マンションとスマホを与えた愛人の態度に戸惑う男に、妻が!?

<あらすじ>妻にいつこの関係がバレるのか? 不安を感じ始めたものの、愛人・マナミを独占したい気持ちが強まり、マンションの一室を貸すことにした倉田。「生活費も出してもらってるのに」と遠慮はしながらも、「合鍵は渡さなきゃダメ?」と要求するマナミに、倉田の心はますます曇っていく…。一部の富裕層しか知らない、「愛人」を持つことの金銭的な損得勘定に真剣に迫るリアル小説、男編〜第12回。

愛人を「所有」したかったのだろうか?

やはり、マナミは他に男がいるのだろうか。

 

それとも単に、愛人である自分にプライベートを全部さらけ出したくないのか。

 

(なるようにしかならないよな)

 

自分の選択に自信が持てないのは、マナミとの関係が重荷になってきたことから目を背けているせいだ。

 

生活費はともかく、マンションなんて与えてしまったら、ただの刹那では済まなくなる。

 

果たして自分は、愛人を「所有」したかったのだろうか。妻に追及されたら、どうなるのだろうか。

 

生活の中に秘密ができたばかりの頃は、純粋に楽しめていた。だが今は、罪悪感のほうが強くなっている。

 

妻に申し訳なく思う反面、家庭をわずらわしく感じてしまう。

 

アンビバレンツの中、どちらとも関係を継続させてしまうのは、男のずるさに他ならない。

 

マナミを送り、帰りのタクシーで窓の外をぼんやりと眺めていたら、ビルの隙間から三日月が見えた。月は、倉田の不安を投影するかのように、薄い光を放っていた。

どこかで「スマホ」を落とした愛人と連絡がつかず…

「マナミと連絡がつかないんだ」

 

倉田から届いたメッセには、たった1行の中に動揺と焦りが感じられた。

 

山本は「ユカリに訊いてみる」とだけ返し、PCに視線を戻した。

 

ふたりの間に何があったのか。先日、山本の所有するマンションの1室を倉田経由でマナミに貸す話となったが、そのことでトラブルにでもなったのだろうか。

 

気になることがあると、仕事に集中できない。仕方なく、山本はユカリに「倉田がマナミと連絡がつかなくなっている」と伝言し、返事を待った。

 

答えは至極単純だった。マナミはどこかでスマホを落としたらしい。警察に届けたが、まだ拾われていないらしく、番号だけ止めていたとのこと。

 

「倉田さんに伝えてって言われてたんだった。忘れててごめん」

 

ユカリからのメッセを倉田に伝言し、山本はようやく仕事に意識を戻した。

「ありがとう。大切にするね」

「スマホくらい、買ってあげるよ(※)」

 

ようやくマナミと会えた倉田は、安堵の表情でマナミをハグした。

 

「街中でこんなことしたら、誰かに見られるかもしれないよ?」

 

腕の中で、マナミが囁いた。

 

「大丈夫。そんなことでとやかく言うような友達はいないよ」

 

「奥さんは?」

 

「妻はまだ仕事中だから、心配ない」

 

目黒駅前の交差点では、男女がハグしていても、皆興味なく通り過ぎる。マナミが目黒に住んでいることは聞いていたが、最寄駅で会うのは初めてだった。

 

腕を離し、倉田はマナミに誘導され、キャリアのショップへ同行した。

 

一通りマナミが手続きを終え、倉田が「いくら?」と財布を開くと、対応していた女性店員が「お父様はどこのキャリアをお使いですか?」と「家族割」を勧めてきた。

 

「まいったな、俺ってそんな老けてるかな」

 

店を出て、倉田はマナミに問いかけた。

 

「ひどいよね。資郎と私、11歳しか違わないのに」

 

「彼氏や兄にしては歳が離れているからかな」

 

「たぶん、いかにもスポンサーっぽい振る舞いしたからじゃない?」

 

マナミは倉田が財布を出した仕草を真似して、思い出し笑いをした。

 

「LINEの履歴、消えちゃったな」

 

買ってもらったスマホを出して、マナミはつぶやいた。

 

「前のスマホがないと引き継げないのか」

 

「資郎とのトークもなくなっちゃった」

 

「別にいいじゃないか」

 

すると、倉田のスマホの通知音が鳴った。メッセの主は、横にいるマナミからだった。

 

≪ありがとう。大切にするね≫

 

こういうさりげない言葉が、倉田の胸をときめかせる。

 

