Aさんは、マンションの購入を検討しています。購入に至るまでどのようなプロセスをたどるのでしょうか。そして、入居に至るまで、また、入居に際して、どのような者(業者)とどのような契約をし、どのような法律関係が成立するのでしょうか。
総住宅数は「約6,000万戸」…空き家は約820万戸も
◆持家──「家を持つ」ということ
まずは、今日のわが国の住宅およびマンションの状況についてみてみましょう。住宅の概況について、総務省の2013(平25)年住宅・土地統計調査(2017(平29)年3月の同省ホームページの同調査「確報集計結果」)によると、総住宅数は約6,063万戸(総居住世帯数は約5,210万)であり、そのうち空き家は約820万戸で約13.5%になるとのことです。
居住世帯のある住宅(以下「住宅」という)約5,210万戸を建て方別(第5表)にみると、一戸建が約54.8%、共同住宅が約42.4%だそうです(その他として長屋建など約2.5%)。住宅を所有の関係別(第3表)にみると、持家が約61.7%、借家が約35.5%だそうです(不詳が約3%)。
ところで、同調査(第130表)によると、「所有地・借地に居住する主世帯総数」約3,215万のうち、敷地が所有地は約3,098万であり、敷地が借地は約117万(うち定期借地は約13.7万)であり、前者が96.4%、後者が3.5%だそうです。
さて、私たちの住まいを所有の観点から分けた場合に、①「持家・持地」(住宅とその敷地をともに所有)、②「持家・借地」(住宅は所有、敷地は所有者からの借地)、③「借家」(住宅とその敷地をその所有者から借りる)の3つの形態におおよそ分けることができます。
この調査をもとに算出すると、①がほぼ59.5%、②がほぼ2.2%、③がほぼ35.5%と推定できます。各調査項目ごとの基礎データが異なるために、この割合は正確なものではありませんが、わが国の住宅・敷地の所有・利用態様としては、①「持家・持地」55〜65%、②「持家・借地」2〜5%、③「借家」30〜40%程度と考えてよいと思います。
ちなみに、前記調査のデータ(第8表)によると、居住専用に建築された「専用住宅」の延べ面積(居住室のほか玄関、トイレ、台所を含めた床面積の合計)は、1住宅当たりの平均値は94.4㎡で、ただ、持家では122.3㎡、借家では45.9㎡と大きく異なっています。
なお、政府は、住生活基本法に基づく「住生活基本計画(平成28年3月)」において、都市居住世帯についての誘導居住面積水準として、「2人以上の世帯:20㎡×世帯人数+15㎡」といった水準を示しており、これによると、たとえば、夫婦と中学生・小学生の場合には、延べ面積95㎡となります。
都内で着工された分譲住宅のうち、約7割がマンション
◆マンション所有──「マンションを持つ」ということ
今日、都市部における持家の形態は、マンションが一般的となりつつあります。国土交通省の調べで、2015(平27)年現在、全国で約623万戸のマンションに約1,530万人が住んでいます。
毎年、約80万戸〜100万戸の住宅が建設されますが、そのうち20万戸程度はマンションです。たとえば、東京都の住宅着工調査によると、2016(平28)年の東京都内で着工された分譲住宅のうち、約67%がマンションです。
ここで、わが国のマンションの歴史および現況に関して簡単にみておくことにしましょう。マンションは、戦前の同潤会アパート(1926(大15)年以降供給)等を除いて、昭和30年代から一般に供給が始まり、昭和40年代中頃以降本格的に普及しました。
1976(昭51)年時点のストック総戸数は約56万戸でありましたが、2001(平13)年末時点では約406万戸となり約1,000万人が居住しています(2001年には年間約20万戸が供給されました)。その8割以上は、三大都市圏に立地しています。
いまやマンションが都市における住宅の主流となりつつあります。たとえば、東京都では1998(平10)年に6世帯に1世帯であったマンション居住世帯が、2008(平20)年には4世帯に1世帯(約25%)に、2016(平28)年には約28%まで増加しました。なお、東京都マンション実態調査(平成25年3月)によると、東京都のマンション棟数は約5万3千棟で、住戸数(世帯数)は184万4千戸(世帯)です(1棟当たり平均34.7戸)。
◆マンションの諸形態
マンションをその用途によって大別すると、①住居専用型、②非住居専用型、③複合用途型に分けることができます(次に述べるように、厳密には②はマンションではありません)。
①はすべての専有部分が原則として居住の用に供されるものであり、②はすべての専有部分が店舗、事務所、倉庫など居住以外の用に供されるものであり、③は1棟の建物においてこの両者が存在しているものです。
すべての専有部分が居住以外の用に供される②の建物を除き、①と③の用途の建物はすべてマンションです。ただ、基本的な法律関係は②についても区分所有建物として変わるところはありません。
現実には、区分所有建物ないしマンションにはさらに多様な形態があり、区分所有者自身は使用を予定せず、もっぱら賃貸を目的としている投資型(ワンルーム)のものや、観光地などに立地し常時の居住は目的としないリゾート型のものが存在します。また、敷地に建物が1棟のみの単棟型のものと、同じ敷地に数棟の建物が存在する団地型のものがあります。
ところで、区分所有建物ないしマンションの専有部分について、その区分所有者は、自らは使用しないで第三者に賃貸することができます(この場合、廊下等の共用部分も一体として賃貸されます)。
現実には、建物の経年にともない賃貸化が進んでいる区分所有建物ないしマンションも少なくありません。やや古いデータですが、国土交通省の2001(平成13)年の調査によると、建築後30年を経過したマンションでは、1棟における平均値として、空き住戸11%、賃貸されている住戸は24%だそうです。
鎌野 邦樹
早稲田大学 法科大学院