前回は、相続税の生前対策として生命保険・個人年金保険を活用した手法を説明しました。今回は、自宅の評価を軽減できる「小規模宅地等の特例」について見ていきます。

共に暮らす配偶者は無条件で適用される

親が暮らす自宅の敷地について、相続時に評価を大きく下げる特例が「小規模宅地等の特例」です。自宅は生活に最低限必要な財産なので、できるだけ相続税負担を軽くしようという考えからつくられた特例です。


要件を満たしていれば、居住用に関しては240平方メートルまで80%評価減できます(平成27年からは330平方メートル)。8000万円の土地が1600万円評価になるわけですから、基礎控除を少しだけオーバーして相続税がかかるような方などは、この特例一つで相続税をゼロにできるでしょう。


どのようにすれば特例が受けられるかを確認します。


①被相続人と同居していた配偶者が自宅を取得する場合
両親のうち父が亡くなり、母が自宅を相続した場合がこれに当たります。取得者が共に暮らす配偶者の場合は、無条件で特例が適用されます。実家を離れて暮らす子と同居をするために、相続税申告期限内に売却したり、賃貸物件として貸し出したりしてはいけません。


②被相続人と同居していた親族が取得する場合
被相続人と同居していた親族が自宅を取得し、相続税の申告期限までこの家に住み続けていれば、特例の適用が受けられます。たとえば、父と子の二人暮らしで父が亡くなり、子がその家を相続する場合などがこれに当たります。親との同居は相続が発生する直前のタイミングからでもかまいません。

条件を満たせば被相続人と同居していない子も適用可

③被相続人と同居していない子が自宅を取得する場合
自宅を取得する子が被相続人とは同居していなくても、次の条件に当てはまっていれば特例を受けられます。その要件とは、「相続開始前3年以内に自分または自分の配偶者の持ち屋に住んだことがない」です。親が亡くなるまでの3年間マイホームを持たず、アパートや社宅暮らしをしていた子が相続で親の自宅を取得して、そこに住み始めるような場合です。

 

ちなみに、子は自分や自分の配偶者名義のマイホームに“居住”してはいけないのであって、“所有”する分には問題ありません。マイホームはマイホームのまま所有しておき、相続が起きるまでの3年以内であれば親と同居するという方法もとろうと思えば可能です。

本連載は、2014年8月25日刊行の書籍『相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと

相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと

大久保 栄吾

幻冬舎メディアコンサルティング

額の大きな相続は、しっかり対策をとらないと相続税が大変。だからといって親が生きているうちから子が積極的に相続対策に関与することは「縁起でもない」ということで、なかなか難しい。 本書では親が生きているうちから、子…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録