小児科医のママが語る離乳食…肉や魚は「赤いもの」を選ぶ理由

今回は、鉄が含まれている食材や、離乳食期にどのように鉄をあげればいいのか、紹介していきます。※子育ての悩みは色々ありますが、「食事」に関して頭を抱えてしまうことは珍しくありません。子供の成長には何が重要で、どのように食べさせたらいいのか…考えれば考えるほど行き詰まりを感じてしまう方も多いでしょう。本連載では都内のクリニックで年間1万人もの子どもを診察する工藤紀子小児科医が、赤ちゃんの発達に欠かせない栄養素と、その栄養素の与え方を説明していきます。

鉄を多く含むおすすめの食材は?

前回(関連記事『小児科医ママの離乳食…「鉄」を生後6ヵ月から摂らせる理由』)、生後6ヵ月以降は鉄を摂取するようお伝えしました。ではどのような食材を食べるようにすればよいのでしょうか。

 

6ヵ月から1歳の子の場合、1日に必要な鉄の量は5mgとされています。

 

鉄を含む食材には、動物性の食べ物に多いヘム鉄(吸収率が高い15−25%)のものと、植物性の食べ物に多い非ヘム鉄(吸収率が低い2−5%)のものがあります。非ヘム鉄の鉄はビタミンCで吸収率が上がるため、ビタミンCが含まれるを一緒に摂取するとよいでしょう。「鉄の恋人はビタミンC」です。

 

吸収率が高いヘム鉄を多く含む食材に、レバーや肉、魚がありますが、肉や魚を選ぶときは、より「赤いもの」を選ぶようにしましょう。なぜ赤いものがよいかというと、これまで筋肉のなかに存在している鉄はミオグロビンであるという話をしましたが、このミオグロビンが筋肉を赤くしている正体なのです。ですから赤いほど鉄が含まれているのです。赤い魚には「カツオ」「マグロ」「イワシ」などがあります。

 

吸収率が低めの非ヘム鉄を多く含む食材には、ホウレンソウが有名ですが、実はパセリ枝豆小松菜のほうが多く含まれています。さらにあまり知られていないかもしれませんが、きな粉凍り豆腐油揚げ納豆味噌など、豆を原料とした食材にも鉄が含まれています。他には、ゴマや、海苔卵黄にも多く含まれます。海苔にはビタミンCも多く含まれるので、一石二鳥ですね。

 

ただ離乳食時期の子どもはたくさんの量を食べられないため、少量で吸収率の高いものを摂る方法をおすすめします。

 

たとえば、吸収率の高いヘム鉄の場合、ガイドラインに則り肉魚類の一回量を15gとして考えてみると、食材ごとの含有量は以下の表の通りです。ちなみによく最初にあげましょうと指導されている鳥ササミは15gに0.03mg程度の含有量です。

 

食材別ヘム鉄の含有量
食材別ヘム鉄の含有量

 

そして吸収率の低い非ヘム鉄の場合、同様にガイドラインに則り考えてみると、食材ごとの含有量は下記表の通りになります。

 

食材別非ヘム鉄の含有量
食材別非ヘム鉄の含有量

 

少量で吸収率の高いものを食べたほうが、鉄がより体に取り込まれます。もし小食であまり量を食べない子であれば尚更です。よく食べる子であれば、ヘム鉄の食材を中心に、非ヘム鉄の食材も併用していくとよいでしょう。

手軽に「鉄」が摂取できる市販の離乳食だが…

手作りで離乳食を作る場合

レバー、赤身の肉、カツオやマグロなどの魚を、手作りの離乳食で食べさせるには、衛生面に細心の気配りをしてください。生の肉や魚にはサルモネラ菌やカンピロバクター、腸管大腸菌など、様々な菌が付着しています。そしてそれは鮮度とは関係なく存在するのです。つまり買ったばかりだから安心というわけにはいきません。手を洗い、直接手で肉を触ったときはその手でどこも触らない、しっかり火を通す…大人の食事のときでも気をつけなければならないことですが、乳児にあげるものなので、さらに気をつけるようにしてください。

