共和党対民主党、米国対中国、英国対EU
アメリカでは、与党共和党と民主両党が、メキシコ国境の警備予算を巡って協議を行ってきたが、先週9日に行われた協議は、不調に終わった。協議当事者によると暫定予算が切れる前に上下両院で予算案の採決を行うために、11日には合意に至り内容を発表する腹積もりだった。協議は一時中断すると伝えられており、暫定予算が期限を迎える2月15日までの合意形成は難しくなった模様である。合意がなければ、再び連邦政府機関の一部が先月1月と同様に閉鎖される事態が予想される。
また、米中通商協議については、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が、両国間での合意には、まだかなりの隔たりがあると発言したうえ、トランプ大統領自身が、期待されてきた米中首脳会談について2月末の交渉期限前には実現しないことを漏らした。米中間で、通商交渉が難航していることが示唆される。2月末に合意形成できなければ、3月1日からは追加関税の25%が賦課される予定である。これまでの10%追加関税とはマグネチュードが異なる影響が出てくることになるだろう。
英国では、リスボン条約の規定による3月29日のEUからの離脱期限まで、時間は限られている。英国内では合意形成に四苦八苦しており、「合意なきEU離脱」に至るリスクが改めて懸念され始めている。メイ英首相は、英下院がEUと合意した案への修正を求めたことに従い、EU首脳との間で離脱案に盛り込まれたアイルランド国境を巡るバックストップ条項を撤回するよう変更を求めて、EUに打診を始めた。しかし、アイルランドのバラッカー首相らをはじめとするEU首脳の反応は冷ややかで、同条項の緩和に対しては拒否する姿勢である。見通しは厳しい。
3つの協議の成否が市場の見通しを大幅に塗り変える
上記3点に共通していることは、相手方のある協議が不調に終わるか妥結するかによって、市場の好材料となるのか、悪材料となるのかがはっきりしていることだ。共和党対民主党、米国対中国、英国対EU、いずれの協議も溝が深そうだ。市場は、先行きの不透明な状況を嫌う。いずれも、協議がうまくいけば、市場はそれを好感するだろう。しかし、現在はちょうど、3枚のコイントスを控えた状況と言える。コイン3枚とも表(市場が期待する良い結果)となれば、見通しは改善するが、そうならなければ、どれかの要因が相当に市場に悪影響を及ぼすことが懸念される。コイントスなら表が出るか裏が出るかは、確率2分の1だから、それが3枚となれば8分の1であるが、どうやらそれぞれのコイントスにはやや否定的なバイアスがかかるほどだ。その3枚のコイントスを固唾を飲んで見守っているという状況といってもよいだろう。
実際、1月初めの安値から戻り歩調を維持してきた株式市場では、不透明感が、またぞろ漂ってきた。先週末のダウ工業株30種平均は220.77ドル安(前日比0.9%)の25,169.53ドル、S&P500種株価指数も同じく前日比0.9%安の2706.05で引けた。ナスダック指数は前日比1.2%下げた。一方で、10年債米国債利回りは2.66%まで利回りを下げてきている。
11日は一転して、シェルビー米上院議員(共和党)が国境警備予算を巡る協議で民主党と「原則合意」に達したとコメントしたことで米連邦政府の閉鎖が回避されるとの期待が膨らんだ。また、コンウェイ米大統領顧問が、トランプ大統領が習近平中国国家主席と近い将来に会談する可能性があると述べたことから、米中通商協議に進展があるとの見通しが広がった。12日の東京株式市場では、先週末の連休前に大幅に下げた反動もあり、買い戻しから急反発した。まさに、コイントスを見守るかの状況である。2月もドタバタの相場展開が続き、予断を許さないと考えておくべきだろう。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO