お金がないからコンビニ強盗を…人が「爬虫類脳」に負ける理由

関西での肉バル店展開に挑戦した2社のうち、成功したのは「企業理念」を重視した1社でした。本記事では、人間の脳の構造をイメージし、人や企業が目標を達成するために必要な長期的思考を身につける具体的なメソッドとして「理念」があることを紹介します。 ※本連載では、アクセスグループ代表、税理士法人アクセス代表税理士・鈴木浩文氏の著書、『親父いつ社長やめるの? ―創業者があなたに事業承継しない決定的な理由―』(アチーブメント出版)から一部を抜粋し、人財・理念承継のポイントを解説します。

「短期的な思考と長期的な思考」の違いとは?

私たちの会社の理念は「社員の成長の革新により社長を元気にし、お客様を100年企業に導く」というものです。

 

100年というと、私の代では見届けられません。見届けるのは次の代、あるいはそのまた次の代でしょう。企業理念は長期思考です。

 

人は物事を長期的に考えると、悪いことはしません。これから20年以上付き合う隣の家の前でゴミを捨てますか? 絶対に捨てません。めったに通らない所だからついゴミを捨ててしまうのです。

 

このように多くの人は短期的な思考と長期的な思考を使い分けています。

 

行き過ぎた短期思考の例が強盗。お金が欲しいから近所のコンビニを襲うというのは超短期思考です。今は防犯カメラが至る所に設置されている時代なので、警察につかまる可能性は高い。それでも強盗するというのは、長期的に物事を考えていないからです。しかも、人手不足の今なら、コンビニのアルバイトの時給はけっこういい。長期的に考えれば、強盗するよりもバイトしたほうが圧倒的に割りがいいのに、長期的に物事を考えないから悪いことするのです。

自分のことばかり考えるのが「人間の本能」である

それでは長期思考と短期思考はどこからくるのでしょうか。

 

アメリカのポール・マクリーン博士は“脳の三層構造説”の仮説を立てました。進化の過程で一層目の爬虫類脳から二層目の哺乳類脳へ、そして三層目である人間脳になったという説です。

 

爬虫類の脳は一人称でしか物事を考えられないそうです。自分のことだけです。

 

哺乳類は少し賢くなって、群れで暮らすようになり、役割分担して、まわりとうまくやっていこうという発想が出てきました。あなたたち、つまり二人称のことまで考えられます。

 

人間の脳はさらに前頭葉が発達して、「みんなのため」を考えられます。つまり第三者のことを考えられる三人称脳です。

 

ところが、人間として発達した脳より、爬虫類時代からの脳のほうが、20倍の引力があるそうです。人は少し気を緩めると、爬虫類脳に引っ張られて自分のことばかり考えてしまいます。

 

[図表1]脳の3層構造(ポール・マクリーンの脳の3層構造)

 

ということは、「世のため人のため」というきれいごとを20倍考えてチャラ。朝から晩まで人のことを考えているくらいでようやく長期的思考が身につきます。

 

私たちは、爬虫類の一人称脳になっていることを自覚すべきです。放っておくと、自分のことばかり考えて、まわりをないがしろにするのが人間です。それが本能です。

 

顧客の利益と自分の成績、どちらを優先していますか? 顧客の不利益に目をつぶって、自分の営業成績のために商品を売りつけることはありませんか? そのまま野放しにしていたら、顧客からの信頼も社会的な信用も失ってしまいます。

 

私たちには、爬虫類脳から人間脳に引き寄せてくれる何かが必要なのです。それが企業理念です。

すべての土台になるのが個人の「人生理念」

「企業理念がなかなか浸透しない・・・」。社長のそんな嘆きをよく耳にします。

 

それでは、企業理念の前に、社長は社員の個人理念を知っているでしょうか? そもそも社長に個人の理念はあるでしょうか?

 

私は税理士という職業柄、顧問先との付き合いの関係でさまざまな研修を受けてきました。そのほとんどは、理念というと、企業理念や創業の精神にフォーカスしています。しかし、いきなり企業理念を掲げてもうまくいきません。

 

会社は、あくまでも個人の集合体。10人だろうが1万人だろうが、法人は人のかたまりにすぎません。法人自体に考えや理念はないのです。まず個人ありきなのです。

 

社長の個人理念があり、それを土台にした創業理念があり、さらにそれを土台にした企業理念がある。元をたどると個人です。社長自身の個人理念が確立されていないのに、社員に企業理念が浸透するわけがありません。

 

肉バルで成功したA社と、成功しなかったB社(関連記事『肉バル運営…ライバル2社の明暗を分けた「企業理念」の違い』)。この2社で決定的に違うのは、会社だけでなく、社員一人ひとりの目標設定があるかどうか。会社がいくら理念や目標を掲げても、それが社員一人ひとりの考えとつながっていなければ、絵に描いた餅に終わってしまいます。

 

まず、すべての土台になるのが個人の「人生理念」です。自分はどう生きたいのか。これは価値観や信条と言い換えてもいいでしょう。

 

その上に「人生ビジョン」を描きます。人生理念を土台にした将来あるべき姿を設定するのです。

 

それを具体的な「目標」に落とし込みます。長期・中期・短期と期間を区切って、数値化するわけです。

 

この目標を達成するための計画を立てます。

 

それを日々、実践していくわけです。

 

これがアチーブメント社の研修で学んだ成功のステップです。企業理念の前に、社長と社員一人ひとりの個人の理念を明確化する必要があるのです。

 

[図表2]アチーブメントピラミッド

©Copyright 1997,2018 Achivement Corp., All rights reserved.
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鈴木 浩文

税理士法人アクセス代表税理士

 

 

アクセスグループ代表
税理士法人アクセス 代表税理士
一般社団法人財務コンサルティング協会 理事長
日本相続知財センター大阪中央支部 理事 

1970年生まれ。関西大学経済学部を卒業後、元マルサ税理士に師事。日本有数の会計事務所系の専門家グループである税理士法人マイツに転じて
企業再生・M&Aなどの財務コンサルティングの経験を積む。
年間100件ペースで相続税申告や事業承継対策をおこない、現場主義を貫いている。
現在は大阪・京都に事務所を開設し幅広く活躍。飲食チェーンの監査役や出版社・自動車教習所の社外取締役として経営実務にも携わっている。
アクセスグループ http://act-cess-souzoku.jp
事業承継診断チェック http://act-cess-souzoku.jp/shindan/

著者紹介

連載事業承継を真の成功に導く「人財・経営理念」の引き継ぎ方

親父いつ社長やめるの? 創業者があなたに事業承継しない決定的な理由

親父いつ社長やめるの? 創業者があなたに事業承継しない決定的な理由

鈴木 浩文

アチーブメント出版

経営者の平均年齢は66歳・・・ 「うちの親はいつになったら引退するつもりなの?」 後継者のあなたはそう思っていませんか? 2028年まで事業承継税制「特例措置」によって自社株の贈与・相続に税金がかからなくなりました…

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