前回は、農地の相続で重要となる「納税猶予」について説明をしました。今回は、賃貸不動産を法人化するメリット、実行する際の留意点などを見ていきます。

賃貸不動産を法人化し、税金面での優遇を受ける

賃貸不動産がある場合は、その賃貸不動産を所有・管理する法人を作ることで、税金面での優遇を受けることができます。一つには、課税される税金を変更する意図があります。個人で収益不動産を所有している場合には所得税が課されますが、法人で収益不動産を所有している場合には法人税が課されます。

 


法人を作るのは、法人税のほうが税率が低いからです。個人の所得税の税率は超過累進課税になっていて、高所得であるほど税負担は段階的に大きくなります。平成27年1月1日以降で所得税率は住民税を加えると最高で55%です。一方の法人税の実効税率は800万円以下で24・55%、800万円超は38・37%です。

 

この差を利用することによって、より多くの財産を相続人に残すことができるというわけです。これについては直接相続税の節税とは関係ないように思えますが、法人化の最も大きいメリットである所得の分散と併用することで効果を発揮します。

留保した財産を給与として家族に支払えば・・・

法人を作り、家族をその法人の社員にして給与を支払うことで分散します。給与として支払う分は贈与税は当然課されません。給料ですから給与所得控除も受けられます。もともと被相続人の手元に収まるはずだった家賃収入を、実質的に非課税で贈与したことと変わりません。

 

家族を役員にすれば、役員報酬としてさらに多くの金額を相続人に分散できます。役員報酬は「いくらでなくてはいけない」という規定はないので、常識の範囲で決めてかまいません。

 

ただし、同業他社や売り上げが近い法人などを参考にして決める必要があるので、専門家の相談は必須です。勤務実態がないと税務署が給与として認められないこともあります。
給与や役員報酬によって、相続税の納税資金を蓄えることも可能です。

 


まとめると、所得税から法人税にシフトして財産の手残りを増やし、それを給与や役員報酬として家族に分散することで、相続時の節税となっているというわけです。

本連載は、2014年8月25日刊行の書籍『相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと

相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと

大久保 栄吾

幻冬舎メディアコンサルティング

額の大きな相続は、しっかり対策をとらないと相続税が大変。だからといって親が生きているうちから子が積極的に相続対策に関与することは「縁起でもない」ということで、なかなか難しい。 本書では親が生きているうちから、子…

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