記録的な長さとなった政府機関の閉鎖で、ラガーディア空港の運航の一時停止や、一部経済指標の公表見送り、給与支払いの遅れなど市民生活や経済に悪影響が広がっていた政府機関閉鎖が解除となりました。ただ、市場の動きを見ても、歓迎されたのは発表直後のみで、市場の動きは鈍いままです。
米国政府機関閉鎖:トランプ大統領が3週間の政府機関閉鎖解除に合意
米議会上下両院は2019年1月25日までに2月15日までの「つなぎ予算(継続予算決議)」を可決し、トランプ米大統領が法案に署名したことで、35日間続いた政府機関の一部閉鎖が解除されることとなりました。
ただ、つなぎ予算に大統領が要求していた国境の壁建設費用は含まれず、トランプ大統領が妥協した格好です。
どこに注目すべきか:政府機関閉鎖、市民生活、経済イベント
記録的な長さとなった政府機関の閉鎖で、ラガーディア空港の運航の一時停止や、一部経済指標の公表見送り、給与支払いの遅れなど市民生活や経済に悪影響が広がっていた政府機関閉鎖が解除となりました。ただ、市場の動きを見ても、歓迎されたのは発表直後のみで、次の理由により、市場の動きは鈍いままです(図表1参照)。
[図表1]米S&P500種指数と日本円(対ドル)の推移
まず、政府機関閉鎖の解除は3週間という限定的な「解除」に過ぎないからです。給与支払いなど改善は期待されますが、どの程度元に戻るかは不透明です。
次に、3週間後には再び政府機関が閉鎖される可能性があるためです。既にマルバニー米大統領首席補佐官代行は週末のインタビューで、この3週間の間の交渉で壁の建設予算が認められないならば、①再び政府機関閉鎖に戻るか、②緊急事態宣言の発動の権力を行使する可能性を示唆しています。
世論調査では政府機関閉鎖の責任はトランプ大統領(並びに共和党)にあるとの考えが過半を維持しているため、トランプ大統領の支持率も低下傾向です。旗色の悪さから一旦、主張を取り下げただけとも見られます。本音に変化が無く、対立が続くならば、そもそもプラス要因なのかも疑問です。
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最後に、今週は重要イベントが目白押しです。実質先延ばしに過ぎない政府機関閉鎖の解除よりも、今週の経済イベントを前に様子見姿勢を維持したことも、市場の反応の背景と思われます(図表2参照)。
[図表2]今週の主な経済イベント(19年1月28日~2月1日)
今週の主な経済イベントの注目点を振り返ると、まず、英国議会でメイ首相が模索する欧州連合(EU)離脱の代替案と、既に10本以上提案されている修正案の審議・採決が行われます。今後の議論の方向を占う上で重要です。
米中貿易戦争関連では、中国の劉鶴副首相が米国入りし米通商代表部と協議します。会談後の声明に注目です。
月末には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。今回から米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長が全てのFOMC後に会見を実施します。注目は、追加利上げの有無や、利上げペースに何らかのヒントがあるかです。
2点目は、報道で唐突に現れたバランスシート縮小の短期化の可能性についてです。米国の経済環境からは引き締めを示唆する短期化には違和感があるだけに、単なる観測記事なのかに注目しています。
不透明感高まる米国経済を占ううえで、1月の雇用統計や、特に前月大幅下落した米ISM製造業景況指数に注目しています。あわただしい1週間となりそうです。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『踊れない、米国政府機関閉鎖の解除』を参照)。
(2019年1月28日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト
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