インドGDP成長率、巡航速度に戻りそうだが

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報のディープ・インサイトを転載したものです。

インドの7-9月期のGDP成長率は7.1%と前期を下回りました。もっとも、インド経済は高額紙幣の廃止や新型税制の混乱で16年後半から成長率が急降下した反動で急回復した前期(4-6月期)から、巡航速度に戻っただけとも見られます。ただ、民間消費の落ち込みなどはやや気がかりです。

インド7-9月期GDP成長率:成長率は市場予想を下回る

インド統計局が2018年11月30日に発表した7-9月期GDP(国内総生産)は前年同期比7.1%と、市場予想(同7.5%)、4-6月期(同8.2%)を下回りました(図表1参照)。

 

【図表1】インドのGDPとGVA成長率の推移

四半期、期間:2012年4-6月期~ 2018年7-9月期、前年同期比
四半期、期間:2012年4-6月期~ 2018年7-9月期、前年同期比

 

供給サイドで測定する総付加価値(GVA=GDP-間接税+補助金)は前年同期比で6.9%と、市場予想(同7.3%)、前期(8.0%)を下回りました。

どこに注目すべきか:GDP、GVA、民間消費、利上げ、流動性懸念

インドの7-9月期のGDP成長率は7.1%と前期を下回りました。もっとも、インド経済は高額紙幣の廃止や新型税制の混乱で16年後半から成長率が急降下した反動で急回復した前期(4-6月期)から、巡航速度に戻っただけとも見られます。ただ、民間消費の落ち込みなどはやや気がかりです。

 

インド経済の成長率の内訳をGDP(需要)側で見ると、プラス面では総固定資本形成が前期に比べ伸びています。政府支出も7-9月期は12.7%と高い伸びで財政支出がインド景気を下支えする一つの要因となりました。

 

 

ただ、成長率の内訳をGVA(生産)側で見ると、製造業の伸びは穏やかで、鉱業は弱いなど、やや整合性に疑問がある点には注意は必要です。

 

次に、マイナス面を見ると、輸出は回復したものの、輸入の伸びは輸出を大幅に上回り、純輸出はマイナスとなりました。石油輸入国であるインドにとり、9月末まで続いた原油高や、通貨ルピー安(図表2参照)の影響が想定されます。

 

【図表2】インドルピー(対ドル)レートとRBIレポレートの推移

日次、期間:2015年12月3日~ 2018年12月3日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2015年12月3日~ 2018年12月3日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

ただ、10月以降の原油価格は低下傾向で、ルピーも回復しているため、純輸出の回復も期待されます。

 

マイナス面で気になるのは民間消費の伸び悩みです。民間消費は7-9月期が前年同期比で7.0%と、前期の同8.6%から鈍化しました。エネルギー価格の上昇や、通貨ルピー安に対応するため6月と8月に政策金利を引き上げたことが消費にブレーキをかけた可能性が考えられます(図表2参照)。もっとも、ルピーは足元急速に回復していることや、インドの10月の消費者物価指数(CPI)は約3.3%と落ち着いています。12月5日に予定されている金融政策会合では10月に続き政策金利の据え置きが市場では予想されています。

 

もっとも、インドの懸念は9月頃発生した大手ノンバンクの債務不履行(デフォルト)状態に陥ったことに伴う流動性懸念です。インド政府はインド中央銀行と対立してまで資金不足への対策を講じ小康状態となっています。インド全体の金融問題となる可能性は回避されつつあるようですが、注意は必要です。

 

幸い、ルピーが回復傾向であることや、原油価格も以前に比べれば落ち着いており、順調に行けば、インドの成長率は来年度7%台を維持するものと見ています。

 

インドは11月28日に2004~11年度の過去のGDP統計を改定しました。この改訂により、前政権当時に記録した成長率が下方修正されました。来年総選挙を控えるモディ政権の追い風になるため、市場では改訂のタイミングに疑問の声もあります。成長率もGDPとGVAのクロスチェックが望ましいなど、インドの統計に一抹の不安を覚えるときもあります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インドGDP成長率、巡航速度に戻りそうだが』を参照)。

 

(2018年12月4日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は2.11兆円となっています(2018年6月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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