今回は、医師が開業資金をスムーズに調達・活用するテクニックを紹介します。※医師の独立開業が増加する一方で、経営に問題を抱えるクリニックも増加しています。開業医が頼りがちな開業コンサルタントですが、ときに過剰な設備投資等を勧められ、かえって経営が悪化するケースも少なくありません。本連載では、実例を元に、開業医が陥りやすい経営上の落とし穴と、その予防策を税理士の著者が解説します。

医療機器は「中古」「リース」を上手に活用する

絶対に必要な設備であっても、新品を買う必要はありません。法令上一定の制限がありますが、中古という選択肢もあります。保証の面などが新品と違ってきますので十分に注意は必要ですが、価格面ではとても魅力的です。

 

たとえば、歯科の中古ユニットなどは山のようにあります。つぶれてしまったクリニックから放出された機器を格安で手に入れることもできます。他にはレントゲンなども良質な中古がたくさんあります。

 

先生方は、せっかく新規に開業するのだからと新品を選んでしまうことがほとんどですが、中古を選択肢に入れることで開業後の資金繰りをずいぶん楽にすることもできるのです。

 

また、設備を購入する場合、リースがいいのか、割賦がいいのか迷う先生方も少なくありません。リースを利用した場合、以前は五年のリース期間が終わると、一カ月分のリース料を支払えばその機器を買い取ることができました。

 

しかし、最近は競争の激化によりリース会社の経営が厳しくなり、リース満了後、少なくとも二年、長ければ三〜四年は、再リース料を得ないと採算が取れなくなっています。また、再リース期間が過ぎた後もメーカーに機器の状況を確認し、消耗した部分の交換を行った後でなければ買い取ることができません。その際のメンテナンス料は通常、その機器の販売価格の10%以上かかります。

 

それに対して割賦はもともと所有権が先生にあるため、支払完了後の継続的な支出に関して気にする必要はありませんが、リースよりも利率が高い場合が多いです。

 

ですから支払満了後も使用したいものであれば、割賦を利用しておいた方がよい、となります。逆に機器の改良サイクルが早く、支払期間が終わったら新しいものに入れ替えたいと考えているのであれば、リースの方がメリットがあるでしょう。

 

★まとめ

●レントゲンなどは良質な中古がたくさんある。

●機器の改良サイクルが早いものはリースが有利。

●継続的に長く使える機器は割賦購入が有利。

不良債権化しそうなマイホームは医師の信用をも損なう

最近は、開業年齢も徐々に低くなっており、30代で開業する先生も増えています。その結果、十分に開業資金を貯めることができないまま開業をすることになり、資金繰りに窮するケースも頻発しています。

 

開業時は融資を利用することになりますが、金融機関も危機感を覚え、融資の申し込みをしても断られるケースを聞くようになりました。断られるケースのほとんどは、開業コンサルや税理士をつけずに独力で開業しようとする先生です。

 

政府系の金融機関である日本政策金融公庫や、医師会関連の金融機関である医師信用組合などは問題ありませんが、民間の金融機関は取引のない人からの飛び込みの申し込みを門前払いすることも多いのです。

 

その点、開業コンサルや税理士からの紹介であれば断られることはまずありません。金融機関側も紹介者の面目を潰すと他の紹介がもらえなくなるからです。また、金融機関は、紹介者ごとに金利の優遇を行っていることも多くあります。

 

しかし、その金利が必ずしも最良とは限りませんので、医療機器の場合と同様に相見積もりをとったほうがより有利な条件が出てくる場合も多いです。

 

土地などの担保がある場合を除いて、無担保で借りられるのは6000万円程度が限界です。しかし、開業の時点でマイホームを購入して住宅ローンがある場合は、開業資金の融資が通りにくくなる事もあります。かといって、家族がいればマイホームは必要でしょうし、良い物件があれば取得を諦めることは困難です。

 

その際にぜひお勧めしたいのは、価値の下がらない不動産を選ぶことです。これは開業するかどうかは関係なくマイホームを購入するときの鉄則でもありますが、人口が減っていく中では、将来の資産価値は二極分化が激しくなります。

 

人気の沿線で駅からも近い場所であれば価値は維持できるでしょうし、逆に郊外で駅から遠い場所であれば、売却しようと考えても安値でしか買い手が付かない状況に陥ります。そのようなマイホームを購入してしまえば、売却可能額よりもローンの残高が上回る債務超過の状態になってしまいます。

 

開業資金の融資は、先生方の個人の信用力が重要になりますから、不良債権化しそうなマイホームがあればマイナスになります。マイホームを購入するのであれば、十分吟味したほうがいいでしょう。

 

★まとめ

●独力で融資を申し込むと断られるケースも多い。

●金融機関は紹介者によって金利を変えている。

●資産価値が下がるマイホームの購入はマイナス要素になる。

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