成長率低下が露見した中国…習近平が急ぐ「次の一手」は?

21日、中国国家統計局が発表した2018年第4四半期中国GDPは6.4%増にとどまり、2009年1月以来の低い伸び率となった。先週発表された2018年12月の貿易統計では、輸出が前年同月比4.4%減、輸入が7.6%減と、2016年以来最大の落ち込みであった。とはいえ足元でのダウンサイドリスクが世界的に増加する中、中国政府の対応は比較的素早く、コミットメントの高さも感じられ、人民元に関しても1米ドル=7.000人民元の防衛線を守るであろうと予想する。21日は、米国長期金利低下の影響もあり、1米ドル=6.788人民元と安値圏からは値を戻した。

貿易摩擦の影響で中国の景気見通しが悪化し内需も停滞

貿易摩擦の影響が、中国経済にジワリと効いてきている。先週、発表された中国の2018年12月の貿易統計では、輸出が前年同月比マイナス4.4%、輸入もマイナス7.6%と、いずれも2016年以来最大の落ち込みを示した。

 

今回の減少の背景は、米国による昨年9月末からの関税の実施前に、出荷を前倒ししたことによる反動減と、景気見通しの悪化に伴う内需の停滞が理由である。前者はある程度予想されていたことだったが、この貿易統計を受けて、中国国内の景気は急速に悪化しているのではないかとの懸念が強まった。

 

習近平政権は、トランプ米政権との通商対立に終止符を打つため、国内消費を喚起し、内需による梃入れ・貿易黒字の現象策に繋げようと目論んでいるが、国内の状況からは輸入額の拡大策が、簡単に実現できる手段ではないことを示しているといえる。

 

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さらに悪いことに、今回の統計は、2018年の中国の対米貿易黒字が過去最高を記録したことも示している。米中両国は3月1日を交渉期限として設定しており、それまでに米中間で何らかの合意形成がなければ、米国は予定通り中国製品への追加関税率を25%へと引き上げる。

中国政府は短期的なダウンサイドリスクへ早急に対応

21日、中国国家統計局が発表した国内総生産伸び率 (GDP・2018年第4四半期)は、前年比6.4%増にとどまり、7~9月 (第3四半)期より0.1ポイント低下した。市場の予想に沿ったものだが、このGDP伸び率は2009年第1四半期以来の低い伸びである。年間で見ると、2018年のGDP(速報値・実質)は、前年比6.6%増となった。2017年には0.2ポイント及ばず、成長率としては、天安門事件の翌年で各国から経済制裁を受けた1990年に記録した3.9%増に次ぐ、28年ぶりの伸び率にとどまった。

 

一段の世界経済の成長鈍化や中国内での信用の伸び鈍化からの影響は、足元では拡大する可能性が高い。そうなると、今年の前半は、いかに短期的な経済のダウンサイドリスクに対応するかが、課題となる。

 

中国政府は、こうしたダウンサイドリスクに対応していくというコミットメントは、相当に強いと筆者は見ている。年末の習主席の演説では、「2019年は、経済成長の急減速を回避するために企業向け減税を実施する」と述べている。李克強首相も、年初4日に、市中銀行の預金準備率の引き下げや減税や政府の手数料の削減を発表した。2019年早々から一段の政策を発動し、金融緩和姿勢を継続している。経済対策へのコミットメントは引き続き強く、中国経済の先行きに対する厳しい見方がより強まる中、3月に開催される全人代(全国人民代表大会)に向けて、追加の政策が発動される可能性は、むしろ高まったといえるだろう。

米中首脳会談の合意内容を着実に履行してきた中国

年明けから本格化した米国との通商協議は、事務方の協議が行われているが、中国は貿易不均衡の是正に向け、米国からの輸入を年間計1兆ドル強、6年間にわたって拡大するとの提案を行ったと報道された。劉鶴中国副首相が、1月末に、訪米する予定が発表されている。中国政府にとっては、協議の流れを決めるヤマ場ということだろう。

 

中国政府は米中首脳会談後、合意内容を着実に履行してきた。米国製自動車に対する報復関税を撤廃し、700品目余りの輸入関税を引き下げたほか、米国産原油と液化天然ガス・大豆の購入を再開するなど、輸入拡大策を次々と打ち出している。年末にも、一部の輸出入品目の関税を2019年に撤廃する方針を明らかにして輸入促進の姿勢を示し、その本気度は十分にうかがえる。通商協議で、何らかの合意に至れば、それは、中国経済のダウンサイドリスクへの最大の手当てともなる。そういう意味で、やはり、今後1ヶ月あまりは、米中の協議から目が離せないだろう。

1米ドル=7.000人民元の防衛線

最後に、人民元の為替について、簡単に見ておく。昨年10-11月は、人民元は下げ圧力の中をじりじりと安値トライするあまりいい状態ではなかった。1米ドル=6.975人民元と2016年12月以来の低水準に沈んだ。ここへ来て、市場は、それほど人民元を売り込めないでいる。米国長期金利が低下したことが最大の理由だが、21日時点で、1米ドル=6.788人民元と安値圏からは、値を戻した状態である。

 

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繰り返しになるが、1米ドル=7.000人民元は、2016年12月の人民元安の際も政府・人民銀行が守りきった防衛線であり、この水準を超えて中国が人民元安を許容するとは考えにくい。やや気の早い話かもしれないが、中国経済を短期的には政策で梃入れし、中期的に米国との貿易摩擦にも折り合いをつけ、長期的には構造改革を進めていくという筋道を辿れば、現在の人民元の水準は、人民元相場の回復も見込める位置にあると見ることもできるのではないか。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

京都大学卒、MBA(神戸大学)。
シティバンク日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。 2004年末、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に移り、マーケティング責任者として活躍。2009年からはアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。
2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク/日本ウェルス)を創業し、COOに就任。2017年3月よりCIOを務める。

WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

長谷川建一氏登壇のセミナー https://gentosha-go.com/articles/-/13973

著者紹介

連載香港発!グローバル資産防衛のためのマーケットウォッチ

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

 

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