今回は、トラックドライバーの仕事内容について、「定期便・ルート便」と「フリー便」とに分類して解説します。※現代のトラックドライバーは、洗練された物流システムの中で、自立して活動するプロフェッショナルです。自分で考え、自分で判断し、自分の裁量で仕事をする。そして担うのは、日本経済を支える物流の根幹…。トラックドライバーは、自由に自分らしく働きながら世の中に貢献できる、数少ないビジネスの一つなのです。本連載では、知られざるトラックドライバーの最新事情を紹介します。

スケジュールが立てやすい「定期便・コース便」の仕事

トラックドライバーの仕事は、運ぶモノの種類、届け先、届ける時間などが決まっているか、決まっていないかという点で分類することもできるでしょう。

 

例えば、筆者の会社で扱っている自動車部品は、部品メーカーで荷物を引き取る時間が決まっていますし、その荷物を自動車メーカーに届ける時間も決まっています。担当する業務により、朝出発し、夕方に戻ってくるドライバーがいれば、夕方に出発し、夜間に戻ってくるドライバーもいますが、いずれにしても届け先と届ける時間が決まっていますので、日々のスケジュールの見通しが立てやすくなります。その日によって多少ルートが変わることはありますが、基本的には業務がルーティン化しますので、短距離ドライバーと同様に一般サラリーマンのようなライフスタイルに近くなります。

 

このタイプの運送を定期便やコース便などと呼びます。筆者の会社の場合、オーダーは不定期ですが中距離の飼料や長距離の食品原料は定期便で、自動車部品の場合と時間軸は異なりますが、何曜日の何時に、どこに何を届けるかがあらかじめスケジュール化されています。

 

ちなみに、届ける荷物、場所、時間などは未定ですが、依頼主が固定している便もあります。例えば、毎日決まった時間に依頼主の場所へ行き、その日ごとに違う届け先に、違う荷物を運ぶようなケースです。イメージとしては、宅配の仕事などがこのタイプに近いといえるでしょう。前述した定期便と比べると多少労働時間が長くなったりすることがありますが、届け先の範囲はある程度決まっていますので、このタイプもスケジュールの見通しが立てやすいといえます。

オーダーに応じて対応する「フリー便」の仕事

一方、オーダーに応じて対応するフリー便というタイプの業務もあります。これは顧客、行き先はある程度決まっているものの、その都度トラックドライバーを配車します。その名の通り、業務内容がフリー(自由)となっている点が特徴で、得意先の依頼を受け、近くの工場に急ぎの荷物を届けることがあれば、まとまった量の荷物を遠方まで運ぶこともあります。

 

そのため、フリー便を担うドライバーは業務内容や業務時間が流動的になります。筆者の会社の場合、基本的にはドライバーの多くが定期便の仕事を担当しています。しかし稀に特便という、行き先も、運ぶものも、その時々の急なオーダーが入りますが、その場合、配車係がそのときに手が空いている人に声をかけ、手配します。ドライバーとしては、イレギュラーな仕事を引き受けることが収入を上乗せする機会にもなるのです。

運送業者は「フリー便」を受けられる体制を整えるべき

フリー便は、業務全体で見ると少量ですが、なくなることもありません。というのは、業種や業界によっては季節によって受注量や生産量が増えることがあり、定期便だけでは対応できなくなることがあるからです。また、生産現場もトラブルなどにより、急遽、荷物を運ばなければならなくなることもあります。

 

そういったときに活躍するフリー便のドライバーは、その都度行き先が変わりますので、道に詳しいことはもちろん、長距離ドライブに対応する力、大きなトラックに乗るためのスキルなどが求められます。

 

また、どのような状況にせよ、臨時のニーズが発生するときのお客様はたいてい困っています。どうにかして荷物を届けたいからフリー便を依頼するわけです。そのため、お客様側としては、突発的な出来事が起きるかもしれない可能性を考えて、フリー便を依頼できる運送会社を見つけておくことが経営上の大事なポイントになっています。一方、運送業者側としては、お客様の事業を支えるという観点から考えると、フリー便を受けられる態勢を整えておくことが大事と言えます。

客が突発的な仕事を頼む理由は「困っているから」

実は筆者の会社は、よくフリー便を依頼されます。その理由は、お客様と直接、依頼のやりとりをしているためです。運送業界全体としては、大手の会社が依頼主から受注し、業界全体の9割以上を占める中小規模の運送会社が下請けとして荷物を運ぶパターンが多いと言えます。

 

中小規模の運送会社から見ると、依頼主は荷主ではなく大手の運送会社ですので、荷主を知らないケースが多く、会ったことがない、話したことがないというケースもあります。筆者の会社はその点が違っていて、ほぼ全ての依頼が荷主からのものです。距離やルート・タイプを問わず、直接依頼を受けています。そのような特徴があるため、トラブルなどが起きて困っている荷主からも、フリー便の依頼を直接受けるのです。

 

「定期便に乗せられなかった荷物があるから運んでほしい」

 

「他の運送会社で人がいない、コスト的に無理と言われてしまったのだが、どうにか届けられないだろうか」

 

そういう電話が直接かかってきます。また、直接荷主とやりとりしているからこそ、臨時の便のニーズが発生している背景でお客様が困っていることもよく分かります。経営面から見て良いかどうか分かりませんが、筆者の会社はそのような依頼を基本的には断りません。よほどの赤字になるようなケースは別ですが、できる限りのことをやります。「お客様第一」を理念に掲げる以上、困っているお客様を放っておくわけにはいかないと思うからです。また、そのような依頼はたいてい地元の企業ですから、これまでの付き合いの歴史やお互いの関係性などを考えると、なおさら断るわけにはいきません。

 

お客様の中には、筆者の会社に相談する前に他の運送業者に相談し、断られている人もいます。断る運送業者としては、人がいない、採算が合わないなど、対応できない事情もあります。大手企業などはシビアにコスト計算しますから、利益が出ない依頼を断るのも理解できます。

 

ただ、だからといって筆者の会社まで断ってしまえば、業界全体のイメージが悪くなります。少し掘り下げてみれば、お客様が困っているのは、同業者が断ったからだと見ることもできるでしょう。そう考えると、我々としてはやはり引き受けるしかないだろうと思うのです。結果としてほぼ全ての依頼を引き受ける理由として、どうにかなるだろうと楽観的に考えている部分もあるかもしれません。

 

実際、収支が合わないように見える突発的な依頼でも、内容を細かくひもといてみれば、できることがあるものです。最終的には誰かが運べば済む。そう開き直っているところもあります。ドライバーたちも、地域の人の力になるという理念を理解していますから、誰かが必ず手を挙げてくれます。仮に収支が合わない依頼だったとしても、引き受ければお客様が喜びますし、それが信頼になります。そういう対応をしてきたこともあって、筆者の会社は地域の企業に信頼されるようになりました。これといった営業活動をせず、それでも自然と仕事が増えてきたのも、困っているお客様の依頼にきちんと対応してきたからだと思うのです。

 

 

鈴木朝生

丸共通運株式会社 代表取締役

 

稼ぐ! トラックドライバー

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鈴木 朝生

幻冬舎メディアコンサルティング

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