プラットフォーマーは「証券会社」
前回の続きです。
⑤株式投資型
株式投資型のクラウドファンディングは、金融商品取引法による法規制があります。ネットで株式を募集すれば、どの会社でもクラウドファンディングができるというものではありません。
「うちの会社は、すごくいいことをやっているから応援してもらえるはずだ。ホームページに掲載して、広く資本金を集めよう」と思うかもしれませんが、勝手にやっていいわけではありません。
株式投資型のクラウドファンディングは、プラットフォーマーを利用しなければなりません。プラットフォーマーは、「株式投資型のクラウドファンディングの募集をしていいですよ」という金融一種の免許をもらっている会社で、わかりやすく言えば証券会社です。
2018年11月現在、認可を受けているプラットフォーマーは、「ファンディーノFUNDINNO」「ゴーエンジェルGo Angel」「エメラダ・エクイティ」の3社です。
これらのプラットフォーマーのホームページに株式の募集案内が出ていて、投資先を選ぶことができます。株式投資型で資金調達をしたい会社は、プラットフォーマーに申請をして、審査を受ける必要があります。
審査に通ると、プラットフォーマーのホームページに募集が掲載されて、それを見た人、あるいは縁故者が「この会社は良さそうだ」と思って、株を買いたいと申し込むと取引が成立します(不成立の場合もあります)。
なぜ、証券免許を持ったプラットフォーマー経由でしか募集できないかというと、投資家保護のためです。
各企業がホームページで自由に募集していいことになると、不誠実な会社も出てきて、詐欺のようなことが横行する恐れがあります。
実体のない会社が、「うちの会社は、こんなにすごいことをやります」とうたってお金を集めて、お金を全部使ってしまって、「倒産しました。すみません」ということが起こりえます。
株式投資は、元本保証ではなく出資額の範囲内で自己責任ですから、お金が戻ってこなくても文句を言えません。規制をしておかないと、めちゃくちゃなことになりますので、投資家保護のために法律で定められているのです。
株式投資型のプラットフォーマーは、金融庁の監督下にあります。収支報告の公表が義務づけられているなど、透明性が求められています。
[図表]
教育、健康、食品など様々な業種に活用が広がっている
株式投資型クラウドファンディングで資金調達した企業としては、第1号案件として、ウェブ経理代行のBankInvoice(バンクインボイス)が1460万円を調達しています。同社は第2回目の募集では、5975万円を調達しました。
このほか、働きたい母親を支援するマザープラスが2287万5000円、スマホアプリ開発のプレスサービスが3525万円、IoTのAI家電メーカーのSKRが3300万円と5000万円(2回目)、過疎地域学習塾のコラボプラネットが1940万円の資金調達に成功しています。
MOSO Mafia(モーソーマフィア)は2回の合計で5546万円、ONE ACT(ワンアクト)は2975万円を調達しています。これらはいずれも、プラットフォーマーは「ファンディーノ」です。
「ゴーエンジェル」では、クラウド会計ソフトのマルチブックが2000万円(156ページで紹介)、ホテルハウスキーピング事業のグローバルゲイツが2000万円を調達しています。
このほか、小学校を運営するエデューレエルシーエーが2000万円と700万円(2回目)、フードサービス(カンガルー肉)のバセルが920万円、同じくフードサービス(コーヒー豆)のエレガントが1000万円を調達しています。
「エメラダ・エクイティ」では、地ビールメーカーのFar Yeast Brewing(ファーイーストブルーイング)が4634万円、スポーツ支援のラントリップが3290万円、フィンテックのSmart Trade(スマートトレード)が4382万円の資金調達に成功しています。
最近は、IoT関連の会社による調達が増えているようですが、業種としては、ウェブサービス、フィンテック、教育、健康、食品、クリーニングなど多様な会社が資金調達をしています。
多くは、現代社会で課題を抱えている分野での問題解決を目指したり、あるいは新しい社会を生み出していこうとする会社です。そういう会社が人々の共感を呼んで、クラウドファンディングで資金を集めています。