コインランドリーの出店での最重要事項は「立地」
コインランドリー事業にとって立地と駐車場の重要性は、年々高まっています。その点で、注意が必要なのがロードサイドです。あるビジネス系の情報サイトにこんな事例が紹介されていました。
サラリーマンのAさんは、不動産投資で得た資金で、FCを展開しているあるコインランドリーチェーンの加盟店募集に応募しました。勧められたのはロードサイドの土地だったそうです。ただ、500メートル離れたところに別のコインランドリーがあり気になりました。しかし、営業担当者は店舗の面積や駐車場の台数から大丈夫との答え。事前の想定収支計画でも、初年度の売上高は月平均65万円、2年目以降は75万円となっており、出店を決めたそうです。
ところが、オープンしてみると全然違いました。オープンして10カ月間の売上高は月平均37万円しかなく、それなのに電気やガス、水道、洗剤などの経費が月25万円の予想に対して45万円もかかったそうです。マシンのリース代を引くと毎月20万円の赤字が続いているそうです。
ぼく(石崎)も同じような経験があります。ロードサイドにも2店、コインランドリーを持っていて、そのうち1店は地主の多い田園地帯にあります。周辺の住民がよく利用する小さなスーパーがあって、そこの角地に出店したところ、とても流行りました。オープンして2カ月目にはもう軌道に乗り、良いときは売り上げが月120万円、悪い時でも70万円から80万円ありました。ロードサイドはだいたい月60万円の売り上げが目安と言われているので、上々の出来です。
正直、「やった、良かった!」と思っていました。ところが、2年もしないうちに、ぼくの店からちょっと離れたところに2カ所コインランドリーがつくられたのです。
ぼくの店を見て、雨の日は駐車場に入れ替わり立ち替わり車が入っていて、マシンもずっとぐるぐる回っているのが見えたのでしょう。近所の地主さんが、「あれいいな。手間もかからないようだし、うちの畑につくれないかな」などと考え、メーカーに電話して「あれと同じものをつくってくれ」と言ったのでしょう。
一つはコンビニの跡地(居抜き)でしたが、もうひとつは名前こそ違いますがぼくの店とデザインがそっくり、色まで一緒という店でした。結局、ぼくの店に来ていたお客さんを15%ずつ取られ、30%客足が落ちました。その後、売上が月100万円を超えることは、二度とありません。いまは良いときで月75万円、平均すると月60万円ちょっとの売り上げしかない店になってしまいました。
このように、ロードサイドは出店してうまくいったら、必ず近くに他店が出てくると考えたほうがいいでしょう。コンビニがそうです。美容室や整体院、クリーニングもそうです。お客さんがつくということは需要があるということであり、それを見て他社が近くに出店してくるのは避けられません。そして、いままさにコインランドリーの出店ブームだからこそなおさらです。
コインランドリー向けの洗濯機や乾燥機のメーカーも商売なので、競合店にも販売します。そうであるなら、最初のハードルは高くても、他店に邪魔されない場所にしっかりつくることが大事ではないでしょうか。
ぼく(柳田)の店は最初からスーパーの中に出店しました。1年、2年と順調に売上が上がってきたところで、近隣のロードサイドに、似たようなランドリーが出店しました。結構お客さんが流れるかなと思っていましたが、意外にもほとんど影響はありませんでした。その後も3年目、4年目と順調に売り上げが上がっています。
とにかくランドリーの出店において、立地は最重要です。特にロードサイドに出す場合は、「他よりも安く出店できる」「マーケティングに自信がある」「メディア戦略に力を入れている」「多くのマスコミから取材されているから安心」といった言葉を鵜呑みにせず、自分なりに納得できるまで調べたり、確認することが欠かせないと思います。
2店舗目からは金融機関の理解も得やすい
コインランドリー事業でもうひとつ難しいのは、金融機関からの融資です。アパートや賃貸マンションのように、100%ローンでということは金融機関とよほどの関係がない限り、まず不可能でしょう。特に1店舗目は自己資金が多めに必要です。最低でも必要資金の半分、土地が借地などの場合なら7割程度は準備したいところです。
なぜなら、金融機関はコインランドリーの土地や建物の担保価値をそれほど評価してくれないからです。担当者がビジネスとしてよく分かっていないということもあるでしょう。ただ、金融機関も昨今の超低金利の中で、健全な投資先を探しています。ですから、あまり悲観することもありません。
どれくらい借りられるかは、借りる人の信用力(他の資産や収入)とコインランドリー事業の採算性によって異なります。そして、2、3年すれば金融機関に1店舗目の決算書を出せます。決算書を見せれば、収支や資産と負債のバランス、キャッシュフローなどが分かります。さらに、スーパーマーケットに店を出している場合は、そこの年間売上データや来客者数、レジ通過数、平均客単価なども参考資料として提出できます。
こうして1店舗目が事業として着実に収益を上げているということが分かると、金融機関は「意外にこの事業は固いな」と判断してくれ、2店舗目からはかなり柔軟に融資してくれるようになります。
ぼく(柳田)の場合、1店舗目を出店するとき日本政策金融公庫で半分くらい融資を受けたのですが、返済実績や具体的な売上推移などをみて、メインバンク(地方銀行)からより低利での借り換えの話をもらい、実際に借り換えました。2店舗目以降も、全額出したいと言われ、金融機関とパートナーを組んで、戦略的に増やしていっています。
金融機関は、前例を大事にしますので、コインランドリー事業への投資実績や返済実績、売上推移などがクリアになれば、2店舗目以降は特に融資が下りやすくなります。また、金融機関は一般的にライバルの動向に敏感ですので、複数の金融機関と付き合いながら、他行での実績を話せば、上手にコインランドリーを増やして行くことも可能です。
だからこそ、1店舗目の立地は特に慎重に検討すべきなのです。こうして、自己資金だけでなく金融機関を上手に巻き込みながら、将来の安心のためにも、3年とか4年に1店舗ずつ増やしていく。これがコインランドリー事業の醍醐味だと思います。