「え、塾って、そんなにテストやるんでしたっけ?」
【ココがPOINT】失敗しない塾選びの方法
塾選びの手順は、
① 自分の状態をセルフチェックして自分に合う塾の種類を見極める
② 塾・予備校の種類を決めたら個々の塾の詳細を比較検討して決める
ポジショニングマップ[前回記事参照]を見て、自分にどのような種類の塾・予備校が向いているかが分かったら、次に細かい内容を比較検討していきましょう。
☑ 出欠確認のシステムがあるか
サボりの抑止。保護者が確認できる状態にあることが大切。
☑ 日々の確認テストはあるか
授業内容が身についているのか常に確認が必要。
☑ 入塾前の体験授業はあるか(入塾後の担当講師が実施するか)
入塾後のイメージを正しく持つために必要不可欠。
☑ 合格実績は正しく分かりやすいか
一部の優秀な生徒が稼いだ合格数や、特定の上位クラスの実績を大々的に宣伝していることも・・・。臆せずに確認しましょう。
☑ 進路指導の体制はしっかりしているか
進路面談は誰がどのようにしてくれるのか、最初に聞いておきましょう。
☑ 通塾時間
特に時間が限られている現役生は、遠方の塾は避けたほうが無難。
☑ 授業料
いくつか比較検討して、相場を把握しておきましょう。
そのうえで、2~3校は実際に足を運んで様子を見てみるといいですよ。
以上のチェックリストを見せながら、村野は強調した。
「僕は最初の3つが、特に大切だと考えています。まず『出欠確認の有無』。
受験勉強を続けていれば、どうしても、後ろ向きになる時期や、遊びの誘惑に負けそうになるときがあります。高梨さんは、現役生で学校があるから、多分大丈夫だと思うけど、特に浪人生は、時間の自由があるので、生活リズムが乱れやすいんですよね。だけど、やはり、休まずに決められたカリキュラムに沿って勉強を進めていかなければ成績は上がらないし、あと、1回サボってしまうと、自分の中で欠席に対するハードルが下がって、2回、3回とサボりが常習化しやすいんです。
だから日々、講師が把握しているのは当たり前として、保護者の方も、ちゃんと出欠を確認できるシステムがある塾のほうが、絶対に安心ですね」
「上の子のときは、大手予備校だったんですが、どうやら何回もサボって遊びに行っていたみたいなんですよ。まあ、高校3年生といえば、もう大人ですし、任せてはいたんですが、確認できるシステムがあったら安心ですよね」
そう話す百合子の姿を見て、晴香には、百合子が村野のことを信頼し始めているように感じられた。さきほどから百合子は、やたらと、うんうんと頷きながら話を聞いていた。晴香も、さっきから話を聞いていて、ひとつも腑に落ちないことがなかった。すべて理にかなっていたし、とても中立で客観的な考え方だと思った。それだけに晴香は、ダイエットスタディが、どんな塾なのかが非常に気になり始めていたが、引き続き話を聞いた。
「次は、『日々の確認テストの有無』ですね。僕が考える理想のテストカリキュラムは、前回の授業内容の理解・定着を問う確認テストが毎回あること。さらに2週間後、1ヶ月後などに、昔の内容を思い出させて反復させるためのテストがあることです」
「え、塾って、そんなにテストやるんでしたっけ?」
晴香は驚いて尋ねた。
「少なくとも、ダイエットスタディではやっているよ。なんで、そんなにテストが必要だか分かる?」
「え、いや分かりません。定期的に模試を受ければいいのかと思ってました」
「高梨さんいいね! 分からないことを分からないって素直に言えることは、とても大事だよ。成績が伸びる人の特徴のひとつ!」
「え? あ、ありがとうございます」
「塾に行くのは、もちろん成績を伸ばすため、学力をつけるためだよね? だとしたら、実際に日々、学力が身についているのかを確認しなきゃいけないと思わない?」
「・・・そうですね」
「それなのに、年に数回、模試の偏差値だけで成績の推移を見ておくので大丈夫なのかな? 数ヶ月に1回じゃ不安じゃない? なるべく短いスパンで、自分が勉強したことが身についているかを確認していかないと、仮に勉強内容や方法が間違っていた場合に、すぐに修正がかけられなくなるよね」
「確かに、そうですね。でも毎回テストがあるって聞くと、少し、つらそうですね・・・」
「ハハハ、まあそうだよね。テストと聞くと、大抵の生徒は面倒くさいとか、ネガティブなイメージを持つよね。でも僕は、テストは自分の状態が正常かどうか確認する、健康診断のようなものだと思うんだ」
「健康診断ですか?」
「うん。健康診断の結果を見て、異常があれば治療をするように、テストの結果を見て、次の対策を考えることができる。診断も治療も、無視すれば重症化することがあるように、テストや方向修正がないと、成績不振の深刻な事態を引き起こしかねない。だから自分の勉強を無駄にしないためにも、日々、テストで自分の状態を確認してほしい。でもね、意外とそれができていない塾・予備校は多いんだ」
「そうなんですか? 話を聞いたら、絶対に必要なことのように思えてきたんですが・・・」
「うん、例えば某大手予備校は、だいたい予習がメインになっているから、復習や定着確認の視点は薄い。某映像授業予備校は、その日見たビデオの内容の確認テストのようなものはあるけど、居眠りせずにビデオを見ていれば答えられるようなもので、学力定着のためのテストにはなっていない。
