65歳以降、ゆとりのある生活を送るには、およそ1億円ものお金が必要です。年金を差し引きすると、約3000万円足らない計算になります。その足りない分は、どのように賄えばいいのでしょうか。本連載では、書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)より一部を抜粋し、手間をかけずに「3000万円のプライベート年金」をつくる方法を解説します。

預貯金だけでは「資産形成」につながらない

◆投資で「絶対に損したくない人」に残された非情なプラン

 

今の金利情勢で、元本割れしないように運用しようとしたら、銀行預金か、もしくは個人向け国債で運用するしか方法はありません。

 

2018年11月現在、銀行預金の利率は預入期間の長短、預入額の多寡に関係なく、年0.01%です。本連載第3回で述べたように、この利率では資産形成になりません(関連記事『65歳以降に必要なお金はいくら?「老後資金」のリアル』参照)。

 

また、銀行預金に比べればマシな利率が付く「個人向け国債」も、2018年12月に発行された10年変動金利型で年0.09%です。「銀行預金に比べて9倍の利率」ではありますが、これはあまりにもレベルの低い比較です。この程度のリターンでは、たとえ30年という長期で運用できたとしても、かなりのピッチで元本を積み上げていかなければなりません。

 

ちなみに、年0.09%で運用した場合、30年で3000万円をつくるためには、毎月8万2000円ずつ積み立てる必要があります。年0.01%で月々の積立額は8万3000円ですから、「9倍の利率」といっても、実は月々の負担はそう大きく変わりません。したがって、月々の積立負担を少しでも軽くするためには、より高いリターンが期待できるもので運用しなければなりません。

 

 

ただし、「ハイリスク=ハイリターン」「ローリスク=ローリターン」という資産運用の大原則をしっかりと理解してください。つまり、預金の利率が年0.01%、個人向け国債(10年変動金利型)が年0.09%であり、これを超えるリターンを得ようとするならば、相応の「リスク」を取る必要があります。

 

資産運用のリスクにはいくつもの種類があります。数ある投資商品から流動性リスク(すぐ売れるか・すぐ買えるか)、信用リスク(倒産しないか・上場廃止しないか)など、さまざまなリスクの程度を総合的に判断したうえで、自分が背負えるリスクを選ぶことになるわけですが、恐らく多くの人が気になるのは、「損することもあるの?」ということでしょう。

 

預貯金の類や個人向け国債は、満期日、償還日まで持ち続ければ、基本的に元本を割り込むようなことにはなりません。100万円を預けたならば、たとえば5年後の満期時には、100万円の元本が預金者の手元に戻ってきます。その代わり、現在のような低金利下においては、預金の場合で年0.01%を大きく上回るリターンは、「絶対に」得られません。

 

元本保証で、たとえば年5%といった高金利を、現在のような低金利下で謳(うた)っている金融商品があるとしたら、それは100パーセント詐欺商品です。ご注意ください。

 

年3%、あるいは年5%といったリターンを得るためには、何らかのリスクを取らなければなりません。端的に申し上げますと、「価格変動リスク」を取ることによって、より高いリターンを目指すのです。

 

価格変動リスクのある運用対象は、100万円が150万円、あるいは200万円になる可能性がある一方、ゼロにはならないまでも、50万円くらいまで目減りしてしまうリスクがあります。ただ、この値下がりするリスクに関しては、全くゼロにすることはできませんが、ある程度ならコントロールできます。

 

では、価格変動リスクのある運用対象には何があるのでしょうか。

 

もっともイメージしやすいものだと株式ですが、他に投資信託、FX(外国為替証拠金取引)、貴金属や農作物の先物を売買するコモディティ、不動産投資などが価格変動リスクのある運用対象に含まれます。

 

種類が多くて選べませんか。

 

大丈夫です。この中から選ぶべき運用対象はたったのひとつしかありません。それは「投資信託」です。投資信託とは、大勢の投資家からお金を集めてファンドをつくり、さまざまな銘柄に分散投資する金融商品です。

 

投資対象を「分散」させるため、高いリスクを取らずともリターンが期待できるのが大きな特徴です。また、100円や1000円といった少ない資金から始められる利便性の高さもあります。手間をかけずにストレスなく3000万円の「プライベート年金」をつくるには、投資信託が一番です。

個別株より「投資信託」がおすすめな理由

 Q  投資信託より個別株のほうが儲かるのでは?

 

 A  個別株は、知識と経験を積んだファンドマネジャーですら利益を出すのが難しい世界です。

 

前項で、「手間をかけずにストレスなく3000万円の『プライベート年金』をつくるには、投資信託が一番です」と述べました。

 

一方で、書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』でお勧めする投資信託は、投資対象を分散させる分、リスクは低くなりますが、いわゆる「10倍株」「100倍株」と言われるような個別株が持つ、短期間で大きく値上がりする可能性は少ないでしょう。

 

とは言え、株の個別銘柄を選んで儲けるのは非常に難しい、ということをご理解ください。

 

プロのファンドマネジャーは、それをよく分かっています。もし、最初から儲かる銘柄が分かっていれば、その銘柄だけに集中投資すれば良いでしょう。その方が、組入比率のバランスなどを考慮して複数銘柄に投資する手間がかかりませんし、時間をかけてたくさんの会社のリサーチをする必要もなくなります。

 

でも、そうしないのは、特定の銘柄に集中投資した場合、外れた時のリスクがあまりにも大きいことに加え、いくら良い銘柄を買ったとしても、株価が必ず上がるとは限らないからです。

 

株価は、いくらその企業が優れた財務体質、収益性を持っていたとしても、大勢の投資家がその価値に気づき、その株式を買わない限りは値上がりしません。事実、とても良い会社なのに、株価が一向に値上がりしないものもあります。したがって、個別銘柄を選んで投資しても、必ず儲かるとは限らないのです。

 

 

株式の場合、まず銘柄を選ぶのにかなりの手間がかかります。これまでの業績推移、今後の業績見通し、経営者の資質、現在の株価が適正価格なのかどうか、さらにはチャートをチェックして買い場を探り、買った後もずっと投資先企業の業績などをチェックし、常に持ち続けるべきか、利益確定、あるいは損切りするべきかという判断を迫られます。

 

もちろん、最近はデイトレーダーといって株式投資を専業にしている個人投資家もいますが、そういう人はごく一部です。大半の人は会社勤めで給与を得ています。資産形成は、自分の老後資金をつくる目的でしています。きっと、みなさんもそうでしょう。多くの人にとっては、働いて稼ぐこと、働いて自己実現することが「主」であり、資産運用は「従」の関係であることを忘れてはなりません。

 

だとしたら、過度に負担が大きい運用は、現実的ではないでしょう。それは株式投資だけでなく、FXや仮想通貨取引、あるいはコモディティも同じです。FX、仮想通貨取引、コモディティに至っては、株式投資よりも値動き(「ボラティリティ」と言います)が激しく、下手をすれば、投下した資金の大半を失うような、極めて極端なリスク・リターン特性を持っています。一部の方からはご批判もあるかもしれませんが、普通に勤めて資産形成をしようと考えている人は、この手の運用対象には手を出さないようにしましょう。

 

 

太田 創

株式会社GCIアセット・マネジメント
エクゼクティブ・マネジャー(投資信託ビジネス担当)

 

本連載は、2019年3月18日刊行の書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる米国つみたて投資

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