本連載では、不動産投資に関連する様々な契約や手続きについて、専門家がそれぞれのポイントを説明していきます。今回は、法律事務所に所属し、不動産関連の案件に多く携わっている司法書士・木宮瑛子氏が、登記簿謄本の取得方法や見方について解説します。

名義人以外の人でも取得できる「登記簿謄本」

日本において、不動産の売買には登記の制度を取っています。

 

不動産登記をすることによって、自分の不動産であることを証明することができます。

 

登記をすると「登記簿謄本」という書類ができあがります。しかし、多くのオーナーは所有者のところが自分であること以外、ほとんどの情報を把握していない場合が多いのではないでしょうか。

 

物件を購入する前に自身で「登記簿謄本」を取得して、物件の今までの所有履歴などを調べることもできるので、ぜひ、この記事を機会に不動産登記について詳しく勉強しましょう。

 

そもそも登記簿謄本とは?

 

不動産の登記とは、不動産の表示及び不動産の権利を公示する制度を定めることによって、大切な財産である不動産について国民の権利を守り、そして、経済活動としての不動産取引を安全に円滑にするためにつくられた国の制度です。

 

その不動産について権利を持つ人を公示することが登記制度の目的なので、誰でも、登記官に対し、手数料を納付すれば、登記記録に記録されている事項を証明した書面の交付を請求することができます。この証明した書面のことが、一般に「登記簿謄本」と呼ばれているものです。

 

登記簿謄本の種類

 

一般に登記簿謄本というとき、下記の全部事項証明書のことを指していることが多いです。実は登記簿謄本と一口にいっても、その証明内容が分かれています。

 

(1)全部事項証明書

 

記録されている事項の全部が出てきます。不動産について調査する場合、全部事項証明書を取得します。

 

(2)現在事項証明書

 

記録されている、現在、有効な事項が出てきます。

 

(3)何区何番事項証明

 

文字どおり、証明する箇所を指定した部分だけ出てきます。全部事項証明書、現在事項証明書だと、膨大な量の証明書となってしまうような場合、何区何番事項証明書を取得します。

 

(4)所有者証明書

 

記録されている所有者の住所氏名・名称が出てきます。所有権だけ証明すればいい場合、所有者証明書を取得します。

 

不動産登記簿謄本を取るには?

 

(1)どこの法務局に行けばいいのか

 

原則どこの法務局でも構いません

 

たとえば、渋谷区にある土地の登記簿謄本を取るために、千代田区にある東京法務局へ行っても、新宿区にある新宿出張所へ行っても、静岡県にある静岡地方法務局へ行っても構いません。

 

なお、開庁時間は、(年末年始を除く)平日の8時30分から午後5時15分までです。

 

平日の日中、どうしても法務局へ行けない方は、法務省のオンラインでの登記事項証明書請求サービスを利用することを検討するといいでしょう。

 

(2)何の情報があればいいか

 

土地の登記簿謄本を取りたいときは、土地の所在・地番が必要で、建物の登記簿謄本を取りたいときは、建物の所在・家屋番号が必要です。

 

上記情報は、不動産の住所とは違うのでしょうか?

 

①所在・地番とは?

 

まず土地については、住居表示(●丁目■番▲号 という住所の表現)が実施されている地域は、所在・地番と住所とは違います。

 

一方、住居表示が実施されていない地域(大字●字■ ▲番地 という住所の表現)は、所在・地番と一致しているでしょう。

 

②所在・家屋番号とは?

 

次に建物については、所在・地番の上にただひとつの建物であれば、家屋番号は地番と同じですが、複数ですと「の1」「の2」、とふられていきます。

 

③自宅の場合は「課税明細書」にて確認ができる

 

ご自身の不動産であれば、不動産がある地の市区町村役場(東京都の場合は都税事務所)から年に一度郵送されてくる「固定資産税の納税通知書」の「課税明細書」に不動産について「所在・地番」「所在・家屋番号」が書いてあり、そこに記載されている所在・地番/所在・家屋番号を控えておきましょう。

 

しかし、「課税明細書」等の資料がない場合は、法務局のカウンターで相談しながらあたりをつけて調査をしなければなりません。住所と念のため所有者(区分建物の場合は、マンション名と部屋番号)も控えていきましょう。

 

(3)持ち物は

 

「(2)何の情報があればいいか」の情報の控えを用意したら、あとは手数料だけです。登記簿謄本1通につき600円の収入印紙が必要です。多くの法務局は、法務局内に印紙売り場があるので、実際に、登記簿謄本が出るなら、その通数の印紙を購入すればいいでしょう。

登記簿謄本に何が書かれているのか?

不動産登記簿謄本の見方は

 

下記3つのポイントをおさえましょう。

 

(1)表題部

 

表題部は、現物不動産の現況と不動産を表示しています。

 

①土地の場合

 

土地であれば、地番区域・地番・地目・地積などが表示されています。

 

[図表1]表題部の表記箇所(土地の場合)

 

②建物の場合

 

建物であれば、家屋番号・建物の種類・建物の構造・建物の床面積などが表示されています。

 

[図表2]表題部の表記箇所(建物の場合)

 

(2)権利部

 

不動産取引の際、大変重要となってくる項目です。

 

権利部は、「所有権」「抵当権」といった、不動産に関する権利を記載しています。ここに自身の名前が記載されていることで、第三者に自身の権利を主張することができるので、登記が重要になるわけです。

 

[図表3]権利部の表記箇所

 

①甲区

 

権利部は更に「甲区」と「乙区」に分かれています。甲区は、所有権に関する事項が記載されます。甲区を見ることで、所有者、共有者、所有権移転の仮登記や、差し押さえなどをチェックすることができます。

[図表4]権利部の甲区の箇所

 

乙区

 

乙区は、所有権以外の権利に関する事項が記載されます。乙区を見ることで、抵当権・根抵当権や地上権などがついていることをチェックすることができます。乙区の欄がなければ、その不動産には権利の負担がない、所有権だけのまっさらな不動産ということです。

[図表5]権利部の乙区の箇所

 

アンダーラインが書かれている部分は削除の意味です。たとえば、所有権登記名義人が住所変更の登記申請をすると、所有権移転登記時の住所にアンダーラインが引かれて、新たな変更後の住所が次の枠に書かれます。また住宅ローンを完済し、1番抵当権抹消登記申請を申請すると、1番抵当権の登記事項にはすべてアンダーラインが引かれます。

 

 まとめ 

 

今回は不動産登記簿謄本の取得方法と見方について書いていきましたが、いかがだったでしょうか?

 

不動産投資をしている方は、登記簿謄本を取得することが多いと思います。せっかくなので、自身が所有している不動産の登記謄本の見方もマスターしましょう。

 

不動産登記で困ったことがあれば、登記の専門家である近くの司法書士にぜひ相談してみましょう。

 

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本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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