「将来のお金が不安だ」「寿命は伸びているが、自分は何歳まで稼ぎ続けられるのか?」といった、老後の心配は尽きません。本連載では、書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)より一部を抜粋し、そんな老後の不安を解消するための手段としての「米国つみたて投資」について解説します。本記事では、日本人の資産形成について考察します。

「子供の教育」「親の介護」で、50代以降の貯蓄は困難

◆50代以降もお金は貯まりづらい

 

私たちの貯蓄額や退職金の真実を知ると、60歳で貯蓄額が600万円程度しかない人は、かなり焦るでしょう(関連記事『60代の平均貯蓄は?貯金だけで「安泰な老後生活」は送れるか』参照)。いや、50代で貯蓄額400万円という人にとっても、決して他人事ではありません。なぜなら10年後には定年を迎えるのですから。必死になってお金を貯めようとするのは良いのですが、一方で50歳を超えると、何かと物入りになります。

 

たとえば30代前半で結婚し、すぐに子どもができたような人は、50歳になるのと同時に、子どもが大学に通うようになるでしょう。教育費はかなり高額です(幼稚園から高校まですべて私立に通わせたとすると総額1770万円ぐらいになるというデータがあります)。子どもが4年制大学に通ったとして、それを卒業する頃のあなたの年齢は50代半ば。この年齢になると、役職定年などで給料はかなりダウンしているかもしれません。

 

それと前後して、親の介護という問題にも直面します(私も自分には関係ないことと思っていましたが、最近、実父と義理の父が要介護となりました)。もちろん、親が自分のための老後資金を潤沢に持っていれば、少なくとも経済的な危機は回避できますが、持っていない場合は、子どもが親の面倒を見なければなりません(老人ホーム・介護施設には月額十万円程度から私設のサービスであれば数十万円かかります)。

 

 

最近、親の面倒を見るために会社を辞め、地方に戻ったら職がなくて生活保護を受けなければならなくなった、という話も頻繁に聞くようになりました。

 

今から20年くらい前は、「子どもが独立する50代に入ってからが、最後の貯め時」などと言われたものですが、これらの問題に直面すると、50代になってからもなかなか貯蓄が増えないという状況に陥る恐れがあるのです。

 

ちなみに、金融広報中央委員会による「家計の金融動向に関する世論調査」によると、50代の無貯蓄世帯は31.8%にも上るという数字が出ています。

 

◆増える社会保険料

 

50代以上で貯蓄がほとんどないというのは、かなり絶望的な状況ですが、たとえば、まだ30代だからといって油断をしてはいけません。確かに、50代に比べて時間的な余裕はありますが、これから30代を襲う前述したさまざまなライフイベントを考えると、しっかりしたマネープランがないと、思い描いていなかった老後を送るハメになります。

 

2019年時点で30歳の人が40歳になるのが2029年。その頃、日本はどんな社会になっているのでしょうか。

 

国の将来を考えるうえで鍵を握るのが「人口」です。国立社会保障人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」によると、日本の人口はこれから減少の一途をたどります。

 

日本の人口がピークをつけたのが、2008年の1億2808万人でした。今後、2030年には1億1662万人まで減少する見通しです。また、「総人口に占める65歳以上の人口比率」を見ると、2010年時点では23.1%でしたが、今後、出生率の低下による若年人口の減少と、長寿化による高齢者人口の増加により、次のように推移していきます。

 

<総人口に占める65歳以上の人口比率>

2015年・・・・・・26.7%
2020年・・・・・・29.1%
2030年・・・・・・31.6%
2040年・・・・・・36.1%
2050年・・・・・・38.8%
2060年・・・・・・39.9%

 

65歳以上の人口比率が上昇するということは、それだけ現役世代の社会保障の負担額が重くなることを意味します。

 

[図表1] 「家計の金融動向に関する世論調査」2017年11月、金融広報中央委員会より
[図表1]「家計の金融動向に関する世論調査」2017年11月、金融広報中央委員会より

 

挙げた数字は0歳児も含めた総人口に占める65歳以上の比率ですが、労働に従事できる15歳以上65歳未満の人口に占める65歳以上人口の比率を見ると、状況はさらに深刻であることが分かります(上記図表1)。この数値は、65歳から年金を受給するとして、それを15歳以上65歳未満の現役世代が支えるという前提なので、何人の現役世代で、65歳以上の高齢者1人を支えるかという基準になります。

