本記事では、自社の強み等を銀行に伝えるための「事業計画書」の書き方を見ていきます。

将来のビジョンを伝える「事業計画書」

自社の事業を見つめ直し、健全に成長させるためにも「事業計画書」は作りましょう。事業計画書がなくても日々の仕事はできるし、会社は動いていきます。しかし、そのビジネスは利益を創出し続けていけるでしょうか? 答えは否です。

 

ビジネスには波があり、良いときも悪いときもあります。調子の良いときに浮き足立たないで地に足を着けたビジネスを行い、調子の悪いときに倒れず、踏みとどまれるようなリスクヘッジをしておくことが大切です。そのためには、先を見越した計画性のある事業ビジョンが不可欠です。

 

事業計画書は融資を申し込む際の銀行への提出資料としても必要です。

 

そもそも融資は「今後、事業をこういう方向に持っていきたい」という目的が先にあって、それを達成するために必要となってくるものです。ですから、事業計画なしに融資というのは本来あり得ないことです。

必要なのは論理的な自社アピール

銀行に融資の申し込みに行くとき、「おたくからお金を借りられないと、うちの会社はダメになってしまう」「助けると思って融資をしてくれ」と情に訴える社長がいますが、それで融資をしてくれる銀行は、今の時代にはもうないと心得てください。第1章でもお話ししたように、銀行もビジネスでの融資ですから、情にほだされてお金を貸すようなことはしません。

 

単に「業績が落ちてお金が足りないから貸してください」「新しい機械を買いたいから借りたい」では、銀行がNOと却下するのは当たり前です。銀行が聞きたいのは、社長が「いかに苦しくて困っているか」ではなく、「苦しい状況をいかにして打開していくつもりなのか」なのです。ですから、情ではなく論理で話すことを心掛けましょう。

 

社長が自社の状況や社会情勢をどう読み、どんなふうに今後を切り拓こうとしているのかを見極める資料として、銀行は事業計画書の提出を求めています。

説得力は「隙のない情報資料」の準備から

事業計画書は体裁だけ整えて出せばいいというものではありません。また、絵空事の明るい未来だけを語るものや窮状を訴える内容のものは相応しくありません。見る人に「これなら将来性がありそうだ」「たしかに実現できそうだ」と思わせる、説得力のある内容にすることが大事です。

 

そのためには、根拠となる資料を用意し、そこから客観的かつ論理的な分析を重ねて、実現性のある事業計画を導き出しましょう。

 

事業計画書は、主に次のような項目で構成されます。

 

●会社概要・会社の沿革・社長の経歴・経営理念、会社の特徴・主な販売先・取引先

●過年度損益計算書・SWOT分析・経営状況概況・今後の損益予想・3カ年事業計画

●参考資料など

 

計画の根拠となる資料として、過年度の損益計算書や経営状況の概況などがあります。これは会社の実情を知らせるためのものなので、ウソや装飾があってはいけません。特に過去の損益計算書は、すでに確定したもので後からの変更はできないため、普段からきちんとした経営・会計をしておくことが大事です。

戦略方針の策定には「自社分析」が必須

経営や会計の重要性については本書籍でお話しした通りです。私が「社長自身が会計に興味を持ってください」と申し上げたのは、ここでそれが生きてくるからです。

 

SWOT分析や今後の損益予想は、過去の業績や世の中の動きなどを踏まえての自己分析です。

 

SWOT分析というのは、新たな戦略方針を立てるための外部環境・内部環境の分析を意味します。Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字を組み合わせた略語です。内部環境として自社の「強み」「弱み」の分析があり、外部環境として「機会(ビジネスチャンス)」と「脅威(障害や困難の要因)」があります(図表)。

 

[図表]「SWOT分析」とは

 

自己分析は甘すぎても、厳しすぎてもよくありません。自社の問題点をきちんと理解したうえで解決の手段や道筋を考察し、具体的な改善策や是正策を提示していきましょう。

 

そして、最後に今後のビジョンです。向こう3~5年の展望を示します。改善策や是正策を実行した場合に、どのくらいの期間でどういった結果や目標に到達するのかを具体的な数字で示していきます。

 

事業計画書の書類そのものはプロの手を借りて作るにしても、その元となる事業計画はかならず社長自身が出さなくてはなりません。経営していくのは社長ですから、「会社をこれからどうしていくのか」という計画を他人が立てることはできないのです。

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    本記事は、2016年11月10日刊行の書籍『銀行に好かれる会社、嫌われる会社』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

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