※本連載は、企業研修講演(財務省、商工会議所、銀行・信用金庫等の金融機関等)を年間100回以上行う、ファイナンシャルプランナーでTSPコンサルティング株式会社代表の佐藤毅史氏が、中小企業オーナーが自身の可処分所得を増やすためのノウハウを具体的に解説します。今回は、中小企業の税金対策として、国産大衆車より「高級外車」を購入すべき理由を見ていきます。

日本人の多くが憧れる「マイホーム」は「負債」

「資産と負債の違いは…?」

 

この問いに対して、明確に答えることのできる経営者は意外と少ないかもしれません。2000年11月に出版され、大ベストセラーとなった『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房/ロバート・キヨサキ著)には、その定義が明示され、多くの読者の価値観を変えたといわれています。

 

「資産とは貴方のポケットにお金を入れてくれるもの、負債とは貴方のポケットからお金を奪っていくもの」。

 

このシンプルな定義に従えば、いまだに日本人の多くが憧れる(あるいは購入を当然と思っている)マイホームは資産ではなく、負債であることが分かります。ローンを利用していれば当然ですが、融資手数料の他に毎月の金利負担がかかります。例えローンを伴わないマイホーム購入であっても所有している間は、賃貸住宅では支払う必要のない固定資産税等の各種税金、修繕費等が定期的な出費として計上されるからです。

 

では、最近でこそ、シェアリングエコノミーの影響で所有者が減りつつあるといわれていますが、マイホーム同様に、かつては豊かさの象徴でもあったクルマはどうなのでしょうか?

富裕層は見栄で「高級外車」に乗っているのではない

某IT企業の社長が若手女優と交際している報道がなされた際、乗車していたクルマ(社用車)は、誰もがそのロゴを見ればそれと知っている超高級外車でした。

 

「お金持ちが好んで持つもの」、「成功者の証」、「見栄っ張り」…。

 

都心部などで、街中を颯爽と走る高級外車を見て、多くの人が抱くイメージではないでしょうか。しかし、勤勉に働き貯蓄を旨とする国民性の日本人にあって、そこまで見栄っ張りの人が溢れているとするのは無理があります。では、なぜ経営者をはじめとする富裕層は高級外車(4ドアセダン)に乗り続けるのでしょうか? もうご存知の方も多いかもしれませんが、あらためて見てみましょう。

 

そのカギは、『償却+再販価値』にあります。

 

どういうことか、3つのポイントに分けて簡単に説明します。まず、①「法人(あるいは個人事業主)」として購入することで、税金や各種維持費を経費にすることが可能になります。次に、②車両の経年による劣化という名目で減価償却費を経費計上することができます。そして、③減価償却が終わった(新車の普通車で通常6年)帳簿上の価値が1円の車両を、中古買取市場で購入時の7~8割の費用でリセールできる可能性があります(3年後のリセールバリューは、国産普通車で通常は新車価格の5~6割程度といわれています)。

 

③で売却して得た利益で、またクルマを購入し、それを経費として計上する…。これを繰り返し、高級外車を乗り継いでいくわけです(早く大きく減価償却を計上したい場合は、中古車を購入する方がメリットが大きいのですが、それはまた別の回で説明します)。

 

なぜ減価償却により価値が簿価1円まで償却したクルマが、これほどまでに高値で売れる(リセールバリューが落ちない)のでしょう。単純に、「型」が落ちたとしても、高い値段でも購入したい人々がいるからです。例えば、年収1000万クラスの“勝ち組”会社員(例:景気の良い業界で働く30~40代夫婦、新興住宅街にあるタワマンに生息する 等)がステータスシンボルとして、購入するのかもしれません。

 

減価償却を経費とするのは設備投資的には間違いのない手段ですが、クルマの場合、最終的にどれだけお金を生み出すのかが重要です。

 

それをかなえるのが、ロゴマークでそれと分かる高級外車という訳です(外車でも車種やボディカラーによって人気、不人気がありますので最低限のリサーチは必要です)。再販価値の高さは中古市場における希少性(需要と供給)に比例するといえます。

国産大衆車も車両本体分は経費に計上できるが…

高級外車は節税になります。では、街中でしょっちゅう見かけ、こちらもロゴマークを見ればそれと分かる超有名な国産の低燃費電気自動車はどうでしょう。ガソリン代が高騰していく時代にあって、燃費を抑えられるというのは大変助かりますが、残念ながら希少性はゼロです。

 

つまり、中古市場での価値はさほど高くはならない。確かに脱化石燃料といわれる現代においては電気自動車が志向されています。しかし、バッテリーの劣化が目視できない等の理由で、中古市場における価格下落は実際尋常ならざるものがあります。

 

もし国産車で前述の高級外車と同じ効果を享受したい場合、再販価値の下がりづらい人気車両(SUVブームの火付け役となったランドクルーザーや、作業車のシェア90%超のハイエース、スーパーカーの代名詞GT-R、レクサス等)であればそれも可能とされています。しかし、SUVやスーパーカーが会社の必要経費として認められるかどうかはまた別の話です。

 

国産大衆車も高級外車と同じで減価償却として車両本体分は経費に計上できます。しかし、再販価値が高級外車をほど高くつかないのが現実です。減価償却しきった帳簿上の簿価1円の車両(バランスシート上では資産に計上されている)が、いくらのお金を生み出すのか?

 

繰り返しになりますが、最終的に高値で売れることが重要なのです。皆さんがお持ちのクルマは資産でしょうか、それとも負債でしょうか。

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