割り切った愛人関係だとわかっていても、マナミの可愛さに気持ちが揺さぶられる。久しく忘れていた感情。以前は妻に対しても、似たようなときめきがあったはずなのに。いつしか関係はドライになり、今は同じ家に住む同志のような存在だ。

 

「引越しは、いつにしたの?」

 

「今ね、引越し屋さんを探しているところ。決まったら教えるね」

 

「楽しみだな」

 

「うん。ユカリとも近所になるし、嬉しい」

 

マンションを提供することを、マナミは受け入れてくれた。なのに倉田の心は晴れない。

 

引っ越しが済み、マナミの部屋で過ごすようになれば、この不安は払拭されるのだろうか。だが不安の正体は、マナミ以外のところにあるような気もする。早くホテルに入ってマナミを抱きたい。倉田はタクシー乗り場へマナミを誘導した。

 

「ごめん、今日アレだからホテル行けないの」

 

倉田の意向を察したマナミが、先に制した。

 

「……そっか。じゃあ美味しいものでも食べに行くか」

 

「ごめんね。ありがとう」

 

心なしか、マナミの表情に翳(かげ)りが見えたような気がしたが、倉田は気がつかないフリをした。

久しぶりのディナー。テーブルに置かれたものは……

マナミが引っ越す当日の朝、妻が珍しく「外でディナーしよう」と提案してきた。

 

妻からの誘いは滅多にあることではない。きっと何か大事な話があるのだろう。夜はマナミの新居に行くつもりだったが、倉田は妻とのディナーを優先させることにした。

 

「ふたりで外食なんて、何ヵ月ぶりかしら」

 

「そうだな。最近は残業ばかりだったから」

 

「別に責めているんじゃないわよ。私も独立に向けて忙しかったし」

 

「やっぱり起業するのか?」

 

「そのつもり。まだ準備がたくさんあるから、すぐではないけどね」

 

「開業資金は足りるのか?  必要なら多少都合するぞ」

 

「そのことなんだけど……」

 

ナイフとフォークを置き、ナプキンで口を拭った妻は、バッグから何やら取り出した。

 

「私達、結婚解消したほうがいいんじゃないかしら」

 

離婚届をテーブルに置いた妻は、感情をどこかに置いてきたような冷たい視線を倉田に向けた。

 

~監修税理士のコメント~

 

※個人名義の携帯電話代は経費にできる?

 

編集N マナミは便宜上、倉田の会社の契約社員になっていますから、当然スマホの代金はすべて経費に計上できるんですよね?

 

税理士 業務に使用する携帯電話は「通信費」として計上できます。ただし、プライベートな通話に関わる料金は経費にはなりません。

なお法人で契約した場合は、支払いを法人口座からの口座振替(法人口座より自動引き落とし)または法人カードで支払いをすることになります。つまり、法人の携帯として契約し「会社から個人へ業務用として携帯電話を貸与した」という建前になります。

 

編集N マナミの個人名義にしてしまった場合は、ダメなんですか?

 

税理士 その場合、個人口座(またはカード)から引き落とすことになるでしょうから、個人の電話料金を法人が負担してあげることになってしまいます。そのような場合には、業務使用分とプライベート使用分が区分できるように利用明細を確認するなどして、業務使用分のみを法人の経費とすることになります。

 

編集N 月々の携帯電話使用料についてはわかりましたが、今回マナミは倉田にスマホを買ってもらいましたよね。その本体代金も経費で落とせるんですか?

 

税理士 個人名義の場合には基本的には難しいですね。ただし、携帯電話の本体代を分割にする場合、月々の通信費と合算で(使用比率に応じて)「通信費」として計上すれば是認されるかもしれません。法人名義で一括払いで購入した場合は、消耗品費として計上できますから、法人名義で購入した方が望ましいでしょうね。

 

編集N なるほど。名義一つとっても難しいんですね。

 

税理士 むしろ問題は、マナミを契約社員にしていることではないかと……。 

 

(つづく)

 

監修税理士:服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

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作家/コラムニスト

1969年4月3日生まれ。東京都出身。跡見学園大学短期大学部生活芸術家中退。
2006年デビュー。『人のオトコを奪(と)る方法』『「アブナイ恋」を「運命の恋」に変える!』『アラフォー独女の生きる道』他、著作多数。
豊富な体験と取材から得た“血肉データ”による独自の恋愛観が定評。浮気や不倫といった「大人の恋愛」に造詣が深い。
富裕層の家庭で育ち、自身も自営業として節税に励んでいる。
「AllAbout」「ハウコレ」等、連載多数。

著者紹介

連載連載小説・愛人節税

この物語はフィクションです。

 

 

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