 

労働に従事できる15歳から64歳の人口に対して、年金を受給する65歳以上の人口が、2030年には54.4%になるということは、現役世代1.83人で1人の高齢者を支えることを意味します。

 

つまり、それだけ年金財政は厳しくなり、現役世代の負担が重くなっていくのです。

経済力の低下に伴い、下がり続ける「生涯賃金」

◆増えない給料

 

社会保障負担が重くなる一方、収入が増えるかというと、それはなかなか難しそうです。

 

人口が減少すれば、社会保障負担が重くなることもあいまり、経済の地力が弱くなると考えられます。経済力が低下すれば、企業収益が低下し、働く人々の給料も減ります。このままでは日本の総人口は、長期的に減少傾向をたどるのが必定ですから、長く勤めたからといって必ずしも給料が増えるわけではない、ということになります。

 

たとえば独立行政法人労働政策研究・研修機構が作成・公表している「ユースフル労働統計」の生涯賃金の推移をみると、従業員規模1000人以上の会社で、大学卒業の人の生涯賃金は、1990年が3億3880万円でしたが、2015年は3億1990万円になっています。

 

この数字は企業規模によって大きく異なり、たとえば従業員数が10~99人という小さい会社になると、同じ大学卒業の人でも、1990年が2億4630万円で、2015年が2億2100万円というように、大幅に水準が下がります。

 

水準はともかくとして、やはり気になるのが、年を追うごとに生涯賃金が下がっていることでしょう。従業員規模1000人以上の会社でも、この25年間で5.6%のダウンです。この傾向が今後も続くかどうかは定かではありませんが、やはり全体的に日本経済の力が低下していることや、賃金が年功序列でなくなりつつあることなどをトータルで考えると、大半の人の生涯賃金は低下せざるを得ないのではないかと考えます。そんな状況の中、月々の収入の範囲内では負担しきれない、高額な支出も発生します。

 

たとえば、子どもの教育資金。大学の初年度ともなれば、高額な入学金に加えて、これまた高額な授業料も掛かってきますから、そのお金をポーンと月々の収入から賄える人は、ごく一部でしょう(私立大学初年度費用は、平均値で約131万円。文部科学省の平成26年度版の調べ)。

 

住宅資金も同じです。賃貸なら家賃負担だけで済みますが、持ち家を購入しようとしたら、最近ではフルローン(自己資金なしの全額融資)という人もいますが、基本的にはある程度の頭金を入れ、それ以外を住宅ローンで返済していきます。もし頭金が1000万円だとしたら、それを一括で払える人は、少数派でしょう。

 

持ち家が欲しいという人は皆、毎月の収入の中から少しずつでも、頭金を貯蓄するのですが、これまで述べたように、年金など社会保障負担が重くなる一方で、給料が減ることになれば、その分、可処分所得が減り、貯蓄に回せるお金も少なくなります。昨今のような超低金利が続けば、預金に預けても元本がなかなか増えませんから、なおのこと資産形成は困難になります。

 

[図表2]「文部科学省 子供の学習費調査 平成28年度」「フラット35利用者調査報告 2017年度」より
[図表2]「文部科学省 子供の学習費調査 平成28年度」「フラット35利用者調査報告 2017年度」より

 

このように見ていくと、これからの資産形成が危機的状況に直面しているのは、50代、60代だけではないことが分かります。30代、40代だって、これから一段と進む超高齢社会と人口減少社会の影響を受けて、資産形成なんて夢のまた夢、などという状況にならないとも限りません。

 

 

日本銀行が定期的に作成・公表している「資金循環統計」によると、2018年6月末時点の個人金融資産は、総額で1848兆円あり、そのうち現預金が971兆円もあります。52.5%が現預金になっているのですが、これは今の超低金利下においては、全くと言って良いほど利息を生みません。

 

ただでさえ資産形成が困難な時代であるにもかかわらず、日本人の個人金融資産の過半数は、利息を生まない金融商品に預け入れられているのです。この点を変えていかないと、日本人はこれからますます貧しくなっていく恐れがあると、私は考えます。

 

 

太田 創

株式会社GCIアセット・マネジメント
エクゼクティブ・マネジャー(投資信託ビジネス担当)

 

本連載は、2019年3月18日刊行の書籍『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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