今回は、水道光熱費の今後の展望とともに、医療・介護施設における削減の効果を見ていきます。※本連載では、厳しい経営を迫られる医療機関において、固定費のなかでも見直されることの少ない「水道光熱費」に着目し、これらの大幅削減を可能にする「ヒートポンプ」を紹介・解説していきます。

病院において最もエネルギー消費が大きいのは「給湯」

病院における年間エネルギー消費量は、入院患者用の風呂や厨房における給湯用の消費が4割、冷暖房用・空調動力用消費が3割、照明用消費が1割程度です。給湯が最もエネルギー消費が大きく、それにともない水の消費量が多いのも特徴です(環境省「民生(業務)分野における温暖化対策技術導入マニュアル」より)。

 

患者数やスタッフが多ければ多いほど、莫大な費用がかかります。たとえば延べ床面積7万5000平方メートル程度の総合病院だと、1年間の電気代が1億円程度かかるという事例も報告されています。

 

これから先、さらに電力消費量が大きい最新型の医療機器が登場する可能性がありますし、近年IT化が進んだことで、コンピュータによる電力消費はますます増加していくでしょう。それだけに、省エネが非常に大切になります。

 

建物の中でできる一般的な省エネ方法としては、「給湯温度を下げる」「冷暖房を省エネ設定温度(冷房28℃、暖房20℃など)にする」「共用スペースを部分点灯にする」「こまめな電源オフを心がける」「エレベーター・エスカレーターの使用制限」「カーテン・ブラインドの活用」などの手段があります。

 

節水方法は、「水を出しっぱなしにしない」「吐水量を少なくする」「トイレの二度流し禁止」などです。

 

[図表]固定費の見直し方法

 

海外では、民営化によって水道料金が高騰した事例も

公益社団法人全日本病院協会の「全日病ニュース」(2013年12月1日号)では、各電力会社・ガス会社が値上げを行った結果、病院に大きな負担をもたらしている現状が報じられています。

 

平成22~平成24年度までの光熱費の推移を調査したところ、病院が負担する平成23年度の電気使用量は、前年度と比較して1病院あたり3.13%減少しているものの、電気料金は平均3.44%(1病院あたり188万9172円)増加していました。ガスにおいても、使用料は約0.47%減少したにもかかわらず、ガス料金は14.3%(1病院あたり333万289円)増加していました。

 

平成24年度にはさらに値上がりし、平成22年度と比べて1.54%の節電が行われましたが、電気料金は1病院あたり18.82%、1005万4321円も増加。ガスの使用量も、0.07%減少しましたが、料金は24.64%、金額にして572万7515円も増加していました。

 

水道料金も値上がりを続けています。過去10年の総務省統計局家計調査を見ると、2010年ころからだんだん値上がりが始まっており、新日本監査法人などの推計によると、2040年までに全国の9割で平均36%の水道料金の値上げが必要だといわれています。高度経済成長期に設置された水道管や浄水場の老朽化、人口減少による需要の低迷がその原因です。

 

さらに今後は水道事業が民営化される動きもありますが、海外では民営化によって水道料金が高騰した事例もあり、先行きが懸念されています。

 

このように年々増え続ける水道光熱費は、経営の上ではもはや無視することができない、何らかの対策が必要な重要課題になっています。

早急な水道光熱費の削減計画が、今後の命運を左右する

医療・介護施設の運営においては、早急に水道光熱費の削減を図ることが今後の命運を左右するといっても過言ではありません。

 

水道光熱費の削減というと、先ほど紹介したような「日常的に行う節水・節電」を真っ先に考える人が多いと思います。

 

こまめな節電・節水をコツコツと積み重ねるのは非常に大切なことです。ただ一方で、効果がなかなか見えにくいという面もあります。

 

とくに電気の使用料は季節や時間帯によって大幅に変動するので、個人に委ねられた細やかな節電だけでは、やれることに限界があります。

 

また、節電・節水を徹底しようとすると職員一人ひとりのみならず、出入りする患者や利用者にも常に周知させ続けなければなりません。想像以上に根気強さが求められますし、やりすぎると患者、利用者に窮屈な思いをさせてしまい、快適で心地よい施設環境とはほど遠くなります。体調が弱っていたり、認知機能が低下している患者や利用者が多い中で、節電をお願いするのは非常に心苦しいことでもあります。

 

意識的に水道光熱費のコスト削減に取り組んでいる組織でも、日々の節電や節水のレベルにとどまっている場合も多く、あまり大きな成果が得られていないことが多々あります。もっと根本的なところから、水道光熱費の見直しを図る必要があります。

 

水道光熱費は、適切な対策をすれば年間数百万円、数千万円規模の大幅な削減が可能です。それにもかかわらず、本腰を入れて取り組まないばかりに無駄なコストをかけているのは、非常にもったいないことです。

 

ここまでのまとめ

●医療・介護施設を巡る厳しい経営環境は今後も続く

●現在かかっているコストを把握し、最適化に努めることが大切

●経営の安定化には「売上を伸ばす」「出ていく費用を減らす」ことが大事

●固定費の中でも水道光熱費は、コスト削減に非常に効果がある項目

●水道光熱費が値上がりを続ける現在、早急な対策をすべき

 

 

医療・介護施設経営者のための 水道光熱費を劇的に削減する方法

医療・介護施設経営者のための 水道光熱費を劇的に削減する方法

柴 芳郎

幻冬舎メディアコンサルティング

2017年の病院運営実態分析調査によると、総損益差額が赤字の病院は約7割にもなるとの結果が出ています。 一方介護事業においても、報酬引き下げや人材不足が原因で、廃業・撤退が相次いでいます。 そのため医療・介護施…

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