今回は、クリニックに最適なスタッフの人数を算出する方法等を紹介します。※医師の独立開業が増加する一方で、経営に問題を抱えるクリニックも増加しています。開業医が頼りがちな開業コンサルタントですが、ときに過剰な設備投資等を勧められ、かえって経営が悪化するケースも少なくありません。本連載では、実例を元に、開業医が陥りやすい経営上の落とし穴と、その予防策を税理士の著者が解説します。

人件費の適正な割合は「収入の15%程度」

一般的な目安でいえば、人件費の適正な割合は収入の15%程度です。仮にスタッフ一人で年間300万円の人件費がかかるとすれば、15%から逆算すると2000万円の収入がなければなりません。つまり、収入2000万円に対してスタッフ一人ということになります。

 

クリニックの収入のボリュームゾーンは8000万円程度です。すると、常勤スタッフ四人程度の人件費で回すのがちょうどいいぐらいなのです。たとえば事務員二人で看護師が一人、もう一人はパートの看護師、この程度が15%の目安です。

 

それ以上は人件費を掛け過ぎなのですが、実際には人を増やしたがる先生が多くいらっしゃいます。では、スタッフを1人増やすことによって2000万円の収入増が見込めるか、ということになりますが、そう簡単ではありません。

 

もちろん、診療に専念したい、退職者が出たときの保険としてスタッフを増やしたい、と考える理由はあると思います。しかし中途半端な見込みで増やしてしまうと、あっという間に収益を圧迫する原因になってしまいます。

 

とくに、立ち上げのときなどに必要以上のスタッフを雇ってしまうと、あっという間に資金が尽きてしまいます。スタッフを一人雇うために何人の患者さんを看なければいけないのか、という発想が必要です。人件費を抑えることは、開業資金を長持ちさせることでもあるのです。

 

患者さんのサービスのためにスタッフを多めに配置したいと考える先生もいらっしゃいますが、それが逆効果になることもあります。暇になったとしても、スタッフはクリニックの掃除などをしてくれるわけではありません。暇な時間はおしゃべりをしています。すると待遇への不満や院長への不満が出やすくなります。

 

忙しければ不満を言っている暇もありませんし、一生懸命仕事に取り組んでいるという充実感があります。しかし時間に余裕ができると、とくに女性はうわさ話が好きな傾向がありますから、不満が高まってしまう可能性があるのです。

 

★まとめ

●人件費の適正な割合は収入の15%と考える。

●常勤スタッフ四人で回すことを基準にする。

●スタッフを一人増やすときは収入を2000万円アップできるのかを考える。

求人広告を出す前に「事前リサーチ」をしておく

実際にスタッフを募集する際の方法には、ネット広告、求人誌などさまざまなものがありますが、募集する人の特性によって使い分けた方がいいでしょう。一般的に、若い人を採用したければネット広告、主婦であればフリーペーパーなどです。

 

いずれの方法でも広告を出す前にリサーチをするのがお勧めです。弊社がアドバイスする際には、開業場所が決まったら、周辺のクリニックの広告が出ているものをすべて集めてもらっています。これを数カ月間、続けます。テナントの契約をしてから開業まで六カ月程度かかりますから、その中で三、四カ月分の広告を集める時間は十分にあります。

 

求人広告は二週間で十万円程度が一般的です。それなりに費用がかかるのです。反応がなく、さらに二週間となれば、同じ金額がかかります。割引がある場合もありますが、一定の追加費用は覚悟しなければなりません。

 

三、四カ月分の広告を集めて、長期間同じクリニックの広告が出ている場合には、応募者が来ていないということを意味します。その媒体は、購読者と募集内容が合わないのか、媒体自体に効果がないのか、あるいは両方かもしれません。

 

逆に、広告が出たと思ったら翌週には消えていたりと、すぐに募集が終わってしまう媒体は、多くの人が見ていて人が集まっていることを意味します。開業コンサルも求人広告の種類は把握していますが、どの媒体がその地域で効果的かまでは把握していません。

 

募集内容から、職種、常勤、非常勤、勤務時間、給与額、広告の効果を数カ月間分、分析してください。開業時には資金も限られていて他のクリニックよりも高額な報酬を出すのは難しいでしょうから「このくらいならギリギリいけるかもしれない」という水準を見極めて募集することになります。

 

ですから、開業場所が決まり次第、スタッフの募集準備を始めることを勧めています。

 

★まとめ

●開業場所が決まったら周辺のクリニックの広告を収集する。

●開業コンサルは広告媒体ごとの効果までは把握していない。

●募集する人の特性によって広告を出す媒体を変える。

 

 

 

田浦 俊栄

協奏会計・税理士事務所 代表税理士

 

小泉 暁之

協奏会計・税理士事務所 パートナー税理士

 

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