ニュージーランド経済状況は、注目する指標により、良くも悪くも見えるところがあり、やや判断しにくい面はありますが、最新のGDPである2018年10-12月期の成長率が前期比で0.6%と回復(前期7-9月期は0.3%)したことから、今回は金融政策は中立姿勢を維持すると思われました。しかし、主に外部要因を背景に将来の引き下げ方向を示唆した点はサプライズでした。
ニュージーランド準備銀行:市場予想通り据え置くも、次の動きは利下げの可能性を示唆
ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)は、2019年3月27日に政策金利のオフィシャルキャッシュレート(OCR)を市場予想通り過去最低の1.75%に据え置くことを決定しました(図表1参照)。
ただし声明の中でNZ中銀は政策金利の次の動きは引き下げとなる可能性の方が大きいと述べたことを受けて、NZドルは下落しました。
どこに注目すべきか:主要貿易相手国、NZドル、政策金利、CPI
ニュージーランド経済状況は、注目する指標により、良くも悪くも見えるところがあり、やや判断しにくい面はありますが、最新のGDP(国内総生産)である18年10-12月期の成長率が前期比で0.6%と回復(前期7-9月期は0.3%)しました(図表2参照)。そのため、今回の金融政策は中立姿勢を維持するとの味方が大半でした。しかし、主に外部要因を背景に将来の引き下げ方向を示唆した点はサプライズでした。
声明文に示されたポイントは以下の通りです。
まず、経済見通しについてはグローバル経済見通しの悪化をNZ中銀は懸念しています。特に、NZの主要貿易相手国であるオーストラリア、欧州、そして中国の名前を具体的に挙げ、見通し悪化への懸念を示しています。特に中国はニュージーランドの輸出の4分の1程度を占める取引相手だけに、中国の景気減速はニュージーランドにも不安の種となっています。
次に、足元のNZドル高傾向も懸念要因で、声明文でもNZドル高に言及しています。背景として金融政策の姿勢の違いを指摘しています。NZドルは、年初の米国の利上げ停止示唆を受け上昇ました。3月月初、隣国オーストラリア(豪)の18年10-12月期GDPが市場予想を下回り、豪中銀のハト派観測が台頭し、NZドルは上昇傾向となりました(図表1参照)。
もっとも、NZ中銀は前回(19年2月)の金融政策決定会合で、20年末の政策金利の水準を従来の2.0%から1.84%へ予想を下方修正しました。またNZ中銀総裁は会見で利下げの可能性も排除しないと述べるなど、ハト派姿勢を示していましたが、他の国の緩和姿勢がNZを上回っていました。
国内景気についても、住宅市場と設備投資が特に軟調で18年の成長を引き下げた要因と指摘しています。
なお、インフレ率については、NZの雇用市場が堅調にもかかわらず、コア消費者物価指数(CPI)は目標(1~3%)の中心2%を下回る水準にとどまっていると指摘しています。
一方、政府支出の増加や、低金利、堅調な雇用による個人消費の改善をNZ中銀は見込んでいます。前期比で見るとGDP成長率は10-12月期に改善しました。それでも、前年同期比でGDP成長率を見ると、緩やかな減速傾向で、底堅さは維持されるも、回復は鈍いと見られます。
従来、NZ中銀の想定を年内据え置き、来年利上げとしていました。今回の声明を受け、年内据え置きは維持するもインフレ率動向次第で来年利下げをメインシナリオとしました。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『NZ準備銀行、政策金利のOCRを過去最低の1.75%に据え置き』を参照)。
(2019年3月27日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策
【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法
【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」
【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説
【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】