本連載では、不動産投資に関連する様々な契約や手続きについて、専門家がそれぞれのポイントを説明していきます。今回は、法律事務所に所属し、不動産関連の案件に多く携わっている司法書士・木宮瑛子氏が、不動産管理会社の設立を考えているサラリーマン投資家に向けて、法人設立の手順や注意点などを解説します。

法人設立に向けての手順や必要書類は?

不動産投資で利益が出て、法人設立を検討している方もいるのではないでしょうか。

 

不動産投資についてわかっていても、法人設立に関してはわからないことだらけ。手続きに必要な書類や費用など、気になることは少なくないでしょう。

 

そこで今回は司法書士である筆者が、法人設立の手順や注意点をまとめました。法人設立を検討している方は、ぜひ読んでみてください。

 

法人設立の手順

 

株式会社の設立は、以前に比べかなり簡単になりました。大まかな手順は以下のとおりです。

 

(1)発起人を決める

 

発起人は法人の最初の株主で、最低限1名は必要です。

 

(2)役員を決める

 

最低限、代表取締役たる取締役1名は必要です。

 

(3)定款を作成する

 

定款は、株式会社の憲法です。自身で作成する場合は、法務省のホームページの「商業・法人登記の申請書様式」のページを参照にするといいでしょう。

 

(4)公証役場で定款の認証を受ける

 

公証役場に出向き、作成した定款の認証を受けます

 

(5)資本金を口座に振り込む

上記(1)と(3)で決めたとおり、株式会社の資本金となる額を発起人名義の口座に振り込みます

 

(6)法務局にて申請手続きを行う

 

株式会社の本店所在地を管轄する法務局に、設立登記申請書と添付書類一式を持ち込み、申請手続きを行います。設立の登記申請日が株式会社設立の日となりますが、祝日や休日は登記申請ができないので注意しましょう。

 

法人設立時に必要な書類

 

続いて、法人設立までの各過程で必要な書類を紹介します。

 

(1)発起人の印鑑証明書

 

公証役場で定款認証を受ける際に、発起人の印鑑証明書(発行後3ヵ月以内のもの)を準備する必要があります。

 

(2)発起人の名義の銀行口座の通帳

 

資本金の払込みを受けるために、発起人の名義の銀行口座の通帳を準備する必要があります。

 

(3)役員の印鑑証明書と実印にする予定の印鑑

 

登記申請の真正担保のために、役員の印鑑証明書株式会社の実印にするつもりの印鑑が最低限必要です。そのため、事前に会社の実印を作っておかなければなりません。

 

一般的には、銀行印と合わせた3点セットが多く売られており、インターネットで購入できます。

 

法人設立は自分でもできる?法人設立にかかる費用

 

結果からいうと、法人設立は自身ですることができます。

 

(1)自身で設立する場合

 

自身で行う場合は、上記で紹介した手順と書類を用意して申請します。設立にかかる費用は、以下のとおりです。

 

●公証役場費用:5万1000円(定款の頁数・通数により若干増加します)

●定款印紙代:4万円

登録免許税(印紙代):最低税額15万円

 

なお自身でe-tax等をしていて、公的個人認証サービスを使用している方は、定款認証の際、オンライン申請(法務省の電磁的記録の認証=定款を含む私書証書の認証の嘱託)からダウンロードすれば、定款印紙代が減らせます。

 

(2)司法書士に依頼する場合

 

本業が忙しかったり、書類の準備に不安を覚えたりして、専門家である司法書士に設立を依頼する場合も多いようです。

 

メリットは、書類の不備がなく、問題なく希望日に会社を設立できることです。

 

一方デメリットは、司法書士に対し報酬が発生することです。

 

少し費用はかかりますが、

 

●書類準備に不安

●本業が忙しい

●希望する日に確実に会社を設立したい

 

などの方は、ぜひ一度、専門家に相談することをオススメします。

会社員が法人設立する際の2つの注意点

不動産投資家のなかには会社員も少なくないでしょう。会社員が法人設立する際には、以下の2点を注意しましょう

 

(1)会社で副業が禁止されていないか確認する

 

副業というより投資の一環としての法人化ですが、念のため、勤務先の就業規則や社内規則で「他の会社の役員となること」が禁止されていないかどうか、見てみましょう

 

(2)法人にする必要性の再確認

 

新たに法人を設立すると、手間や管理コストは間違いなく増えます。

 

たとえば、法人を設立したら、本店所在地を管轄する税務署と市区町村役場の最低2箇所への届出が必要です。

 

また事業年度末が来たら決算を行い、(今までの個人の確定申告とは別に)株式会社で確定申告をしなければなりません。また赤字決算でも最低7万円の法人税がかかります

 

なお、株式会社を設立するより、株式会社を解散・清算するほうが簡単ではありません。今一度、かけるコストと見合うかどうか、検討しましょう。

 

 まとめ 

 

最近は法務省のホームページが充実し、簡単な形態の株式会社であれば自身でも設立が容易になりました

 

とはいえ、必要な書類の手間が減ったわけではありません。希望する日に確実に会社を設立したい方や本業が忙しい方、書類準備に不安な方は、ぜひ近くの司法書士に相談してみてください。

 

本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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