「社会通念上相当」であれば、損金算入できる
法人税法では、(1)「社葬を行うことが社会通念上相当」と認められ、かつ(2)「社葬のために通常要すると認められる部分」の費用であれば、「福利厚生費」として損金に算入することが認められています。
(借)福利厚生費×× (貸)現金預金××
令和○年○月○日 前会長○○氏の死去に伴う社葬費用として
●法人税基本通達9-7-19
法人が、その役員又は使用人が死亡したため社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする。(昭55年直法2-15「十六」により追加)
(注)会葬者が持参した香典等を法人の収入としないで遺族の収入としたときは、これを認める。
◆「社葬を行うことが社会通念上相当と認められる」場合とは、どのように判断するのか?
故人の生前における会社への貢献度(会社における経歴、職務上の地位)や死亡事情(業務上、業務外の区別)に照らし、会社が社葬費用を負担するに足る充分な理由があれば、損金として認められます。したがって、会社への貢献がないのに、会長の親族であるという理由だけで社葬を執り行っても、福利厚生費として損金処理することは認められません。
◆「社葬のために通常要すると認められる」費用の範囲
社葬を執り行うために直接必要となる費用をいい、具体的には次のようなものがあります。
●社葬の通知、広告に要する費用
●僧侶へのお布施
●葬儀場、臨時駐車場の使用料
●遺骨、遺族、来賓の送迎費用
●祭壇、祭具の使用料
●交通整理等の警備員の費用
●供花、供物、花輪、樒(しきみ)の費用
●運転手、葬儀委員への心付け
●受付用テント、照明器具などの使用料
●遺族、葬儀委員の飲食代
●受付備品、案内紙、会計備品の費用
●会葬者への礼状や粗品代
◆社葬費用として認められないものは?
社葬費用は、社葬を行うために直接必要なものであり、それ以外の費用については、遺族が負担すべきものとされます。具体的には次のようなものです。
●密葬の費用
●仏具、仏壇の費用
●初七日の費用
●墓地霊園の費用
●四十九日の費用
●戒名料
●香典返し等の返礼に要した費用
●納骨の費用
遺族が負担すべきこれらの費用を会社が支払ったとしても、社葬費用として損金処理することは認められません。会社と遺族の関係によって、負担した費用は下記のように取り扱われます。
●遺族が役員の場合 → 役員賞与
(借)役員賞与×× (貸)現金預金××
令和○年○月○日 役員○○氏の葬儀費用個人負担分として
●遺族が会社関係者でない場合 → 寄付金
(借)寄付金×× (貸)現金預金××
令和○年○月○日 前会長○○氏の葬儀費用遺族負担分として
遺族に負担を求めるのが困難な場合には、弔慰金として処理するのも1つの方法です。
(借)立替金×× (貸)現金預金××
令和○年○月○日 前会長○○氏の葬儀費用遺族負担立替分として
(借)福利厚生費×× (貸)現金預金××
令和○年○月○日 前会長○○氏の葬儀に際し弔慰金として
(借)現金預金×× (貸)立替金××
令和○年○月○日 前会長○○氏の葬儀費用遺族立替分精算
僧侶の読経料は、社葬費用として認められるのか?
社葬費用には僧侶の読経料や葬儀委員への心付け等、領収書がもらいにくいものもあります。これらの費用についても、法人税法上原則として損金に認められますが、なるべく領収書かこれに類する支払書をもらうようにします。また、領収書は会社負担の読経料と遺族負担の戒名料にわけてもらいます。なお、どうしてももらえない場合は、次善の策として、不祝儀袋の表(住職名記載)、裏(金額記載)の写しを残しておきます。
◆会葬者にふるまった精進落としの費用は、社葬費用として認められるのか?
精進落としは、葬儀後の法要の一環として行われるものであり、基本的には遺族が負担すべき費用として、社葬費用には含まれません。しかし、会葬者の多くが取引先などの会社関係者である場合には、遺族やその親族が飲食されたものを除き、会社の交際費として取り扱います。
(借)交際費×× (貸)現金預金××
令和○年○月○日 前会長○○氏の葬儀に係る精進落とし代金として
◆弔慰金を渡した場合の取扱いはどうなる?
弔慰規定等の一定の基準により支給され、かつ社会通念上相当な金額の範囲内であれば、福利厚生費として損金に算入され、支給を受けた遺族についても、相続税の課税対象にはなりません。しかし、適正額を超える場合には、死亡退職金とみなされることもあります。
(借)福利厚生費×× (貸)現金預金××
令和○年○月○日 前会長○○氏の葬儀に際し弔慰金として
また、適正額の目安として相続税の取扱いを参考にすることができます。
●被相続人の死亡が業務上の死亡である場合 → 賞与以外の普通給与の3年分
●被相続人の死亡が業務外の死亡である場合 → 賞与以外の普通給与の6ヵ月分
◆合同葬を行う場合の費用負担はどうすればいいのか?
主催会社が関連会社を有する場合、共催して社葬を行うことも少なくないでしょう。その場合、関連会社が費用を負担することに相当の理由があり、かつ負担額が適正であることが税務上のポイントになります。
特に法令や通達等で、その按分基準が明確にされているわけではありませんので、それぞれの会社の業績に対する故人の貢献度合い、職務上の地位、企業規模、会葬者に占める各会社の関係者の割合等を総合的に勘案して決定します。なお、関連会社が、合理的な基準もなく、不相当に高額な負担をしている場合には、関連会社からの寄付金や遺族である役員への賞与として認定されることもあります。
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