自分で財産を管理することに不都合が生じた場合、人に財産を預け、預かった人がその財産の管理を行いながら、生じた便益を本人に渡してあげる仕組みを指します。本記事では、岸田康雄公認会計士/税理士が、相続の生前対策として有効な「民事信託」の基礎知識を解説します。

生前贈与したいけど浪費してしまうおそれが……

[お悩み①]

 

多額の金融資産を保有しているため、税理士からのアドバイスに従い、継続して暦年贈与を行いたいと思います。しかし、子供たち個人の証券口座を作ってしまうと、金融資産を勝手に現金化して浪費されてしまうのではないかと心配しています。どうすればいいでしょうか?

 

◆受益権の暦年贈与

 

暦年贈与の基礎控除額は110万円と小さな額ですが、複数の相手に長期間続けて贈与することによって、結果として大きな財産を移転することができます。これは相続対策の基本的手段の1つです。

 

たとえば、子供2人、孫2人の合計4人に毎年125万円ずつ(贈与税15,000円/1人)、20年間にわたり暦年贈与を続けると、総額1億円の相続財産を減らしておくことができ、相続税の軽減を図ることができます。

 

[PR] 本稿執筆者によるセミナーを8月29日(木)に開催!/東京(幻冬舎)
財産2億円以上の方のための
タイプ別(企業オーナー、地主・不動産オーナー、金融資産家)
「相続生前対策」の円滑な進め方

 

しかし、多額の現金や金融資産を贈与すると、子供たちが勝手に浪費してしまう可能性があり、親としては心配です。子供たちの証券口座を作ってしまうと、勝手に現金化して引き出すことも自由な状態となります。

 

そこで、自己信託(自分が受益者)によって所有した受益権を暦年贈与するのです。そうすれば、受益者である子供たちが遊びのために現金が欲しい、信託財産を現金化したいと思っても、受託者である親にお願いしなければなりません。つまり、親のお叱りを受ける機会が設けられるため、一定の抑止力が働くのです(法的には現金化は可能です)。

 

[図表1]受益権を暦年贈与する
[図表2]信託の関係

暦年贈与に伴う税務リスクが気になる

[お悩み②]

 

長期的な相続対策と子供の将来のことを考えて、子供が小さいうちから現金の暦年贈与を始めたいと考えています。ただし、子供は小さいので、多額の現金を贈与されたことを知らせたくなく、子供名義の預金口座は私が管理し続けたいと考えています。

 

しかし、顧問税理士からは、親が預金口座を管理しているとすれば、税務調査で「名義預金」だとして贈与が否認される可能性が高いといわれました。どうすればいいでしょうか?

 

暦年贈与は効果的な相続対策であり、110万円の基礎控除を長期間活用すれば、最終的に多額の財産を子供に移転することができます。

 

この点、受贈者がまだ小さい子供である場合、子供が遊びのために浪費してしまわないか心配になります。そこで、大多数の親が考えるアイデアが、子供名義の預金口座を親が管理して、そこに毎年少しずつ現金を振り込んでおこうというものです。しかし、これでは贈与契約が成立しておらず、将来的に税務調査が入った場合、贈与が否認され、「名義預金」として親の相続財産に加算されてしまいます。これは相続税の税務調査において最も多い否認パターンです。

 

◆名義預金回避のための信託の活用

 

そこで、公正証書を作成し、預金を信託財産として自分で預かるのです。つまり、親を受託者、子供を受益者として預金を信託します。そうすれば、信託によって預金の受益権が確実に子供に贈与され、名義預金として否認されることはありません。贈与の際に受益者である子供の受諾も必要とされないため、親が勝手に贈与を行うことができます。

 

[図表3]子供名義の口座を親が管理したい
 
[図表4]子どもを受益者にして信託する
[図表5]信託の関係

金融資産のポートフォリオ運用

[お悩み③]

 

多額の金融資産を保有し、信頼ある投資顧問業者の助言に従って証券投資を行っています。相続税対策のために、子供たちへ生前贈与を行いたいのですが、運用方針が決まった金融商品を勝手に売却できません。どうすればいいでしょうか?

 

[図表6]金融資産の投資ポートフォリオ

 

◆証券口座の移管の煩雑さ

 

一般的に、父親が贈与する金額は、贈与税の負担の大きさによって決めることが多く、基礎控除額である110万円か、税率10%が適用できる310万円(贈与税20万円)であるケースが多く見られます。

 

しかし、運用している金融商品の各銘柄1単位の時価はバラバラですから、ちょうど110万円、310万円だけ贈与しようと思っても不可能に近く、端数が出ます。

 

また、金融資産を贈与しようとする場合、受贈者に証券口座が必要です。つまり、子供たちの証券口座を開き、父親の証券口座から有価証券を移管しなければなりません。

 

◆受益権の暦年贈与

 

そこで、自己信託(自分が受託者)によって所有した受益権を暦年贈与するのです。そうすれば、金融商品の投資ポートフォリオを崩す必要はなく、その経済価値だけを先行して承継させることができます。

 

[図表7]自己信託(自分が受託者)によって所有した受益権を暦年贈与する
[図表8]信託の関係

 

 

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

[PR] 本稿執筆者によるセミナーを8月29日(木)に開催!/東京(幻冬舎)
財産2億円以上の方のための
タイプ別(企業オーナー、地主・不動産オーナー、金融資産家)
「相続生前対策」の円滑な進め方

 

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

平成29年経済産業省「事業承継ガイドライン改訂小委員会」委員、日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、金融機関に在籍し、中小企業オーナーの相続対策から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継と組織再編のアドバイスを行った。

WEBサイト https://fudosan-tax.net/

著者紹介

連載高齢化社会の「相続生前対策」…認知症対策としての「信託」活用法

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