在宅医療でも「手厚いケア」を…各種医療関係者との連携術

在宅で療養する患者さんに手厚いケアを行いたくても、経営するクリニック単体で行うには限界があります。そこで高い効果を発揮するのが、地域の訪問看護ステーションや、その他地域の医師たちとの連携です。本記事では、在宅医療の一層の充実を実現するための、医療関係者との関わり方を解説します。

時間外対応は、訪問看護ステーションとの連携で可能に

最近では、自宅で使える医療機器が増え、入院に近い療養ができるようになりました。喀痰など、看護師とほぼ同じレベルの医療行為ができる家族もいるので、重篤な疾患を抱えている患者でも、症状さえ安定していれば自宅で過ごすことが可能です。

 

とはいえ、高齢の患者や重篤な疾患を抱える患者の場合、急に症状が悪化することは珍しくありません。在宅医療を提供する医師にとって大きな問題となるのがこの急変です。病気は日時を選んでくれません。休診日であれ深夜であれ発生します。

 

患者の命に関わるケースもあるうえ、専門的な知識がなければ危険度が判断できないため、医師に頼りたいと患者や家族が願うのは自然なことです。そういったニーズに応えて、患者や家族から連絡があれば、すぐに駆けつける開業医もいます。担当している患者数が少なければ、ある程度までは可能でしょう。

 

ただし、かかりつけ医として担当する患者が一定の数を超え、彼らの重篤度合いが増すと、善意による時間外の対応は難しくなります。外来患者を診療する合間に訪問診療を行いつつ、さらに休日や深夜の呼び出しに24 時間365日備えるのは大変です。しかも、その体制を10年、20年と継続するとなれば、医師の身体や心はその負担に耐えきれません。

 

したがって、私のクリニックでは、24時間体制で看護を提供している訪問看護ステーションと連携することで、その問題を解消しています。

 

私が担当している患者や家族には、診療時間外に急な出来事があったらまず、訪問看護ステーションに連絡するよう、患者や家族にはあらかじめ指示してあります。訪問看護ステーションには、専門の資格を持つ看護師がシフト勤務で常駐しているので、連絡を受けた彼らが患者の状態を判断してくれます。

 

「①病院やクリニックが翌日開くのを待ってからの受診で問題ない」「②とりあえず、訪問看護師が駆けつけたほうがいい」「③すぐに医師の診療が必要」のいずれに該当するのか、仕分けをしてくれるのです。

 

仕分けの結果、③だと判断された場合には、かかりつけ医である私に訪問看護ステーションから連絡が入ります。そのときには、たとえ診療時間外でも対応しますが、①や②のケースには対応しなくて良いので、患者の急変による負担は大幅に抑えられます。

訪問看護ステーションとの協働で、質の高い医療を提供

訪問看護ステーションとの協働には、質の高い医療を提供できるというメリットもあります。かかりつけ医が指示を出し、処置は看護師が行うという仕組みを利用すれば、在宅でも病院と変わらない処置を受けられます。

 

【医師の指導・管理により可能になる医療処置や看護処置】

褥瘡(じょくそう)処置・創傷処置・膀胱洗浄・自己導尿・浣腸や摘便処置・人工肛門、人工膀胱などのストーマケア・自己注射(インスリン等)・カテーテル管理(膀胱・腎瘻(じんろう))・経管栄養(経鼻・胃瘻)・気管切開・人工呼吸器装着・吸引・吸入・酸素療法・IVH(中心静脈栄養)や点滴静脈注射・その他

 

こういったケアは介護保険に基づく提供が基本ですが、医療保険が適用されるケースもあります。介護保険の利用がない場合や、急性憎悪、神経難病の特定疾患、進行期のがんなどは医療保険で訪問看護ステーションを利用できます。

緊急時の準備として、医師同士の連携も重要に

在宅医療を選択した患者の中にも、重篤な急変を起こすリスクが高い人もいます。退院前カンファレンスでそのことを説明すると、患者や家族の多くは当然のことながら不安を示します。急変した場合にどうなるのか、どう対応すればいいのかが分からないからです。

 

そこで大切なのが、起こりうる出来事に関する丁寧な説明と緊急時の対応をあらかじめ決めておくことです。急変が予測される患者については、将来の予測を伝えるとともに、そのときにはどうすればいいのか、流れを決めて準備しておけば、家族も安心して自宅に連れて帰れます。

 

特に、私が専門とする神経内科の分野には、急変のリスクが高い難病が少なくありません。転倒による骨折や誤嚥による肺炎、突発的な呼吸困難、膀胱・直腸障害など、すぐに医師が診療しなければ重症化し、場合によっては命の危険につながるトラブルがしばしば起きるのです。

 

重篤な疾患の場合、頼りになるのはやはり、その疾患を専門とする医師です。したがって疾患の種類や程度、年齢などにもよりますが、私が担当する患者については在宅医療で症状が安定していても、いざという時の受け入れ先をなるべく用意しておくようにしています。近隣の病院や他科の開業医など、患者の問題に対応できる施設を事前に相談してあらかじめ選んでおけば、いざという時にも慌てずに済みます。

 

緊急時の準備という意味では、医師同士の連携も重要です。前章で解説した診診連携は緊急時の連携にも役立ちます。緊急時にはかかりつけ医が駆けつけるのが基本ですが、「学会で遠方にいる」など、どうしても駆けつけられない場合もあります。そんなとき、緊密な診診連携があれば、信頼している地域の医師に連絡を取って、代わりに診療してもらえます。

 

開業医にとって、まったく知らない医師に自分の患者を任せるのは不安なものです。治療方針が違うと患者や家族が混乱するかもしれませんし、主張の強い人柄なら、患者や家族と衝突することもあり得ます。

 

診診連携をとおして、治療方針や人となりが分かっていれば、その点、安心して患者を任せられるので、地域で開業する他の医師と連携することは、在宅医療における緊急時の備えとしても有効だといえます。

 

 

嶋田 一郎

嶋田クリニック院長

 

嶋田クリニック 院長

大阪市立大学医学部卒業後、大阪市立大学医学部附属病院第2内科に入局。その後、長野県佐久市立国保浅間総合病院内科にて内科医として地域医療に従事。さらに(旧)国立泉北病院・神経内科にて約10年間勤務を経て、1996年に嶋田クリニックを開院。
勤務医時代から通院できなくなった患者を訪問診療し、開院後はさらに医療と地域との連携を考えた医療を実践し続けている。
大阪市立大学医学部非常勤講師、大阪府保険医協会副議長・地域医療対策部部長、泉北医師協議会会長、「三つ葉の会」(堺市南区周辺の多職種連携推進の会)会長、大阪府介護支援専門員(ケアマネージャー)協会堺支部南区地区顧問、堺市認知症サポート医。高齢者の在宅医療、またパーキンソン病をはじめとする神経難病と認知症に対する専門診療・保健活動も行い、通院が困難な患者の訪問診療に注力している。
日本内科学会・総合内科専門医。日本神経学会・神経内科専門医。

著者紹介

連載40歳からの勝ち組ドクター戦略…高齢化社会を支える「町医者」という選択肢

医師は40歳までに「病院」を辞めなさい 超高齢社会に必要な町医者のススメ

医師は40歳までに「病院」を辞めなさい 超高齢社会に必要な町医者のススメ

嶋田 一郎

幻冬舎メディアコンサルティング

本書では、これからの医師に必要な緩和ケアや終末期医療の知識や技術、QOL向上を目的とした医療処置がどのようなものか、事例を取り上げて解説しています。また、これから開業を目指す医師に向けて、外来診療と訪問診療をミッ…

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