老後に向けて資産を貯めても、「認知症」と判断されると財産の管理や処分をすることが難しくなってしまいます。どのような対策をとっておけばいいのでしょうか? 本記事では、税理士の山田知広氏が「資産を守るための認知症対策」について解説します。

認知症と判断されると、資産は「凍結状態」に!?

人生100年時代、長い老後を安心して迎えるために「認知症」になった場合にどうしたらいいかを考えておきたいと思います。認知症は事前にその対策が必要です。

 

認知症になると、財産の管理や処分が自分では難しくなります。

 

たとえば、預金を引き出すのも、投資信託を解約するのも、収益物件の管理をするにも様々な場面で本人の署名・捺印が必要になりますが、認知症と判断されると、その契約=「ハンコ」を押すことが難しくなります。

 

特に金融機関はシビアで、「成年後見制度」を使って後見人が手続きしないと、何もできない凍結状態になってしまいます。

 

普通預金からの引き出しについては、まだ柔軟な対応をしている金融機関が多いですが、株式の売買や投資信託のリスク商品に関しては、一切手続きできなくなるケースが多いです。また、後見人が家庭裁判所で選任されると、本人のためだけの支出はできますが、それ以外の「資産運用」はできなくなってしまいます。

 

そこでお勧めしているのは、「民事信託」です。それはプロの信託(信託会社や信託銀行など)に任せるのではなく、家族が代わりに財産を管理する方法なので「家族信託」とも呼ばれます。現在、最も有効な認知症対策とも言われています。

 

信託には、3人の登場人物が出てきます。

 

1人目は「委託者」です。財産の持ち主であり、財産の管理や処分を任せる人です。

 

2人目は「受託者」です。これは委託者が信じて託す相手であり、実際に財産の管理処
分を担う人です。

 

3人目は「受益者」です。これは受託者に管理を託した財産(信託財産)から経済的な利益を受ける人です。

元気なうちに「民事信託」の活用を検討しましょう

分かりやすいように、こんなケースで考えてみましょう。収益不動産オーナーのAさんが、息子のBさんに信託する場合です。

 

委託者であるAさんは、息子のBさんに不動産を託します。受託者であるBさんは、Aさんの代わりに不動産を管理したり運用したり処分したりすることができます。信託により不動産の登記も息子のBさんに変更されます。そして、受益者をAさんにするので不動産から回収される利益はAさんが受け取ることができます。

 

普通、収益物件の建物の名義を息子に変えた時点で、贈与したとみなされ、もらった息子に贈与税がかかります。収入も建物を持つ息子へ移転します。しかし、民事信託では、受託者として息子の名義にはなっているものの、実際の収益は受益者である元の所有者の父のものなので、実質的に信託する以前となんら変わりません。

 

税務署は実質的に所有者が変更されていないと判断するため、息子への贈与にはならず贈与税はかかりません。

 

つまり、実質的な賃貸経営は息子にやらせて、利益は今まで通り自分が受け取ることができるのです。この関係は、ここでいうAさんが認知症になってしまったとしても、受益者には違いがなく、そのままAさんに収入が入ってきます。

 

ほかの収益源の場合も、同じように信託を使って管理を子に任せ、収入を確保すること
ができるケースがほとんどですので、元気なうちに検討したいものです。

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