そういう観点から見ても、さっき話したように、大手や衛星予備校は、もともとある程度、自分でできる生徒じゃないと不向きだと言えるね。勉強方法とかペース管理以外に、セルフチェックも自分で意識的にできる、自己管理能力の高い人じゃないと難しいわけだ」
「そうですね・・・大変かもしれないけど、やっぱり私には、テストで確認してもらいながら進んでいくスタイルのほうが合っている気がします」
「いいね! そうやって自分でよく考えて、納得度の高い決断をすることが大切だと思うよ。そうすれば、自分が選んだその環境で精一杯やれると思う。環境に対する不安があるままだと、うまくいかないときに、どうしても環境を疑っちゃうんだよね。塾とか先生とか参考書とか、いろいろなものが正しいのか不安になると、先に進めなくなる」
「そうかもしれませんね。そうすると、3つ目の『体験授業の有無』も、納得度に関わるところですか?」
「まさにその通りだよ。『体験授業の有無』も、納得して塾・予備校を決めるための重要な要素ですね。出欠確認のシステムやテストの有無なんかは資料を見れば分かるけど、一番肝心な授業の様子に関しては、体験する以外に知る術がない。だから、入塾を検討している塾・予備校があれば、絶対に体験授業を受けるべきだね」
「ダイエットスタディもやっているんですか?」
「もちろん! うちはなんと、体験授業に1人3回来てもらっているよ。お互い、ミスマッチがないほうが絶対にいいからね。よーく見てもらって、入塾を決めてほしいと思ってる。ほかの塾の体験授業は受けてみた?」
「いえ、まだ受けたことはないです」
「そっか、じゃあ、良さそうな塾を見つけたら、ぜひ受けてみてね。塾・予備校によっては、体験授業がなかったり、ビデオを見せて終わりだったり、体験授業と実際の授業の講師が全然違ったりすることもあるので、できれば、自分が実際に教わることになる講師の授業を受けさせてもらえないか、お願いしたほうがいいよ」
「へぇー、いろいろなパターンがあるわけですね」
「そうなんだよね。あとそれに付随して、1年の中でコロコロ講師が変わるような塾も、あまりお勧めできないな。個別指導に多いんだけど、途中で先生が変わると、指示内容も変わったりして、受験生が翻弄されちゃうんだ。大事な10ヶ月を、ちゃんと信頼できる先生に任せられるように、ぜひ足を運んで探してみてね」
「分かりました。気をつけて見てみます!」
「出願先の決定は、受験勉強と同じぐらい重要です」
「塾選びに関して、特に重要な部分を説明させていただきましたが、何かご不明点はありますか?」
村野は、資料を閉じながら晴香と百合子に話しかけた。
すると「あの、どうしても気になっちゃったんですけど……」と、百合子が話し始めた。
「さっきのリストに、『進路指導の体制はしっかりしているか』って書いてあったんですが、どのような点に気をつけて見ればよいのでしょうか? 最近の大学入試はいろいろな形式があって、複雑になっていると聞きまして。例えば大手予備校には、そういう部分のノウハウも多いのかなと思っていたんですが」
「ご質問ありがとうございます。進路指導や出願先の決定は、受験勉強を頑張るのと同じぐらい重要です。どんなに勉強して成績が伸びても、出願の仕方を間違えたら、すべて無駄になりますからね」
「そうですよね。上の子のときは、細かいことを調べずに、受けたいところを受けたせいで失敗してしまったと感じています」
「情報量という意味では、大手予備校は強いです。ですが、ありがたいことに、今はそれらの情報がインターネットで公開されています。ですから、情報は頑張って調べさえすれば、誰でも手に入ります。重要なのは、それらのデータをどのように使用するかです。なので、塾選びという観点で言えば、『誰がどのように進路面談をしてくれるのか』は、事前に把握しておいたほうがいいと思います」
「やはり塾によって全然違うんですか?」
「はい、そうですね。例えば某大手予備校だと、チューターの大学生が相談に乗ってくれる程度だったりします。中堅の塾ですと、教室長のような人が面談をしてくれることもありますが、その人たちは、大抵授業を受け持っていません。
つまり、目の前の生徒の状態は何も分かっていない中で、模試の偏差値か何かをちょろっと見てアドバイスしてくる程度です。それがどの程度信頼できるものなのかは、正直怪しいところです」
「ダイエットスタディはどうなんですか?」
「あとでご説明する部分ではあるのですが、弊塾では、授業を担当している講師が進路面談まで一貫しておこないます。しかも弊塾の講師は、1人で3教科を教えています。晴香さんであれば、おそらく私が英語・社会・国語の全科目を1年間教えていきます。ですので、晴香さんの3教科のバランスをしっかり把握していますし、伸びしろも分かりますし、性格や志望校なども理解した状態で、一緒に出願戦略を練っていきます」
「それは安心ですね!」
「ありがとうございます。学校の先生なども頼れるとは思いますが、弊塾に任せていただければ大丈夫ですよ。うちはこのような感じで、進路指導まで丁寧に一人ひとり見ているので、合格率が高いのかもしれません。
では、ダイエットスタディのことも、しっかり紹介させていただきます。何か不明な点があれば、すぐ聞いてくださいね」
そう言うと村野は、パンフレットを取り出して、晴香と百合子に説明を始めた。