法定耐用年数の残存期間も重要なチェックポイントに
新築から所有している物件の売却を考える場合は、長期譲渡となる5年目、経年における家賃下落や住宅設備の故障が出始める10年を目安に考えます。
新築物件の良さは購入してから10年間程度、手間がかからないことです。入居も付きやすいですし、住宅設備の故障もありません。もし何かあっても保証対象内です。10年も所有すれば、返済は進んでいます。そこで利益が出るどうか検討します。
木造であれば、法定耐用年数は22年です。10年以上残っていれば、次に買う人が融資を受けやすくなります。鉄骨造やRC造になると、耐用年数が延びます。RCの場合は20年以上で融資が受けられるため、その前後のタイミングが売却に適しています。
築年数から売却を判断するポイントは、次の3つです。
●家賃下落のタイミング
●設備の交換、大規模修繕のタイミング
●法定耐用年数の残存期間
これらのポイントに加えて、さらに市況や融資状況を組み合わせて判断するのがよいでしょう。
売却を決断する際は、近視眼的にならず総合的に検討していく必要があります。とくに融資を受けるための法定耐用年数の残存期間は、大きなチェックポイントになります。
単純に築年数だけで見れば、「残存期間が多ければ多いほどよい」という話になりますが、オーナーの融資条件も関わってきます。短期保有で売却した場合には、自分自身の残債がほとんど減っていないという話もあります。
売却益を得られるのであればよいのですが、これがトントンの売却では、仲介手数料などのコストが持ち出しになる可能性もあります。最悪の場合、残債が残ってしまうこともあります。
高く売るためには「入居率」の改善が不可欠
次に、物件の入居率も重要です。よく「入居率が悪いから売りたい!」という人がいますが、入居率が悪いと利回りが下がりますから、売却価格も安くなってしまいます。高く売るためにはまず、入居率を改善することです。そのために、まずしっかりと空室状況を認識しましょう。
明らかに空室だらけなら危険と自覚できますが、慢性的に1~2部屋空いている状態なら、持ち出しがあってもズルズルと所有し続けてしまう・・・というのが不動産オーナーの心情でしょう。本当は赤字かもしれないのに、収支でいえばプラスマイナスのわずかにプラスといった場合です。このケースでは、ローンは支払えていてもキャッシュフローがほとんど出ていません。
たとえば、収支がトントンでキャッシュフローが出ないというケースがありました。入居は10世帯のうち1室だけ空いている状況です。キャッシュフローが出ない理由は、借りている金利が高いからです。満室になれば、その1部屋分がプラスのキャッシュフローになります。加えて金利が下がれば、まったく問題はありません。
このケースでは、借り換えを行うことをアドバイスしました。借り換えによって金利を低くすることができれば、空室分の損失を補塡てんできる場合もあるのです。
しかしこれは正攻法ではありません。問題の本質は、空室が続いていることにあります。
空室を考えるときは、空いている部屋数ではなく、入居率で把握する必要があります。たとえば2部屋空いている状態の場合。10戸建てのアパートであれば、入居率は8割です。ところが同じ2部屋でも、4戸建てアパートの場合には入居率は5割となってしまいます。これが戸建て賃貸や区分マンションであれば、1部屋空いているだけで入居率0=家賃収入0です。
慢性的に満室にならないなら、空室を埋める努力をしなくてはいけません。そこには必ず原因があります。原因を究明し、改善のために動けば、どのような物件でも満室経営は不可能ではありません。
あきらめている人にこそ、自分のこととして考えてもらいたいと思います。そういった人は、おそらく空室対策を管理会社に任せっ放しにして、自分では何も動いていないのではないでしょうか。
不動産オーナーがそのような態度でいれば、管理会社も「あの物件は常に空室を抱えているから致し方ない」と甘んじてしまいます。こうなるともう、手の打ちようがありません。
入居率は高ければ高いほど、キャッシュフローを得られます。また売却を想定している場合には、満室にすることで利回りを上げ、高値売却につなげることができるのです。