英国議会下院、EU離脱協定案を否決…離脱期限延長へシフトか

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

メイ首相の駆け込み的なバックストップに関する条件見直しから、協定案合意への期待も見られましたが、採決前にコックス英法務長官が条件見直し後も離脱協定を巡る法的リスクは依然として「変わらない」と表明したこともあり、否決されました。今後の展開は不透明ですが、今後の注目は離脱期限延長にシフトしたと見ています。

英国のEU離脱協定案採決:法的拘束力を伴う修正にこぎつけるも、議会は協定案を否決

英国議会下院は2019年3月12日、メイ首相が示した欧州連合(EU)からの離脱協定案を採決しましたが、賛成242票、反対391票(149票差)で否決となりました。1月15日の230票差よりは縮んだものの、今回も与党から大量の造反が出て3ケタの大差で否決されました(図表1参照)。

 

[図表1]英国のEU離脱に関連する主なイベント

出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

メイ首相は11日に欧州委員会(EUの行政執行機関)のユンケル委員長と離脱後のアイルランド国境の物理的壁設置回避を保証する「バックストップ(安全策)」条項について、「法的拘束力を伴う修正」で合意が成立していました。そのため採決への期待も見られましたが、結局否決されました。

どこに注目すべきか:バックストップ、離脱期限、再国民投票

メイ首相の駆け込み的なバックストップに関する条件見直しから、協定案合意への期待も見られましたが、採決前にコックス英法務長官が条件見直し後も離脱協定を巡る法的リ スクは依然として「変わらない」と表明したこともあり、否決されました。今後の展開は不透明ですが、今後の注目は離脱期限延長にシフトしたと見ています。

 

 

メイ首相が採決前日に法的拘束力を伴う修正を引き出したものの、どんでん返しには至りませんでした。メイ首相の姿勢を評価する面もありますが、やはり昨年11月の合意から現在まで解決できなかった問題が一晩で解決すると期待することに無理があるのかもしれません。

 

今後の展開を占うと、メインシナリオは図表1に沿えば、次に「合意なき離脱」についての採決が行われ(これは恐らく否決)る予定です。その後、3月29日のEU離脱期限延長について採決が行われる予定です。延長期間は欧州議会のスケジュールから5月もしくは6月末が有力と見られます。

 

この期限延長が「本当の」最後で、それまでには合意の上離脱が市場でもメインシナリオと思われます。

 

ただ、これはあくまで市場などの想定であって、事態が本当にこの通り進むのかは不透明です。例えば、今日のヘッドライン19年2月27日号でも指摘したように、期限延長の理由が厳しく問われることが想定されます。英国政治の不毛ともいわれる対立を延々と続けることに対し、期限延長の可否を握るEUに加え、英国産業界からも不満の声が聞かれるからです。期限延長の採決と、21~22日EU首脳会議の動向に注目しています。

 

また、法的拘束力を伴う修正に同意したユンケル委員長も「3回目は無い」と釘をさしており、これ以上の修正が期待しにくい中での期限延長に展望が描きにくい面もあります。

 

今後の展開が不透明な要因に、そもそも現在のメイ首相が押し進めている(昨年11月に合意した)協定案に基づくEU離脱に対する国民の支持が低いことも背景ではないかと思われます。調査会社の世論調査によると、3月はじめ時点で協定案への支持は2割程度で、4割強が反対(残りは「わからない」)という結果でした。離脱期限が近づいた足元では、反対、賛成が3割程度で拮抗していますが、それでも反対が賛成を上回っています。メイ首相はことあるごとに、国民の声である投票の結果(既に足かけ3年前になりますが)を尊重するとして、合意された離脱を推し進める戦略に固執していますが、求心力に不安も残ります。

 

別の世論調査で、残留と離脱の問いに対して、特に若い世代を中心に残留支持が過半数を上回る結果も見られます。そのような中、準備に4~5ヵ月程度必要な点は懸念されますが、再国民投票への期待も高まっています。準備期間のこともあり、離脱期限延長の期間に注目しています。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『英国議会下院、EU離脱協定案を否決…離脱期限延長へシフトか』を参照)。

 

(2019年3月13日)

 

 

梅澤利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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