 

また手作りの場合、鉄製の小さいフライパンや小鍋を使って加熱することによって、そこから鉄が溶け出して、鉄が増える場合もあります。

 

ただ肉類はアクが出たり、ただ煮ただけではなかなか子どもは食べてくれなかったり、そのままではボソボソと食べにくかったりと、意外と食べてもらうのに苦労する食材です。片栗粉やおろした高野豆腐でとろみを出すなど、食べやすいよう工夫しましょう。

 

市販の離乳食を使う場合

市販のベビーフードは、衛生面に配慮されていますし、栄養士が監修しているため食べやすく工夫されています。レバーや肉類を使用した離乳食メニューを選べばいいでしょう。鉄が添加されているベビーフードやふりかけもあります。

 

しかし厚生労働省が作成する『授乳と離乳のガイドライン』では、2019年3月の改定前、「鉄欠乏になるのは9ヵ月から」と記載されていました。そのため今現在日本のメーカーで手に入る鉄を意識して作られている市販品は、9ヵ月以降のものになっています。

 

前回説明した通り「鉄不足の可能性は生後6ヵ月から」と、WHO(世界保健機関)でも報告されています(改定後の『授乳と離乳の支援ガイド』にも同様の記載がされるようになりました)。そのため今できることは、「9ヵ月以降を対象とした製品でも、子どもが食べられるなら食べさせる」、もしくは「鉄が添加されている海外の離乳食を使用する」ということです。海外の先進諸国では鉄を離乳食開始時から摂取するように指導されている国がほとんどなので、海外の離乳食にはまず鉄が含まれています。衛生面の管理も日本と同様にとても厳しく、また塩分や添加物、農薬の基準などは日本より厳しい国もあります。

 

私は手作りにかける時間や手間暇、衛生面への配慮などを考えると、市販のものを使ったほうがよりよいと考えています。そして今よりもっと鉄が含まれている離乳食が増え、離乳食開始時期から使える市販のものができ、選択の幅が広がるととよいなと願っています。

 

鉄は子どもの将来を決める大事な鍵となる栄養素のひとつです。鉄の摂取を途切れさせず与え続けることがとても大切です。

世界は進んでいる!日本は「鉄の後進国」

鉄は子どもの生活面、学習面、体力面、どれにおいても欠かせない重要な栄養素です。このことはもう20年以上前から研究されていて、欧米諸国をはじめ東南アジア、南米の各国では、国力をあげる意味で、日常からよく食べる小麦や米、トウモロコシなどの食べ物に鉄を添加しています。

 

この添加プログラムのよいところは、費用対効果が高く、副作用もなく、継続性があるということです。多くの人に広く鉄を補充でき、鉄剤の内服などでかかるコストもなく、吐き気や下痢などの副作用もなく、長期にわたり継続できるのです。日本であれば、たとえば米に鉄を添加する。そうすることで、子どもだけでなくすべての国民の鉄欠乏が浅くでも広く解消されれば、国民の「頑張る力」が上がり、国力までも上がるかもしれません。

 

それだけでなく、アメリカでは子どもたちに鉄の重要性を教育していて、鉄が自分のパフォーマンスアップにも欠かせない栄養素であることを、子どもたち自身が知っています。添加プログラムもなく、鉄の積極的な教育が遅れている日本は、残念ながら「鉄後進国」といわざるをえません。

 

小児科専門医・医学博士

順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。日本小児科学会認定小児科専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/こころ新橋保育園嘱託医/東京インターナショナルスクール中目黒キンダーガーデン嘱託医。夫の仕事でアメリカに渡り子育てを経験する。現在2児の母。都内クリニックにて、年間のべ1万人の子どもを診察しながら子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。
最新著書『小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。』(時事通信社)

著者紹介

連載子どもに食べさせたい!離乳食期に必要な栄養素

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