NY連銀ウィリアムズ総裁「ゼロ金利制約(ZLB)に近い生活」

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ウィリアムズ総裁の発言の解釈を巡っては、NY連銀スポークスマンが18日に、学術的なスピーチであり、今月のFOMCにおける政策に関するものでないとの声明を公表し、落ち着きを取り戻しました。このNY連銀の異例とも言える対応に、0.5%の利下げという観測は急速にしぼんでいます。ただ、FOMC前の微妙な時期だけに、市場との対話に課題が残されたように思われます。

NY連銀総裁講演:ウィリアムズ総裁の講演での発言の解釈で、一瞬大幅利下げ観測台頭

ニューヨーク(NY)連銀のウィリアムズ総裁は2019年7月18日、「ゼロ金利制約(ZLB)に近い生活」と題して講演しました。景気に中立的な実質利子率である自然利子率(図表1参照)の推定でも名高いウィリアムズ総裁は、過去からの研究の成果として、ZLBの影響を抑制する金融政策運営について言及しました。

 

[図表1]米国自然利子率と成長トレンドの推定値 四半期、期間:1985年1-3月期~2019年1-3月期、推定値はFRBNY ※自然利子率:経済、物価に対し引き締め的にも、緩和的にも作用しない中立的な実質金利の水準 出所:ニューヨーク連銀のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国自然利子率と成長トレンドの推定値
四半期、期間:1985年1-3月期~2019年1-3月期、推定値はFRBNY
※自然利子率:経済、物価に対し引き締め的にも、緩和的にも作用しない中立的な実質金利の水準
出所:ニューヨーク連銀のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

講演でウィリアムズ総裁が、現在のような低金利時代において各国・地域の中央銀行は、経済に問題が生じる兆候を見つけたら迅速に行動すべきだと述べたことなどから、市場では一時的に、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%と大幅な利下げを示唆したと解釈されました。

どこに注目すべきか:NY連銀、自然利子率、FOMC、推定

ウィリアムズ総裁の発言の解釈を巡っては、NY連銀スポークスマンが18日に、学術的なスピーチであり、今月のFOMCにおける政策に関するものでないとの内容の声明を公表したこともあり、落ち着きを取り戻しました。NY連銀の異例とも言える対応に、0.5%の利下げという(希望的?)観測は急速にしぼんでいます。ただ、FOMC前の微妙な時期だけに、市場との対話に課題が残されたように思われます。

 

 

まず、簡単に講演内容を振り返ると、ウィリアムズ総裁らの推定では米国の自然利子率は0.5%程度と、低水準であると述べています。

 

なお、比較的高い実質金利と、底堅い景気を受け自然利子率は1%近くで推移する局面も見られましたが、足元では再び低下が見られます。

 

ウィリアムズ総裁の結論は、自然利子率が極めて低い水準における金融政策運営として、①金利が低く、利下げ余地が少ない局面であっても、経済悪化の兆候が見られたら待ちの姿勢でなく、迅速に利下げすること、②低金利政策の長期化が望ましいこと、③インフレ率が、目標水準(現在は2%)を一定期間上回ることを許容する、政策運営を論じています。結論そのものに目新しさは無いと見られます。

 

しかし、多くのFOMCメンバーが保険的として0.25%の利下げを示唆している(図表2参照)のに比べ、特に①はやや踏み込んだ印象もあります。また、結論の部分では、①~③は今も、そして将来も有効と述べ7月FOMCを想定しても不思議でない紛らわしい表現も見られます。

 

 

もっとも、昨年夏のジャクソンホールの会議でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は自然利子率の推定についてやや慎重な姿勢を示しています。自然利子率は恐らく政策金利を決定する公式の位置づけを確保していない中でのメッセージと受け止める必要がありそうです。

 

NY連銀の直後の否定声明と、金融緩和を選好するセントルイス連銀のブラード総裁でさえ、0.5%に否定的といった発言から(図表2参照)、0.5%利下げへの期待は急速に低下している様子です。ただ、FOMC前の微妙な時期だけに、市場との対話に課題も残ると思われます。

 

[図表2]主なFOMCメンバー等による最近の発言要旨 出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]主なFOMCメンバー等による最近の発言要旨
出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『NY連銀ウィリアムズ総裁「ゼロ金利制約(ZLB)に近い生活」』を参照)。

 

(2019年7月23日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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