今回は、クラウドファンディングの5つの種類の中で「融資型」、「ファンド型」について解説します。※本連載は、株式会社パブリックトラストの代表取締役である佐藤公信氏の著書、『クラウドファンディング2.0』(日本文芸社)から一部を抜粋し、新時代のクラウドファンディングについて解説していきます。

融資型…広くお金を集め、プロジェクトに貸し付け

前回の続きです。

 

③融資型

 

融資型は、広くお金を集めて、それをプロジェクトに貸し付けるタイプのクラウドファンディングです。

 

ある会社が事業を始めるときに、「このビジネスは10%で回る」と考えたとします。でも、手元にお金がない。そんなときに、クラウドファンディングを使って借り入れをして、金利を支払うのが融資型です。

 

融資型は、金融商品取引法の規制対象であり、プラットフォーマーには免許が必要です。「第二種金融商品取引業」という免許で、現在認可されているのは、maneo(マネオ)マーケット株式会社という1社のみです。

 

融資型のクラウドファンディングを利用して借り入れをしたい会社は、プラットフォーマーに資金の借り入れを申し込みます。

 

申し込みを受けてプラットフォーマーが審査をします。プラットフォーマーは「会社側は10%で回ると言っているけど、実際には8%くらいじゃないか。だから、6%で貸し出しをしよう」などと決めます。

 

プラットフォーマーは、ホームページなどで「4%で回る案件があります」と言って、募集をします。4%の利回りの金融商品などめったにありませんから、資金が集まります。

 

プラットフォーマーは、4%の利払いで調達して、6%で貸し付けて、その差額を収入とします。融資を受ける事業会社は、6%という高い金利で借り入れしても、8%とか10%で回せるわけですから、借り入れによって事業を成長させられるというわけです。

 

maneo(マネオ)は、一時期、経営状態が厳しくなりましたが、親会社がリクレ(旧UBIfinance)に変わり、案件の審査が非常に厳しくなってから、うまく回り始めています。また、融資型クラウドファンディングは、ソーシャルレンディングと呼ばれています。

 

maneoのサイトを見ると、3万円くらいからの募集が多く、期間は数カ月から2年くらいまでの案件が多いようです。

 

融資型クラウドファンディングのプラットフォーマーの数が少ないのは、他にも融資を手がけている金融業者がたくさんあるからです。

 

メガバンク、地方銀行、信用金庫、ノンバンクなど、みんな融資をしていますので、事業会社としては、どこからでも借りることができます。融資型クラウドファンディングに6%もの高い金利を払わなくても、他の金融機関でもっと安い金利で借りたほうがお得です。

 

10%で確実に回る案件なら、金融機関でも審査が通る可能性があります。

 

出資者側は高い金利で運用したい。借りるほうは、できるだけ低い金利のところから借りたい。両者の利害が一致しにくい面があります。そこが融資型クラウドファンディングの難しいところです。

 

融資型は、クラウドファンディングの一形態として分類されていますが、私は、それほど大きなインパクトはないと見ています。融資型クラウドファンディングは、低金利で貸し出しをする既存の金融業との競争を強いられています。

 

融資型クラウドファンディングがうまくいったとしても、既存の金融業に新しい形態が少し加わるという程度ではないでしょうか。銀行業、ノンバンク業に取って代わるほどのインパクトはないと思います。

ファンド型…基金を集め、配当を出資者に還元

④ファンド型

 

ファンド型は、あるプロジェクトをするときに、ファンド(基金)としてお金を募集する形態です。融資型と似ているように見えますが、実質的にはかなり違います。

 

融資型は、お金を借り入れて出資者に利払いをしますが、ファンド型は、利払いではなく配当です。たとえば、1億円必要なプロジェクトがあり、すぐには利益が出ないものの、プロジェクトが成功すると、2年後には配当を出せるとします。出資者は、2年間は資金が塩漬け状態になって配当をもらえませんが、2年後からは出資額に応じた配当を受け取ることができます。

 

ファンド型の場合、ファンドを運営している会社と、資金を募集するプラットフォーマーは別の事業体です。

 

プラットフォーマーは資金募集のお手伝いをするだけですが、金融商品取引法の規制を受けます。ファンド型プラットフォーマーには「第二種金融商品取引業」の免許が必要です。

 

ファンド型は、たとえば1億円のファンドをつくる場合に、1億2000万円を募集して、ファンドに1億円を渡して、2000万円を手数料収入としてプラットフォーマーが受け取るという形で運営されています。

 

プラットフォーマーは募集をするだけですから配当には関わっていません。配当は、ファンド運営会社から出資者に支払われます。

 

ファンド型が使われているのは、映画製作などです。

 

最近の映画は世界中どこでも製作委員会方式のものが増えています。製作委員会という名前の実質的にはファンドです。

 

もともと映画というのは、出資者からお金を集めて製作をしてきたため、ファンドとの親和性が高いのではないかと思います。

 

映画製作から公開までは時間がかかります。その間は出資者にリターンはありません。しかし、1年後、2年後に映画がヒットして、興行収入が大きくなると、その中から配当が支払われます。映画の製作に出資して、当たればリターンとして配当がもらえるというものです。

 

大規模な映画の場合は、何億円、何十億円、何百億円もの製作費がかかりますので、大きな出資が必要です。多額のお金を出せる出資者が集まってファンドをつくり、映画製作をして、興行収入から費用を引いた分を出資者に分配します。

 

それを小口資金でやることができれば、ファンド型クラウドファンディングで映画をつくることも可能です。

 

現実には映画製作費は非常に高額ですから、少額のクラウドファンディングで製作費全額を集めるのは容易ではありません。

 

また、出資者は業界の大手が多く、ビデオ化権、キャラクター権など、マネタイズできる権利を出資者が独占するという商習慣となっていて、純粋に利益を配当するという形になっていないことが多いようです。

 

これに対し、映画『この世界の片隅に』(片渕須直(かたぶちすなお)監督)では、映画そのものではなく、パイロットフィルムづくりにクラウドファンディングが活用されました。

 

すばらしいパイロットフィルムをつくって、それを見てもらって、「これはいいぞ」と思った大口スポンサーに出資してもらうという方法です。

 

2000万円ほどを目標にして、実際には、約3400人から4000万円近いお金が集まったそうです。パイロットフィルムは、収益を生みませんので、配当という形ではなく、映画ができたときにエンドロールに名前を掲載する形をとっています。

 

映画を見てみると、最後に『クラウドファンディングで支援してくださった皆様』として、個人や法人の名前が掲載されています。出資額は、平均すると1人1万円ちょっとです。

 

1万円で、大ヒット映画のエンドロールに自分の名前が載ったのですから、作家の世界観に共感している人たちにとっては、気持ちとしてものすごく大きなリターンだったのではないかと思います。

 

『この世界の片隅に』のケースは、ファンド型ではありませんが、クラウドファンディングが映画製作の一部に利用された例です。

 

このほか、映画製作では、チケットを予約購入する形の購入型のクラウドファンディングが利用されることもあります。

 

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、日本文芸社、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

クラウドファンディング2.0

クラウドファンディング2.0

佐藤 公信

日本文芸社

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