前回は、2500万円まで非課税で贈与できる「相続時精算課税制度」の内容と、その制度を使うタイミングについて説明しました。今回は、1500万円まで教育資金が非課税で贈与できる制度について見ていきます。

1500万円までは非課税で贈与できる

父母や祖父母から子や孫、ひ孫への教育資金を1500万円までは非課税で贈与できる制度が平成25年4月から始まりました。しかも贈与する子や孫、子やひ孫の数に制限はありません。親に3人の孫がいて、それぞれに1500万円ずつ教育資金として贈与すれば、4500万円の相続財産が移転できます。


この特例を使うには、まず贈与する相手が30歳未満の子や孫、ひ孫であること。そして、銀行などの金融機関などに「教育資金」を預け入れます。教育資金というのは、学校などに支払われる入学金や授業料、塾や習い事の月謝などを指します。その後、「教育資金非課税申告書」を金融機関に提出します。


贈与を受けた人は、「教育資金として●円使いました」という証明書(領収書など)を金融機関に提出し、資金を受け取ります。資金は一度で使い切らなくてもかまいません。今回は大学の入学金、次は大学の授業料、その次は留学先の学校の入学費というように分けて使えます。払い出しを受けるにはその都度、領収書の提出が必要ですが、前払いしてくれる金融機関もあります。


親としてもかわいい孫に勉強やスポーツなどをがんばってもらうための贈与と考えれば、積極的に贈与する気になれることと思います。

贈与された資金30歳までに使い切ることが条件

教育資金の一括贈与は魅力的な節税対策なのですが、注意したい点もあります。それは、子や孫が30歳までに贈与された資金を使い切らなければならない点です。


たとえば、あなたの親が「孫は将来、医学部に進むと言っているから」と限度額いっぱいの1500万円を一括贈与してくれたとします。ところがあなたの子どもは受験に失敗し、医学部ではない他の学部に進みました。その学部は医学部に比べると授業料が安く、資金のうち1000万円が使い切れずに残りました。


そのまま子どもが30歳の誕生日を迎えると、特例は終了してしまいます。しかしこの時、余った1000万円について子どもは贈与税を支払わなくてはならないのです。また、この特例は平成31年3月31日までの時限立法です。


ところで、もともと贈与には「扶養義務者から被扶養者への生活費の贈与は非課税」という基本的な暗黙のルールがあります。扶養義務者というのは、独立して生活できない人に対して、養う義務のある人。一般的には両親や祖父母です。被扶養者とは扶養を受ける人。一般的には子や孫です。つまり、親や祖父母が同居している子や孫の生活費や教育費を出す分には、贈与に当たらないのです。


今回、教育資金の一括贈与として制度が明文化されたということは、この暗黙のルールに対してメスを入れるということでもありますが、子や孫と同居している家庭であれば、わざわざ教育資金一括贈与の非課税措置を利用する手間をかけるかどうか、よく検討する必要がありそうです。

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    本連載は、2014年8月25日刊行の書籍『相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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