EU離脱合意案の承認に向けた英国議会審議の途中経過

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英国議会の審議で、これまで非公開となっていた離脱案に関する政府(メイ首相)への法的助言の開示と、離脱案が11日の下院採決で仮に否決された場合、離脱最終合意の形成で議会の権限を強化する案が採決されました。与党の足並みの乱れが示されたことで、ポンドは下落しました。確かにメイ政権には痛手ですが、無秩序な離脱の可能性の低下も想定されます。 

英国議会EU離脱審議開始:12月11日の採決 を前にしてメイ政権に痛手の結果

英国が欧州連合(EU)から離脱する条件について、EUと同国が11月に合意した協定案に関する5日間の審議が英議会下院で2018年12月4日に開始されました。審議された動議でメイ政権が敗北しました。離脱合意案の採決を12月11日に控えるメイ政権にとり厳しい結果となりました。

 

尚、同じ4日に、EUの最高裁にあたるEU司法裁判所の法務官が英国のEU離脱決定を巡り、他の加盟国の同意がなくても英国が一方的に撤回できるとの見解を示しました。今回の見解はEU司法裁に対する法務官の意見陳述で、正式な判決ではないものの、EU基本条約(リスボン条約)の第50条に「離脱の通知を一方的に撤回することを認めている」との見解が示されたことで、EU離脱を巡り、再国民投票の可能性が高まったとの見方もあります。

どこに注目すべきか: 英国議会審議、EU司法裁判所、再国民投票 

英国議会の審議で、これまで非公開となっていた離脱案に関する政府(メイ首相)への法的助言の開示と、離脱案が11日の下院採決で仮に否決された場合、離脱最終合意の形成で議会の権限を強化する案が採決されました。与党の足並みの乱れが示されたことで、ポンドは下落しました(図表1参照)。審議の結果はメイ政権に痛手ですが、EU司法裁判所の見解への期待も見られます。 

 

[図表1]英国ポンド(対ドル)レートの推移

 

日次、期間:2017年12月4日~2018年12月4日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2017年12月4日~2018年12月4日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

審議は最初から厳しい展開となりました。メイ政権が法的助言を非開示としていたのは議会を侮辱する動議が可決されたからです。英国議会でこのような動議が可決すること自体が極めて異例です。メイ首相は5日に文書の公表を余儀なくされたうえ、与党の足並みが揃っていないことが明確に示されました。審議最終日の11日に実施される離脱合意案の採決を控え不安を残す結果となりました。

 

 

もう一つの動議で、仮に最初の採決が否決された場合、政府方針を議会が修正することが可能になったこともメイ政権の立場の弱さを反映しています。しかし災い転じて福となる可能性もあります。現在はメイ首相中心に離脱合意案作成が進められてきましたが、2回目の採決となった場合に提出される修正案は議会で多数を占める穏健離脱派の見解が反映され、議会がまとまる可能性も想定されます。

 

最後に、EU司法裁判所の法務官の見解により、ひょっとすると可能性が高まった再国民投票を占います。現在、仮に国民投票が実施されたら『残留』、『離脱』のどちらを選択するかという調査に対し過半数が残留を希望し、離脱は5割を下回る水準となっています(図表2参照)。同調査で年代別の分布を見ると、50歳未満の若い世代では残留が支持され、50歳を超える世代では離脱が支持されています。メイ政権は2年前に国民投票で示された国民の意思を尊重して英国のEU離脱を進める構えですが、英国のこれからを担う世代(特に20代以下は残留支持が圧倒的)と意識にギャップがある構図が示されています。

 

[図表2]英国のEU離脱に関する世論調査の結果

前回は18年11月14、15日:今回は11月28、29日 ※世論調査では今国民投票が行われたら残留、離脱のどちらを選択するか質問。わからない、投票しないなどは除外。調査対象は1655人 出所:調査会社YouGovのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
前回は18年11月14、15日:今回は11月28、29日
※世論調査では今国民投票が行われたら残留、離脱のどちらを選択するか質問。わからない、投票しないなどは除外。調査対象は1655人
出所:調査会社YouGovのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 

メイ政権には痛手の内容もあり、1回目の採決は不安ですが、最終的に『無秩序な離脱』となる懸念は若干緩和した可能性も想定されます。 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『EU離脱合意案の承認に向けた英国議会審議の途中経過』を参照)。

 

(2018年12月5日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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