本記事では、自社の強み等を銀行に伝えるための「事業計画書」の書き方を見ていきます。

数字に嘘がない、データに矛盾がないことが前提

事業計画書をレジュメにまとめるとき、要領を得た事業計画書にするためのポイントを簡単に4つまとめておきます。

 

●数字やデータは正確に!現状を知ってもらうことが大事

会計資料や経営状況を示すデータ、未来の予測値など、事業計画の根拠となる数字やデータは、正確な値を挙げます。自分に都合の良いように数字やデータを操作したり、分析結果を誘導したりすることは誠意のないことです。また、故意でなくても数字に誤りがあると、それだけでもチェックの甘さを露呈することになり、信頼が失われる恐れがあります。

 

どうしても融資を受けたい気持ちから、実際の業績よりも悪く売上を提示し、「こんなに苦しくて大変です。お金が借りられないと倒産しそうです」とアピールするやり方はよろしくありません。なぜなら、「そんなに大変な会社には危なくて貸せません」となってしまう可能性が高いからです。

 

逆に、実際よりも格段に明るい見通しを立てて、「うちはきっと成功します。だから投資と思って融資を!」とアピールするやり方もお勧めしません。きっと「そんなに見通しが明るいなら、融資は必要ないでしょう」となるのがオチです。

 

融資というのは「貸す側」と「借りる側」との信頼関係の上に成り立つものです。ですから、誠実でない数字やデータを出してくるような会社とは安心してお付き合いができません。数字に嘘がない、データに矛盾がないというのは、一番基本的な条件です。

予測に基づいた「堅実な目標」を立てる

●信ぴょう性のある数字を示す

 

前の話ともつながりますが、事業計画の目標達成値などで、実現不可能な計画や売上高を掲げることもよくありません。

 

たとえば、「1年後に売上を倍にする」などと書かれているケースがあります。夢が大きいのは良いことですが、これはあまりにも現実離れした目標です。よほど画期的な打開策でもないかぎり、1年で売上が倍になるなどあり得ません。計画書を見る側からしてみれば、「この社長は現実が見えているのか」「夢物語なら、よそでやってくれ」と思ってしまいます。

 

ですから、きちんとした予測に基づき、実現性のある目標を掲げることが大事です。1年ごとに着実に成長し、目標達成していけるような〝堅実な目標計画〟を立ててください。

融資担当者が好むのは、要点をまとめた事業計画書

事業計画書は情報量が多く、ページ数も厚いほど熱意が伝わっていいと考える人もいるかもしれませんが、それは間違いです。普通に考えて、ビッシリ文字で埋め尽くされたレジュメが何枚も続いたら、読むだけでウンザリするでしょう。情報が専門的で詳しすぎたり、数字やデータが細かすぎたりするのも、理解するのに苦労します。

 

融資担当者は融資のプロですが、融資先の業種や業界に精通しているわけではないので、大事な要点だけをわかりやすくまとめてくれているほうが好まれます。

 

10~15分程度で概要とポイントがつかめる量を目安にしてください。

社長一人で作成するにはハードルが高い

事業計画書作りは、もちろん社長自身が主体となって行っていきますが、一人でやるにはハードルが高いことも事実です。SWOT分析にしても損益予測にしても、専門的な知識が必要ですし、数字を見極めるセンスや勘も要ります。ですから、プロの手を借りて作成することをお勧めします。

 

「自分には無理だから、いいように作って」とプロに丸投げするのはダメです。報酬さえ払えば、プロですから見栄えよく作ってはくれるでしょうが、それでは銀行を納得させる資料にはなりません。なぜなら、そこに社長の考えや想いが入っていないからです。形だけキレイでも〝社長自身〟が見えなければ、説得力はゼロです。

 

プロと相談しながら進めることのメリットは、ふたつあります。ひとつは数字や計算の精度が高くなることです。もうひとつは「バランスの良い事業計画書」を作ってもらえることです。

 

事業計画は大げさに業績の悪さをアピールしてもいけないし、ことのほか明るい見通しでもいけません。ちょうどいい頃合いというのがあります。このバランスはなかなか素人ではとれません。

 

経営に詳しく、融資にも手慣れたプロに関わってもらうことで、「融資を受けやすい事業計画書」ができあがります。

 

 

鈴木 みさ

株式会社スタジオM 代表取締役
Intelligent Financial Management株式会社 取締役

 

本記事は、2016年11月10日刊行の書籍『銀行に好かれる会社、嫌われる会社』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

鈴木 みさ

幻冬舎メディアコンサルティング

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