景気見通しや金利見通しに注目が集まる今回のFOMC
FRBは前回1月のFOMCで、金融政策については、「辛抱強く」慎重な判断をしていく姿勢を示した。それまでは、米国経済については堅調だと判断し、しっかりした雇用市場と低インフレが並存する「類まれな」状況を受けて、2019年内に2回の利上げすら想定していたが、市場の懸念する先行きへの不安や内外の不透明な要因を踏まえ、当面は利上げを我慢する姿勢に転換した。
金融政策の次の一手が、利上げなのか利下げなのかまでは、明確になったとは言えないと筆者は考えているが、このままなら、年内は利上げをせず我慢する、まさに「辛抱強く」見守る姿勢を取るのではないだろうか。
そんな中、今週3月19-20日はFOMCが開催される。政策変更はないと予想しているが、今回のFOMCでは、景気見通しや金利見通しが示される。ドットチャートにも、一段と注目が集まるだろう。FOMCの委員の発言は、強弱分かれてきているが、今後の金融政策をどうしていくかについては、経済指標次第との姿勢に転じてきている。
最近の経済指標は、強弱まちまちも
2018年第4四半期まで堅調な数字を示してきた、生産・消費・雇用の各指標だったが、2019年第1四半期に入ると、ややばらつきが見られるようになってきた。最近の数字では、2月の鉱工業生産指数は、製造業では前月比-0.4% (事前予想+0.1%)、全体でも+0.1%にとどまった(事前予想+0.4%)。原材料や防衛・宇宙関連などが上昇したが、消費財や企業設備、建設資材、自動車などが低下。鉱工業設備稼働率も78.2%と、前月の78.3%から僅かながら低下した。
消費では、3月の消費者マインド指数(速報値)が、97.8と予想の95.6を上回った。期待指数は昨年10月以来の高水準で、この上昇は、低・中所得層の間で所得に対する期待が大きく高まったことを反映したものと推測される。向こう1年間の景気見通しに関する指数も4年ぶり高水準に上昇しており、消費は依然高水準にある。
雇用では、2月の雇用統計で、非農業部門雇用者数が予想を大きく下回ったが、失業率は3.8%と前月1月の4.0%から再び低下と、事前予想の3.9%よりも強い結果だった。時間当たり賃金も前月比が+0.4%、前年比で+3.4%で、いずれも市場予想の前月比+0.3%、前年比+3.3%を上回って上昇しており、今回の雇用統計では、市場予想を上回った部分も引き続き多い。天候の要因が数字に影響したことや、1月から2月にかけては連邦政府機関が閉鎖されていたという特殊要因を考慮すると、雇用市場が劇的に変化し始めたとは言えない。
現状では、今回のFOMCでFRBが政策軌道を変更することはないと予想している。だが、今後、前回のFOMCでの“豹変”もあった後だけに、示される景気見通しや金利見通し、ドットチャートは手掛かりとして材料視されやすい。加えて、主要国の中央銀行が景気判断の下方修正やそれに基づく金融政策の軌道修正を表明する流れもある。市場は、「辛抱強く」景気を判断し金融政策の方向感を探るFRBの次の一手を、期待感を持って待っていると言えるだろう。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO