役職・年齢関係なし!? 常識を覆す「クラスター型組織」とは?

グループ全体で200人規模ながら、求人に年間600人近い応募が寄せられる建設会社の代表・瀬古恭裕氏の著書『社員が好きなように働く会社』より一部を抜粋し、新しい会社の在り方である「クラスター型組織」について解説します。

「クラスター型組織」とは

「価値観型人事制度」の考え方を実践するには当然、組織のあり方が大きく関係します(関連記事『社員の働き方をオーダーメイド…「価値観型人事制度」とは?』参照)。

 

これまで多くの会社が当たり前のように採用してきた「ピラミッド型組織」では、なかなかうまくいきません。なぜなら、ピラミッド型の組織はもともと官僚制からできたといわれ、上下の関係が固定的です。トップからの指示に従って下位メンバーが動くことを前提としており、下位メンバーが自分の好みで自由に動くなどということは想定外です。軍隊は最も典型的なピラミッド型組織といえるでしょう。

 

しかし、こういう組織は非常時には強いかもしれませんが、環境が大きく変化していたり、複数の課題に対して同時並行的に対応しなければならないようなときにはうまく機能しません。むしろ、情報がうまく組織内で伝わらず、意思決定が遅くなったり、柔軟に進路を変えたりすることができません。

 

20世紀の終わり頃から、日本のみならず、世界中で多くの有名大企業が業績悪化に見舞われた要因のひとつは、社会や経済の環境変化にピラミッド型組織が対応できなかったからだといわれるのも当然でしょう。

 

これに対し、私たちの会社が採用しているのが、「クラスター型組織」です。「クラスター」とは英語で、房(ふさ)、群れ、集団という意味です。「クラスター型組織」とは、一定の役割や機能ごとに小集団を形成し、それぞれが必要に応じて連携しながら、課題を処理していく組織のあり方です。

 

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、もともとは京セラの創業者である稲盛和夫氏が提唱された「アメーバ経営」を参考にしています。

 

[図表]「ピラミッド型組織」と「クラスター型組織」のイメージ
[図表]「ピラミッド型組織」と「クラスター型組織」のイメージ

 

クラスターの数や種類、メンバーの顔触れもその時、その時の状況により変化します。クラスター同士のつながりやその太さも一定というわけではありません。こうした柔軟性を大きな特徴とする「クラスター型組織」が定着しているからこそ、私たちの会社では「価値観型人事制度」が可能になっているのです。

 

最初からこの「クラスター型組織」で働いてくれている社員にとってはどうということもないようですが、中には戸惑っている社員もいます。特に、大手企業から転職してくれた幹部社員の多くは、長年ピラミッド型組織にどっぷり漬かってきたためか、「訳が分からない」とよく言っています。

 

たとえば、ピラミッド型組織では上下関係と指示報告系統が明確ですが、クラスター型組織では必ずしもはっきりしていません。必要に応じて、必要な程度で、プロジェクトにおける上下関係や指示報告系統が変わったりします。しかし、そのほうが業務処理や課題解決がスムーズにいくことが分かってくると、次第に慣れるようです。

 

私たちの会社では、クラスターは仕事組織だけでなく、青年部や組合、社内でのコミュニケーションの場でも同じように使われています。

ベースにあるのは自由なコミュニケーション

いくら「クラスター型組織」を目指すといっても、それにふさわしい組織風土が定着していなければ絵に描いた餅になってしまいます。特に重要なのが、自由なコミュニケーションです。

 

役職が上の人間や在職年数の長い先輩に気兼ねして発言しにくいような組織では、みんなの心の中にピラミッドができてしまいます。それでは本当の「クラスター型組織」にはなりません。

 

そこで私たちの会社では、自由な発言をとても大切にしています。会議はもちろん、日常の業務でも、各クラスターにおいては役職に関係なく、気付いたことや改善提案をどんどんするように奨励しています。

 

もちろん、何でも好き放題に言いっぱなしはだめです。自分の発言には責任を持つのは当然です。また、取引先などにもお互い対等な立場で、自由に意見を言い合える関係が大事だと思い、同じように伝え、また実践しています。

 

お客様に対しては、さすがに言いたいことを自由に言うというわけにはいきませんが、それでもより良い仕事をするため、適正な取引きをするために、必要に応じて言うべきことは言わせてもらっています。

 

たとえば、納期についてです。建設業界では発注者や元請けの立場が非常に強く、「この納期で」と言われたらそれが絶対とされます。しかし、適正な品質を確保するために譲れない工期があり、それについてはあらかじめお話しさせてもらっています。

 

価格についても同じです。私たちの会社の工事は品質も含めて判断してもらえれば、決して同業他社より高いとは思っていません。しかし、時には「高すぎる。もっと安くならないか」と言われることもあります。その場合、無理に受注することはせず、敢えて「もっと安いところがあるようでしたら、そちらでどうぞ」と譲ったりします。

 

太陽光発電関係のプロジェクトなどでは「結局、高くついた」と言って後から、私たちの会社に戻ってこられるケースもあります。なぜなら見かけ上、他社のほうが安価なこともありますが、私たちの会社は品質とそれに見合うコストにしています。また、太陽光発電においても上流から下流までを一気通貫で担っており、トータルでみたとき、結局は私たちの会社のほうが安かったのでしょう。

 

いずれにせよ、社内外で自由なコミュニケーションができているからこそ「クラスター型組織」が成り立ち、「価値観型人事制度」が機能し、そして質の高い仕事ができ、経営が安定するのです。私は社内でも社外でも、風通しをもっと良くしていきたいと思っています。

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株式会社鈴鹿 代表取締役

1970年生まれ。高校時代に水泳で活躍し、スポーツ特待生としてトヨタ車体株式会社に入社。実業団選手として活躍するも、現役引退後に将来の不安を感じ退社。その後、いくつかの会社を経て、職人の人間味あふれる人柄や電気技術の深さに魅了され電気職人の世界に入る。職人として親方の元で5年間修行し、1995年に瀬古電設(現・株式会社鈴鹿)を創業。
現在は事業の主幹である電気工事以外にもさまざまな事業を行っており、グループ会社8社を束ねる。どんな大不況や自然災害が訪れようとも最後まで生き残れることを目指した会社づくりを行っている。いつまでも挑戦を忘れない実直な姿勢と、その人間味あふれる人柄から、社員・取引先から愛されている。
趣味は釣り、旅行、トレーニング。座右の銘は「人間万事塞翁が馬」

著者紹介

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瀬古 恭裕

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「働き方改革」「ワークライフバランス」を20年前から実践 創業以来、増員・増収・増益を続ける組織づくりのノウハウを解説! 「終身雇用」「年功序列」など、いわゆる「日本型経営システム」は、かつての日本の大量生産大…

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